“真夏の祭典”北関東ダービーは最後の最後まで観衆の目をピッチに釘付けにした。
「両チームに負けたくない意地とか勝ちたい気持ちが表れた試合だった」
栃木・松田浩監督がそう総括したように、意地の張り合いは90分、終了の笛が鳴るまで続いた。特にラスト15分はダービー特有の痺れる攻防が繰り広げられ、栃木がパンチを繰り出せば草津も負けずに打ち返した。互いに一発KOの威力を秘めたパンチを繰り出しながら、しかし最終的に決定打を打ち込めずに、栃木と草津の宿命の対決はスコアレスドローに終わり勝点1を分け合った。栃木は勝点1を加えて北関東ダービーの全日程を終え、首位に立ったものの、2位・水戸が草津戦を残していることから連覇への雲行きは怪しくなった(水戸はドローでも勝点7で栃木と並び、得失点で上回る)。
ダービーというファクターが眠れるライバルを目覚めさせてしまった。プレビューで触れたように、栃木にとって前節の反省を活かす意味で、試合の立ち上がりは最重要視された。しかし、「ファーストプレーで緩さが出てしまっていた」と大和田真史が言うように、ロングボールの競り合いで赤井秀行が土井良太に対して後手を踏み、その流れから奪われたCKをフィニッシュに繋げられてしまう。そこからは、前節の岐阜戦では見られなかった、草津本来の激しさ、もっと言えば荒々しさに押し込まれる。
ロングボールを土井に当て、そのセカンドボールを拾うパターンが草津の勢いを加速させ、対照的に押し込められた栃木は低い位置から攻撃をスタートせざるを得ず、持ち味の「いい守備からいい攻撃」に移行するタイミングを見出せなかった。最初の決定機は31分の草津。栃木のセットプレー崩れを突いて、小柳達司のスルーパスに遠藤敬佑が反応してシュート。このピンチをGK武田博行が落ち着いて対応すると、栃木は何度かいい形を作ったサイド攻撃から36分に菅和範、42分には佐々木竜太のミドルのルーズに菊岡拓朗が詰めた。が、草津も体を張ったことで均衡は破れなかった。
ハーフタイムに失っていた冷静さを取り戻せた栃木。的確な状況判断が出来るようになり、「後半はいい形でボールを回せた」(廣瀬浩二)。草津のお株を奪うように、ボールを動かしながら主導権を握った。それでも、草津は全く動じなかった。前線のターゲットを活用するプランを粛々と遂行する。
双方が果敢にゴールを目指したことで、終盤に差し掛かるに連れてダービーは一段とヒートアップ。栃木は75分にサビア、77分に廣瀬、アディショナルタイムに大和田が決定機を迎える。対する草津も70分に松下裕樹、77分からは交代出場の金成勇が短時間で都合3度もゴールに襲い掛かった。共にゴールネットが揺れても不思議ではないシュートが次々に飛び出したが、GK武田(栃木)とGK北一真(草津)が渾身のビッグセーブを披露したことで決着はつかなかった。
特長であるファイトする姿勢を思い出した草津。「最後のゴールがなかなか取れずに残念な結果に終わってしまった」(副島博志監督)部分もあるが、ブラジル人抜きの純国産メンバーで途中まで戦えたことを加味すれば、実りある勝点1だったと言える。次節は、守備の安定感を取り戻した熊本とのアウェイゲーム。「引き分けが2つ続いているので、次で勝つか負けるかで違ってくる。勝ちたい」(GK北)。計算できる守備をベースにした戦い方で、今度こそ3度目の正直で勝点3を奪いたいところだ。
プレーオフ圏内を視界に捉えている栃木にしてみれば、「ここからは勝つことのみが意味がある、というか価値がある試合が続いてくる。そういう意味ではちょっと残念な結果になった」(松田監督)。勝点3を得られなかったが、収穫は少なくなかった。3失点を喫した前節の熊本戦で負ったダメージは、粘り強く守って無失点に抑えることで幾分か緩和された。後半は準備したものがピッチで表現できた。課題として残った序盤の試合運びが是正されれば、4試合ぶりの勝星もそう遠くはないはずだ。限られた時間をグループとして有意義に過ごし、次節こそ満足する結果を掴み取りたい。
以上
2012.08.20 Reported by 大塚秀毅
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