ともに素直に力を出しきったゲームだった。スコアレスドローという結果ではあったが、終了の笛と同時に送られた大きな拍手はそれぞれの健闘を讃えるものだった。「やられる可能性はあるが、逆にやる可能性もある」(大分・田坂和昭監督)として、同じフォーメーションでマッチアップする形を選んだ前半。岡山・影山雅永監督も同じ理由から同じ選択をしていた。前半は岡山がボールを奪ってボールを握り、後半に入ると大分が並びをアレンジして得点を狙った。大分のGK清水圭介、岡山のGK中林洋次の持ち味を生かした好セーブが光るゲームにもなった。
4日前の前節から、両チームともに同じ先発メンバーで臨んだ。立ち上がりから岡山のプレスが効いて、また最終ラインとボランチの守備でボールを奪うことが出来ていた。サイドを起点にエリア内に入り込んでフィニッシュに至る場面を作った。とはいっても岡山がボールを支配し続けていたわけではない。チャンスは岡山に多かったが、FW西弘則はさすがのドリブルで抜け出し、大分は少ないながらも質の高い攻撃を見せ、岡山のファウルも多かった。また最終ラインを5枚にして前線3枚を残して自陣に戻る守備は、いつも通り統制がとれ、安定していた。
前半の岡山の決定機は24分、FW石原崇兆がパスカットして左ワイド・田所諒につなぎ、田所が送ったクロスにFW川又堅碁が頭で合わせたシュート。そして35分、こちらも田所の絶好のクロスに走り込んできた右ワイド・澤口雅彦が放ったヘディングシュート。澤口のシュートはGK清水がギリギリで弾いた。
戦術に沿って切られた交代カードも生きた。大分は後半の頭からシャドーのFW村井慎二に代えて、MF宮沢正史を投入。同時に森島と西の2トップにすることで、「ミスマッチを起こしてボールを動かそう」(田坂監督)という意図があった。また宮沢がアンカー的なポジションに入ったことで、DF松原健のオーバーラップなど、後ろの選手の攻撃参加を促し、大分の時間を作った。さらに後半27分、30分に入った林丈統、チェ ジョンハンが岡山の3バックの間に顔を出して揺さぶりをかける。大分の決定機は、後半43分。コーナーキックからのこぼれ球をチーム得点王の三平和司が蹴り込む。しかしこれはGK中林洋次がはたいてセーブした。
岡山の交代で入った選手はFW関戸健二、FW三村真、FW上條宏晃。先発の川又、石原に加えて、22〜23歳の前線の選手がフレッシュな状態で入ったことで、足の止まりかけていた時間にペナルティーエリア内に入り込む場面が出来た。フィニッシュの精度の問題はあるが、石原のスピードと走量は岡山のハードワークの重要なピースであり、関戸の冷静な判断はこれからもっと欠かせないものとなっていく。またこのゲームで初のお披露目となった川又のロングスローは、学生時代にもやったことがなかったらしいのだが、残り11試合で得点を演出する機会を狙いたい。
8月の終わりの8日間で3戦を戦う連戦。そのラストにふさわしい、力を出し切ったゲームだった。現実派・澤口雅彦の試合後のコメント、「ゴール前で決められれば上位に行けて、決められなかったら行けないということだと思います」という厳しい真実は、自分に向けて発せられたものだが、両チームに当てはまる内容でもある。
以上
2012.08.27 Reported by 尾原千明
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