水戸にとってリベンジを期す一戦である。前回対戦では「立ち上がりから最後まで我々のペースで進んだ」と柱谷哲二監督が語ったように、終始水戸が主導権を握り続けた。しかし、守備を固める大分からゴールを奪うことができず、試合終了間際にセットプレーから失点して、敗戦を喫すこととなったのだ。選手もサポーターもあの悔しさを忘れている者はいないだろう。

それだけではない。昨季から柱谷体制で3度大分と対戦しているが、いずれの試合後も田坂和昭監督が「水戸には勉強させられた」と口にしている通り、水戸が支配する試合が続いたのだ。だが、結果は水戸の1分2敗。しかも、3試合ともノーゴール。チャンスを決め切ることができず、少ないチャンスをモノにされ、苦汁をなめさせられてきた。今節こそ、これまでの雪辱を晴らすべき試合なのである。

ただ、3試合を振り返ると、ボールを支配したのは水戸であったが、それはある意味大分の狙い通りの戦いだったのかもしれない。しっかり守備を固めてゴールを守り、水戸に焦りが出てきた隙を狙う。その狡猾さこそが、大分の強さの秘訣と言えるだろう。それは“試合運びのうまさ”と言い換えることもできる。前節、水戸が対戦した首位甲府もそうであったが、自分たちから隙を与えないことが勝負の鉄則であり、それをまっとうできるチームが上位の資格を得ることができるのだろう。特に夏場は効率的な戦いをできるチームが有利となるだけに、今節も前回対戦同様手堅いサッカーをしてくるのならば、大分に分があると言わざるを得ない。

ただ、それを打ち破ることこそ、今の水戸の使命である。そして、その予兆は、ある。前節甲府戦では新加入の星原健太がいきなりの先発出場を果たし、自慢のスピードを生かして甲府ゴールに迫った。さらに前々節山形戦で同点ゴールを決めた特別指定選手の山村佑樹も初先発を飾り、クロスバー直撃のシュートを放つなど持ち味を発揮した。そして、今節は鈴木隆行が2試合の出場停止から復帰。2試合休んだことでコンディションも万全なことだろう。間違いなく前回対戦時よりも水戸の攻撃力はパワーアップしている。「ウチは守り勝てるチームではなくなった。攻撃的なチームになる」と柱谷監督が言うように、水戸は攻撃力が武器のチームへと生まれ変わろうとしている。これまでこじ開けられなかった大分ゴールをこじ開けることこそ、その証明となる。いざ、4度目の正直に挑む水戸。今度こそ大分からゴールと勝利をもぎ取って見せる。その意気込みを持って試合に挑む。

その本気度は今週水曜日に行われた練習試合に見ることができた。試合自体は公開で行われたのだが、メンバー・得点者は非公表となったのだ。それはクラブの歴史の中でも珍しいこと。それだけ今節と、続く横浜FC戦、千葉戦の上位3連戦を重要視していることだと思われる。「まだ（J1昇格を）諦めていない」というスタンスを、クラブとして示したのだと思われる。わずかな可能性をかけて挑む3連戦の初戦。ここで“天敵”を倒すことで、次なる可能性が見えてくる。まずはこの90分に持っているすべてをぶつけるしかない。

大分も落とせない一戦だ。前節北九州に0対1の敗戦。前半のうちに相手に退場者が出ながらも、敗戦を喫したことによるショックは決して小さなものではないだろう。大切なことは引きずらないこと。ここで前節の流れを断ち切って、次節東京V戦に胸を張って挑みたいところだ。大分にとっても今後を左右する一戦となることは間違いない。

以上

2012.08.18 Reported by 佐藤拓也