開幕戦で対戦した両者が対峙する。互いに、これまでの積み上げを振り返るには格好の相手だ。リーグの順位を見れば、Ｆ東京が11位、そして大宮は降格圏内の16位に沈んでいる。浮上のきっかけを掴むために、２つのクラブはこの試合で仕掛ける。

現状を尋ねられると、ランコ ポポヴィッチ監督は迷うことなく「チームには、安定感が出てきている」と話した。これまで不用意な失点を重ね、不安定な試合運びを続けてきた。だが、ここにきて復調の兆しを見せている。その最たる例が４日の浦和戦の後半と、前節柏戦で不発に終わった大胆なシステム変更だった。浦和戦では、後半開始から３−４−２−１の布陣で０−２から同点にこぎつけた。さらに、柏戦は追いつかれると、３−４−２−１とは違うまったく別の布陣に置き換える予定だったことを指揮官は明かしている。そうした試合中の大胆なシステム変更が効くのも、スタイルの浸透と、選手層に厚みが増してきたからだろう。

主力選手がけがから復帰し、エジミウソン、ネマニャ ヴチチェヴィッチが加入した。谷澤達也と若手数人がチームを離れたが、今節からはロンドン五輪から徳永悠平と、権田修一が戻ってくる。出場停止明けの高橋秀人が、加賀健一と入れ替わる形で復帰する。各ポジションともに戦力は充実している。今節も、ゲーム展開次第ではシステムの変更や、新戦力の投入によって状況を一変させる采配が見られるかもしれない。

対する大宮は、この夏の移籍市場で大きな動きを見せたクラブの一つだ。神戸からＤＦ河本裕之を期限付き移籍で獲得し、ノヴァコヴィッチ、ズラタン、そして若いイ グノもチームに加わった。下位に低迷しているが、この戦力補強で降格圏脱出を図ろうとしている。ポポヴィッチ監督はその中でもノヴァコヴィッチの名前を挙げて「私は、彼がキャリアをスタートさせたオーストリアの３部リーグ時代から知っている。日本ではそれほどメジャーな存在ではないかもしれないが、すばらしい選手だよ」と言い、警戒を強めた。

大宮は、Ｆ東京が前節柏戦のロングボール策で最終ラインが混乱した姿もしっかりとスカウティングしているはずだ。大宮の前線には長谷川悠、ズラタン、ノヴァコヴィッチと、いずれも長身選手が揃っているだけに、なりふり構わずハイタワー目掛けて放り込んでくる可能性もある。そうした展開になれば、セカンドボールの処理と、２列目からの飛び出しにも注意を払わなければならない。それでも大宮のロングボール策に苦戦するようであれば、柏戦で使用しなかった新たな配置が今節お披露目される可能性も高い。両ベンチの仕掛けもこの試合では大きな焦点になるはずだ。

また、この試合には、付加価値もつく。ロンドン五輪閉幕後初のＪリーグ。Ｆ東京には徳永と権田が、大宮には東が、サッカーの母国から熱気を持ち帰ってきた。熱い夏は、まだ終わらない。この試合から戦いの場所を移して周りも巻き込んで再びピッチを熱くするはずだ。

以上

2012.08.17 Reported by 馬場康平