愛媛のリーグ後半戦は、アウェイ連戦でスタート。しかし、結果は福岡と北九州に敗れて今季初の連敗を喫した。リーグ前半戦最後のホームゲームで東京Vに勝ち、勢いに乗りたかったところだがそこで連勝できないのが愛媛が上位に食い込めていない原因。連敗がなかったリーグ前半戦も、連勝は1度だけ。連勝することが、上位進出への壁になっている。しかし連勝の壁に挑む前に、今節は連敗ストップが先決。「これ以上、上位と離されずについていくためにも、このホームで勝たないと」という田森大己の言葉は、愛媛の選手全員が抱えている思いだ。

ただし連敗という停滞した状況を振り払う上で、愛媛にとってこの水戸戦はいくつかの難しいシチュエーションが重なってしまった。まずは、ボランチのトミッチと村上巧が2人同時に出場停止になってしまったということ。2人は今季新加入の選手だが、リーグ前半戦の中盤を支えた貴重な戦力でもある。今季の愛媛はポゼッションをしながら主導権を握るサッカーが浸透してきたが、ボールをつなぎ、攻撃のスイッチを入れる点に関して2人が果たしている役割は大きい。

今節、そのボランチに入る可能性が高い田森は「前からプレスをかけるときは後ろがついてくるか意識しないといけないし、攻撃のときは前線の動き出しのタイミングを逃さないようにしたい」と意気込みを語るが、愛媛のボランチが攻守のバランスを取れるかどうかは水戸戦におけるひとつのポイント。水戸がFWの鈴木隆行にボールを入れてきたときには、そのセカンドボールに対する反応も中盤を制するための鍵となる。攻守の切り替えが速く、運動量が豊富な水戸の中盤に負けないアグレッシブなプレーも必要だ。

さらに、田森がこれまでのセンターバックのポジションからボランチに上がれば、ディフェンスラインには園田拓也が入ることになるだろう。「裏を狙われることは分かっているし、監督はコンパクトにすることを求めている。常にカバーを意識しながら、裏を取られたとしても（ラインを高くすることを）やり続けることが大事」と園田は語るが、結果が出ていないチーム状況だからこそ自らのスタイルを貫く姿勢は重要。迷いなく、前線から最終ラインまでが同じ意識を持って90分間戦う姿勢が求められる一戦だ。

その上で、もうひとつ気がかりなのが有田光希のコンディション。北九州戦での接触プレーによるダメージの回復次第だが、仮に欠場することになればセンターラインが一気に変わる。さらに、バルバリッチ監督がより運動量を求める選択をするならば、センターライン以外にもフレッシュな選手を加えて大きくスタメンを入れ替える可能性もありそうだ。このチーム状況で求められる役割について、石井謙伍は「ピッチに立つとしたら、それは今の流れを断ち切るために使われるということ。内容よりも結果を出したい」と語るが、これまで控えに甘んじていた選手にとっては大きなチャンスでもある。リーグ戦も半分以上を消化した今、残されたアピールの機会も減る一方であることを考えれば、チャンスをつかんだ選手たちがそうした危機感をどれだけピッチで表現できるかということもこの試合のポイントになる。今後、厳しい夏場を乗り切る上でも、そこで出た結果はチームにとって大きな意味を持つ。

一方の水戸も、ここのところ続いた上位陣との対戦で勝点が伸ばせていない。とはいえ、前節の湘南戦ではアディショナルタイムに追いつかれたが、ゲーム内容は上向く兆しを見せた。あとはこれを勝点3につなげるだけ。再び上位に食い込むためには連勝が必要になるのは愛媛と同じだが、まずはアウェイのニンスタでそのスタートを切れるかどうか。繰り返しにはなるが、ここからはシーズンのクライマックスに向けてどんどんカウントダウンが進む。愛媛も水戸も、J1昇格プレーオフ進出のために取り返しがつかない状況に追い込まれる前に、何とか立て直しを図りたい一戦。両者にとって今節は1試合でも早く停滞した状況を断ち切り、上位進出への勢いを手にしたいゲームだ。

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2012.07.14 Reported by 近藤義博