試合後、メインスタンドから右のオレンジは飛び跳ね、左に陣取った青赤は早々に帰り支度を整えてスタジアムを後にした。当然だ。F東京は、2人の退場者を出した9人の清水に0−1で敗れた。徳永悠平は自戒を込めて言葉を吐き出す。
「ホームだから負けてはいけない。それに、子どもたちもたくさん来ていた。その前でこんな試合を見せちゃいけない」
56分にジミー・フランサ、73分にアレックスが、それぞれ2枚目の警告を受けてピッチを去った。数的優位を生かせず、一瞬の隙を清水が突いた。
ゲームのハイライト場面は77分。左サイドで太田宏介が、攻撃をやり直すためにバックパスを選択した。そのパスがずれて、清水FW高原直泰に奪われてしまう。高原はそのボールを運んでいく。それに合わせて逆サイドを高木俊幸が駆け抜ける。状況は2対2だったが、F東京は何人かが追走できる距離にいた。
清水は迷いなくゴールへと向かっていく。逆にF東京はそこで判断が遅れた。それが致命的な差となった。高原は、十分にマークを引き付けてから速いクロスを送る。中央では、高木がチャン・ヒョンスをワントラップで交わして右足を振り抜く。ネットを豪快に揺らす見事な一撃。「正直何も覚えていない。うれしさが体から出た」と、高木は語る。片側のベンチ、スタンドは沸き立ち、もう一方は首を傾げた。清水は、数的不利を跳ね除けて勝点3をもぎ取った。
この日の敗戦の理由を聞かれ、代行監督を務めた長島裕明コーチは試合後に「月並みですが」と言って切り出した。
「判断、技術のミス、ワンプレーの大切さ。ミスが起こったときに、失点しないリスク管理がまだまだ足りない。少し前がかりになったときに、もっと冷静に最低でもゴールを守らなければいけないということを意識付けさせないといけない」
失点場面だけではない。前半からパスミスが目立ち過ぎた。水際で防いでいたが、それが続けば失点は生まれる。この日は、自分たちのミスから瓦解した。
ランコ・ポポヴィッチ監督は「肉体的な疲労よりも、頭の疲れは危険だ」と言ってきた。その言葉が現実となった。森重真人は「各駅でポジションを取りすぎた。あれでは相手は守りやすい。次を意識しながら動き出さなければいけなかった」と言う。一つひとつのパスに合わせてポジションを取り直すことはできても、その次を予測した上でのアクションが少なかった。それでは、相手のブロックを崩せない。そして、失点の場面では様々な選択肢があった。ボールホルダーに寄せるのは誰だったのか。周りは、どこにポジションを取るべきだったのか。チャレンジ&カバーの練習は徹底してきたはずだが、その判断時間が掛かりすぎていた。
9人対11人で負けたのだから言い訳はできない。ただし、この負けに揺れてはいけない。足りないモノはそれぞれが把握できている。何を回復し、何に取り組めばいいのか。クラブは、苦い思いをして人生訓を学んでいる。迷いそうなときは、バックスタンド側の右側のゲートに掲げられているフラッグの文字をもう一回見直せばいい。とびきり苦くて辛くて二度と嫌だと思い出させてくれる。「NEVER FORGET 2010.12.04」。
以上
2012.04.29 Reported by 馬場康平















