紫の「7&8」は、特別な番号である。
現在は森崎浩司と森崎和幸という広島が誇る双生児が背負っているこの番号の歴史は、1994年のファーストステージの広島優勝時、満面の笑みで優勝トロフィーを掲げた7番・森保一と、チェアマン杯を天に向かって差し上げた8番・風間八宏から始まっている。
Jリーグにおける「ダブルボランチ」の黎明であり、広島の「オートマティック・サッカー」の中核。アグレッシブに走って相手にプレッシャーをかけ続けた森保と、その後ろで試合をコントロールした風間。二人は、広島にとってまさに、ヒーローだった。
その風間八宏が広島ビッグアーチで最後にプレーしたのは、1995年11月11日の対名古屋戦。その17年後、風間が川崎Fの監督に就任し、広島ビッグアーチで森保と指揮官同士で対決することになろうとは、どんな優秀なシナリオライターでも描けない物語だ。
等々力では、森保サンフレッチェが4−1で風間フロンターレを粉砕。だがこの時は、風間監督就任後わずか1週間での初采配だったわけで、「等々力での川崎Fと今とは別のチーム」と水本裕貴や佐藤寿人も証言する。特に風間監督がトライしているのは、「破壊と創造」。川崎Fがここまで積み上げてきたものを一度壊し、そこから全く新しいサッカーを構築しようとしているわけで、時間がかかるのは当然。シーズン途中の監督就任であり、チームコンセプトを固めながら勝点を稼ぐという難題に取り組んでいるのだから、パフォーマンスに波が生じるのもまた当然だ。
最近4試合で1得点、現在3試合連続無得点と「ゴールネットを揺らす」ことに苦しんでいるが、方向性はぶれてはいない。パスを足下につなぎ、ポゼッションを高めてゲームを支配する。「筑波大時代も、風間監督のサッカーはひたすらボールをつないでくる。本当にやりづらかった」。これは、流経大時代に風間監督が率いる筑波大と闘った経験を持つ石川大徳の証言。そのコンセプトは、川崎Fでも徹底されている。
一方、森保監督の取り組みは、「継続と発展」。ペトロヴィッチ前監督(現浦和)が確立させたサッカーをベースに、守備を中心とした森保流の改善策を織り交ぜた。一方で「改善」ばかりを求めすぎて本来の良さを失い、継続もできなくなってしまう危険性をクリアし、洗練されたパス回しからゴールを量産(34得点はリーグ1位タイ)。先制された仙台戦や主力二人が負傷交代した磐田戦のような危機的状況を跳ね返すリバウンドメンタリティまで身にまとった。現在の位置(2位)が決してフロックではないことを、最近の試合内容でも証明済みだ。
チームとしての安定感や成熟度は、やはり広島が一枚上。だが、川崎Fにはケガ人続出でもチームを構成できる選手層の厚みがある。小宮山尊信や山瀬功治、ジェシなど主力と目されてきた選手たちが次々と負傷で倒れてもチームは大きく崩れず、風間監督就任以降は5勝2分3敗。厳しい状況でもしたたかに勝点を稼いでいる。
対照的に、広島の弱みはその「選手層」の薄さ。それがシーズン前の低評価につながった理由であり、今も「広島はいずれ厳しくなる」と指摘されている要因。実際、若手中心で挑んだヤマザキナビスコカップは1勝1分4敗。主力と控え組の「断層」を感じさせた。
だが、山岸智の病気離脱を受けて左サイドに抜擢された清水航平が、持ち前のドリブルで存在をアピール。心配された守備も森崎和や水本のサポートを受け、試合ごとに成長を感じさせた。前節、負傷交代したミキッチの穴を埋めた石川も、粘りのあるプレーとコンビネーションで攻守に躍動。カップ戦で経験を積んできた彼ら二人の台頭は、山岸やミキッチ、ファン ソッコといった主力不在をカバーする期待が十分。彼らに加え、中島浩司や森崎浩らの実績組が主力組の後ろに控えている現状は、心配された「選手層問題」が解決の方向に向かっていることの証明だ。「ナカジ(中島)さんや(森崎)浩司、それに若い選手たちが途中から出てもいい仕事をしてくれている。そういうチームは、上にいける」と佐藤も自信を見せる。
対戦成績では広島の3勝6分10敗と圧倒的に川崎F。ビッグアーチでは2005年第7節以来、広島の勝利はない。しかし、そういう相性よりも今はただ、森保vs風間という「黄金対決」の響きに、期待感の方が膨らんでくる。共に目指すのは主導権を握って勝利する美しいサッカー。現役時代、妥協を知らない風間の姿勢に鍛えられた森保が、偉大なる先輩にどう立ち向かっていくのか。監督デビュー戦で苦汁を飲まされた森保サンフレッチェに対し、風間監督がリベンジを果たすのか。
決戦は、19時だ。
以上
2012.07.13 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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