「蛇に睨まれたカエル」のごとく、まさかサックスブルーのユニフォームを目にすると、すくみ上がってしまうわけでもないだろうが、またしても大差のついた試合結果と、試合後の記者会見で発した両指揮官による「今日は何もうまくいかなかったゲームだった」(柏・ネルシーニョ監督)、「これまでの経験を活かして、自分たちのスタイルをより貫いてくれた」(磐田・森下仁志監督)という言葉を踏まえれば、やはり柏と磐田には“天敵”とも言うべき相性が存在している気がする。
すでに故障者が多い状況にありながら、直前にロドリゴ ソウト、ペク ソンドンとまた怪我人が出てしまい、日本人のみでメンバーを組んだ磐田に対し、柏はブラジル・トライアングルが揃い踏み。ほぼベストの布陣で臨んだ。こうした部分ではホームの柏に優位性があったのは間違いないが、前半の2つのプレーが試合の局面を大きく左右し、それが結果にも影響を及ぼすのだった。
まずは5分、柏陣内深い位置でパスを受けた大谷秀和に素早く寄せた山田大記がボールを奪取すると、その流れのまま松浦拓弥とのリターンパスで柏の最終ラインのギャップを突き、飛び出してきたGK菅野孝憲の上をフワリと浮かして先制点をゲットする。「僕の判断ミス」と振り返る大谷の言葉通り、自陣深い位置でありながら軽率なボールロストは痛恨だった。橋本和もオフサイドを取るために山田に付いていかなかったが、攻守が切り替わった直後のミスによるボールロスト、しかも普段ならば的確な判断で安易な失い方をしない大谷だったからこそ、柏の最終ラインは虚を突かれ、ラインコントロールにも誤差が生じたのだろう。そして18分には、足裏を見せた危険なタックルにより、近藤直也が一発退場となる。大谷のミスと近藤の退場。柏の基盤を支える2人の、この2つのプレーが全てだった。
ただ、「数的優位になったが、より難しさが増す部分もあった」(森下監督)というように、サッカーでは数的優位を得たチームが、「数的に優る」その安心感から運動量を落とし、逆に劣勢を招くことは珍しいケースではない。だが磐田は、特に中盤の山田、松浦、小林裕紀が足を止めることなく、常にゾーンの間に入ってボールを受ける意識を保ち続け、広く動かしながら的確にゲームを進めていった。28分の追加点の場面も、空いている選手にボールを預けて中盤を構築しつつ、最後は縦に入った松浦が倒されたファウルから得たフリーキックから生まれたものである。駒野友一の蹴ったボールが、壁に当たって絶好のコースに飛ぶあたりは、磐田には運があり、柏には不運以外の何物でもなかったが。
もし数的不利でもスコアが0−0だったならば、柏はブロックを作って徹底したカウンター狙いに出るなど、様々な策が考えられたはずである。だが、2点のビハインドが重くのし掛かったため、柏が出ざるを得ない状況となる。そうなると、ネット バイアーノが千代反田充と菅沼駿哉の2人に付かれる苦しい局面でも何とか前線でキープし、そこで数秒のタメを作ってレアンドロ ドミンゲス、ジョルジ ワグネルの個の力で打開するのが、やはり考え得る最良の策だったのかもしれない。実際に後半からブラジル・トライアングルを前線に並べた4−2−3のシステムにし、攻撃のことを考えてFWの工藤壮人を右サイドバックに残して、パスをつなぎながら反撃を試みるのだが、磐田の守備陣も「ネット バイアーノにはつられず、1人は潰しに行って1人がケアをする。レアンドロには飛び込まずに正面に立つ」(千代反田)と、ブラジル人の個の力に振り回されることなく対峙。DFの奮闘、八田直樹の好セーブもあって柏の攻撃を抑えると、78分にはDFの視界から消える動きとポジショニングの妙を見せた前田遼一が、ファーサイドで菅沼実のクロスをワンタッチで沈め、粘る柏にトドメを刺した。
苦手のアウェイで、そして怪我人続出という苦しい状況下で千代反田、菅沼といった、これまで出場機会の少なかった選手が活躍して快勝を収めた磐田は、前節のC大阪戦の逆転勝利に続く連勝で今後への上昇の気配を感じさせるが、8月のリーグ戦は3分1敗と未勝利に終わった柏には一抹の不安が残る。昨年は“天敵”磐田に屈した後は、しっかりと白星を手にすることで悪い流れに歯止めをかけたが、次節のアウェイ名古屋戦を、ジョルジ ワグネルと近藤を欠く状況でどう戦うのか。連覇を狙う柏に、いよいよ正念場が訪れようとしている。
以上
2012.08.26 Reported by 鈴木潤
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