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【J1:第9節 川崎F vs 磐田】レポート:攻撃的な姿勢がもたらした得点と失点。そして、風間監督の初勝利。(12.05.04)

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この試合を前にして中村憲剛が語る「毎日毎日うまくなっている」との言葉が救いだった。試合2日前の紅白戦では、主力組がサテライト組を相手に0−5の大敗。広島戦での4失点をさらに上回る失点に愕然とさせられていたからである。

風間監督が目指すサッカーが簡単に習得できるものではない事は、チーム内の共通認識となっている。「筑波大学では半年間はダメで、習得に2〜3年かかっていた」と風間監督自身が述べており、選手たちもこれまでの常識を覆される指導理論に日々追いつくのが精一杯の状態だった。だからこそ、この試合を迎えるに当たり、取材者としても前を向ける手がかりがなんでもいいからほしかったのである。そうした精神状態の中にあって、上記の中村の言葉は救いだった。

ただ、その言葉を額面通りに受け止めてしまうと、実際に起きるであろう(と勝手に予想する)現実に、打ちひしがれてしまうのだろうとも思っていた。「そうは言うけど、そう簡単でもないはずだ」との悲観的な思いが頭を去来していたのである。そういう点では、この試合の前半は嫌なものだった。

次々と枠内シュートを放たれ、危うい場面が連続した。川崎Fも攻めてはいるのだが、その攻撃がシュートに繋がらない。一方的ではないのだが、川崎Fとしてはフィニッシュに持ち込めていないという点で悪い流れが続いていた。そんな試合展開の中、前半の30分のプレーが起こる。中村と共に中盤の真ん中で先発した大島僚太が起点となる。

大島がサイドに流れた矢島卓郎にパス。矢島をケアすべく磐田の守備陣に偏りが生まれ、中央にスペースが生じていた。大島は「ヤジさんが外に走っていて、中のスペースが開いていたのでそこに走りました」と、ゴール前に顔を出した理由を話す。矢島がクロスを上げようとするその刹那、状況を把握して無人のスペースに大島が入り込む。完璧なシンクロによる美しい場面だった。

「しっかり当てようと思っていました。ファーに蹴ろうと狙ったんですが、コースは甘かったです。よく入ったと思います」と大島。両親が見に来ていたという大島のプロ入り後初得点により川崎Fが劣勢の試合でリードを奪う。

前半の悪さについて風間監督は「自分たちが場所(スペース)を埋める、(プレーを)スタートするポジションがなかなか悪くて、どうしても攻め込まれる時間が長かった」と表現。「特に両サイド。そこの場所を埋めることをまずはっきり伝えました」と述べている。また、中村は「守備は取りに行かないでズルズルと下がってしまうと前半のようになる。前半は引いているだけになってしまった」と言い表す。

そうした前半を踏まえ、川崎Fは後半の試合運びを転換する。ハーフタイムの小林悠から山瀬功治への交代は「場所を埋める」という役割に対する風間監督なりのメッセージであり、選手たちはそれを実行した。つまり、ごく簡単に言えば「前から行こう」との意思を現実のものにしたのである。

矢島が53分に決めたPKにつながる52分の楠神順平と大島との崩しは、そういう意味では風間監督が作り狙ってきたものだった。また、その2分後の田中裕介のゴールも、相手を押し込もうとする姿勢によってもたらされたゴールという点で等価であろう。しかし、この試合における川崎Fの最も重要なゴールは、62分の矢島のゴールだった。

興奮気味に中村がその場面を振り返る。

「正直、ああいうスルーパスをずっと出したいと思っていました。広島の時の宏樹さんへのパスもそうでしたが、パスの質が変わってきている。ヤジの動きもそうだし変わっています」

このゴールのきっかけは、自陣深いところでのプレーにある。右サイド際でボールをもらった田中裕介には2つのパスコースがあった。1つはリスクの少ない横パス。そしてもうひとつがタテ。田中裕介はそこで相手選手に引っかかるリスクを内包するタテパスを選択した。

「プレスがかかる中で、(田中)ユウスケと絡んで作れた」と、そのタテパスを受けられるポジションを取った中村は説明。磐田の選手によるプレスを受けつつキープすると、再度田中裕介がパスをもらえる位置にポジションを取って中村からのパスを引き出す。田中裕介がこのパスをダイレクトで中村にリターン。この瞬間に、ルックアップした中村の視界に相手の背中に入る矢島の動きが見えていた。

「そこでヤジが相手の背中に入った」(中村)

矢島が前方のスペースに飛び出したのは、中村がダイレクトパスを選ばなければオフサイドになるタイミングだった。そして、中村からダイレクトでスルーパスが出てくる。二人の呼吸はピタリと合っていた。GKとの1対1となった矢島は、トラップすることなくシュート。3つのダイレクトプレーが連続した、中村が興奮を抑えられないのも無理のない得点だった。この時点で川崎Fが4−1で磐田をリード。ソツのないチームはこのまま逃げ切りに入るところである。しかし川崎Fは打ち合いを継続し、失点を積み重ねた。

80分に前田遼一のPKをストップした西部洋平は、守る立場の人間として「4−1で終わりたかったですね」と率直な感想を述べている。タテに繋いでいくのもいいが、時間帯によっては「横パスを出してもっと丁寧につなげば相手も疲れる」と話している。

その一方で、終盤に追い上げられた時の心境について聞かれ、風間監督は「選手の中から3点をとった後、もっと行っていいかという声も出ていましたので、そこは僕なりに行っていいよ、という話は話しました」と述べている。つまり、この見事な4点目も攻める意識があってこそのものだったのである。ただし、結果的に川崎Fが3点を失っているのも事実。これはチーム作りの段階にある川崎Fにとっては、やむを得ない失点なのかもしれない。

点を取りに行く姿勢を見せることで、点がとれている。しかし、その結果失点もしてしまった。では、得点力を維持したまま守備力を向上させよう、といってもそう簡単な事ではない。勝ちはしたが、攻守の難しいバランスを、より勝利に近づける方向で現実化させるという命題は残されたままだ。ただ、ひとつ言えることは、結果を出したことで、チーム作りは進めやすくなったということであろう。負けてはならない等々力での連敗を止め、ドタバタしながらも勝てた事を前向きに捉えたいところである。

以上

2012.05.04 Reported by 江藤高志
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