17日に登録ウインドーが終了。松本はこの間、新たに6選手の獲得を発表するなど選手層の底上げに尽力してきた。チーム内競争は更に激化し、良い意味での緊張感が漂っている。後半戦に突入してからチームは好調で、3勝1敗3引き分けと「負けは一つしかない」（多々良敦斗）状況。チームの持ち味である粘り強さが随所に発揮され、先制点を与えても下を向くことなく、追いつき追い越せるだけの地力もついてきた。着実に勝点を積み重ね、順位も14位まで上昇。選手たちも前向きに日々のトレーニングをこなしている。
しかし前節・富山戦で、開幕以来ゴールを守り続けてきた野澤洋輔が右膝を負傷。チームから全治約2ヶ月と発表された。守護神の戦線離脱は痛手という他ないが、こういう状況で問われるのはチームの総合力である。ここまで試合出場機会のなかった白井裕人・石川扶も腐ることなくひたむきに準備を続けてきた。「これをチャンスと思うしかない。アルウィンでは良いパフォーマンスが出来ていないので、思い切ってやりたい」という白井の言葉からも、この危機をあえてプラスにとらえようという意気込みを感じる。

対戦相手に迎えるのは熊本だ。前半対戦時（第8節）では3-0で勝利。Jリーグ加盟後初となる複数得点での勝利となり、そこから松本は上昇気流に乗り出した。ホームゲームだけに、多くのサポーターの前であの快勝劇を再びと行きたいところだが、そう簡単にはいきそうにない。反町康治監督も「前半対戦時はたまたま向こうが悪かっただけで、我々が劇的に良かったわけではない。1点を争う難しいゲームになるだろう」と今節の展開を予測。「前線にはJ1でも実績のある選手が揃っており、もともと戦術的にもしっかりした手堅い相手」と熊本を高く評価している。確かに前半対戦時は負傷で出場できなかった藤本主税が復帰し、柏から北嶋秀朗も招きいれた。4連敗と波に乗れずに苦しんでいたものの、前節3-0で栃木に快勝したことで潮目は間違いなく変わっている。システムもこれまでの3-4-2-1ではなく4-4-2を採用する可能性が高く、当時とは全く別のチームであると考えた方が賢明だ。選手たちも「映像を見たが悪いチームとは思えなかった。うちの戦術が上手くはまったのでは」（伊藤竜司）、「セットプレーが決まって点がとれたが、熊本も補強しており、違うチーム」（飯田真輝）と口を揃えるように、あの試合の屈辱を胸にアルウィンに乗り込んでくる熊本への警戒心を露わにしている。

気を付けたいのは、ここ数試合決して良いとは言えない試合の入り方だ。「全てが悪いわけではないが、消極的な戦いぶりは修正しないといけない。最初の10分についてはミーティングでも意思統一を図っているが、相手の前線の圧力を助長するような戦いをしてはいけない」と指揮官も口にするように、序盤に前を向かずに積極性に欠けた試合運びをすると、熊本の勢いに呑まれて主導権を失ってしまう。攻守にアグレッシブな松本らしいサッカーで挑みたいところだ。
「シーズン前から夏場で実力を発揮できるように準備を重ねてきた。強いチームは7月8月で他チームとの差がつく」とはJ2を知り尽くす反町監督の言葉だ。上位チームは夏場にこそ真価を発揮する。暑い日が続き、日程も厳しい今はまさに正念場だ。この夏を制し、「夏以降に調子を落として、順位をずるずると下げていく」というJリーグ1年生の常識を覆したい。

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2012.08.18 Reported by 多岐太宿