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【J2:第10節 熊本 vs 岡山】レポート:4試合連続無得点の熊本と、4試合連続完封の岡山。勝点1ずつを加えるも、捉え方は両者対照的なスコアレスドロー。(12.04.28)

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ゲームの入りとしては間違いなくシーズンベストだ。「ここ最近で欠けていたというか、なかなか出し切れなかったスピリッツで、『前に前に』という姿勢は感じることができた」と高木琢也監督が振り返るように、熊本はキックオフ直後からボールへの執念を見せた。

「自分の役割を全力でやろう」(筑城和人)という意識で最終ラインが岡山の1トップ2シャドウを捕まえれば、「2度追い、3度追いをテーマにして」(原田拓)中盤がセカンドボールを狙い、相手のボランチやウイングバックにアプローチをかける。実際、そうした球際の争いで優位に立った熊本が序盤からペースを握り、3分にはコーナーキックのこぼれ球を左足で狙った崔根植のシュートがバーを叩くなど、押し気味にゲームを進めていく。
しかしそうした中でも、ボールを奪ってからの攻撃は決していい形に展開できたわけではなかった。この試合、攻撃の優先順位としてまずはDFの背後をという狙いがあったが、パスの出し手と受け手のタイミングやイメージが合わなかったり、あるいはパスミスでボールを奪われたりで、30分過ぎまで得点の匂いはなかなか漂ってこなかった。

一方の岡山は、熊本のタイトなプレッシャーを受けてここまで取り組んできたつなぐ形を作れない時間帯が続いたが、それでも「前半は我慢かなと」(千明聖典)割り切って、長いボールで押し戻す意図が見えた。トップで先発に復帰した中野裕太が厳しいマークにあい、シャドウの2枚がセカンドを拾える場面も少なかったものの、後方からの大きなサイドチェンジでピッチを広く使いながら、熊本を左右に動かして少しずつ流れを引き戻そうとする。
特に目立っていたのは、お互いに縦に急ごうとする中で意識してボールを落ち着かせ、前の動き出しやサイドが押し上げる時間を作った2人のボランチのゲームコントロールだ。千明は中盤でタメを作り、仙石廉は左右に広く散らした。「ゴール前でディフェンスラインを突破して、後は点を取るという形までは行かせてもらえなかった」と影山雅永監督が話すように、最後の崩しでは形を作れなかった岡山だが、ゲームの流れを見てどうアジャストするかという点においては、前節の愛媛戦に続いて「攻め急いだ」という声が聞かれた熊本とは対照的だった。

後半に入ると、熊本のプレッシャーがやや緩くなったことで岡山がボールを保持する時間が増えていく。シュート数は合計で14本対10本と熊本が上回っているが、後半に関して言えば熊本の5本に対し岡山は7本で、前半の劣勢を盛り返したことがうかがえる。後半開始からピッチに入った関戸健二が落ちて引っぱり、そこにワイドが入り込む等、熊本の3人のDFとボランチの間のスペースでボールを受けられるようになったのも一因であろう。
熊本は60分頃までそうした岡山の勢いを受ける格好になったが、67分に白谷建人を下げて市村篤司をシャドウの右に入れて以降、再び前への推進力が増した。71分には右の市村から逆まで展開し、養父雄仁のクロスに筑城が飛び込むなど、サイドを起点にチャンスを作っている。しかし中林洋次を中心に岡山守備陣もゴール前で跳ね返し、終盤にかけては双方とも相手のミスに乗じてカウンターでゴールに迫るオープンな展開となったが、ともに得点は奪えないまま勝点を分け合った。

「アウェイで、しかもこのスタジアムではいい思い出がない」(影山監督)という岡山にとっては、押し込まれる展開となりながらも4試合連続の無失点で無敗記録を6に更新したことは小さくない収穫である。最後の部分で課題を残したとは言え、「誰が出ても同じような守備、攻撃ができるようになっているのが結果につながっている」と千明が述べている通り、チームとしての完成度は高まっていると言えよう。

熊本は2試合連続の引き分けだが、岡山とは逆に4試合無得点という結果。シュート自体は打てているし、サイドからの形はできているが、得点が取れない要因を「精度」という単語1つに求めてはなるまい。攻撃のプライオリティとして背後を狙う意図があったとして、スペースがなかったり数的に不利な状況では無理に前線へ送っても得点につながる可能性は低い。かたや、相手のFKをキャッチした南雄太が右サイドを走り出した藏川洋平へ1発のフィードでつないだ80分のシーンのように、使えるスペースが十分にあって相手が整っていない状況なら、どんどんチャレンジしていい。要は場面に応じた使い分けが必要だし、たとえばペナルティエリア付近では外へ開いてクロスを待つだけでなく、背負った状態からターンして突っかけるような積極性を織り交ぜることで、何かが起きる可能性もある。コンビネーションでの崩しにつながるような動きの連動性も、まだまだ足りているとは言いがたい。
たしかに守備の面では原点に立ち返った。ただ、筑城や南が口にしているように、この試合があくまでベース。攻撃面でも、「相手のボックス内に入る回数を増やす」といった今季掲げた形の原点に立ち返り、この日手にできなかった残りの「勝点2」をたぐり寄せたい。
 
以上 


2012.04.28 Reported by 井芹貴志
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