今年からJ2に導入されるプレーオフ制度は、間違いなく多くのチームに大きなモチベーションを与えていると言って良い。もちろん2位以内の自動昇格を狙うことが第一目標であるが、6位以内に入ることで昇格への希望が開けるからだ。その大事な6位の壁に、横浜FCと栃木の両チームは阻まれ続けている。横浜FCは、第23節(7月28日)の岡山戦の勝利で一度は7位まで上昇するが、その後4勝1分3敗の成績で6位以内には一度も入れず現在8位。栃木も第8節(4月16日)の町田戦で7位を得るが、現在9位となっている。6位との勝点差は横浜FCが4で、栃木が5。ともに前節で上位との直接対決に敗れているが、この対戦は6位の壁への挑戦権を得てライバルを蹴落とすという意味で、その直接対決と同じぐらい重要なサバイバルマッチとなる。
この両チームが、一方で上昇カーブを描いて6位近辺を食らいついていられるのは、間違いなくそれぞれのサッカーのスタイルをぶれずに積み上げてきたことが理由だ。横浜FCは愚直に前進する保持を磨き続け、栃木も組織だった守備からの攻撃に加え、さらなる攻撃の形を高めてきた。前節横浜FCは甲府に、栃木は湘南に敗れたが、ともに大事な試合に敗れてなお、自ら磨いてきたスタイルが示せたことで次への手応えを感じている。
横浜FCの山口素弘監督は、悔しい敗戦をした前節甲府戦の試合後に「これからの楽しみが増えた」と不敵に語った。それは、「勝負の8月」を経た上での本心だ。湘南戦(第27節)、山形戦(第28節)は、守りながら数少ないチャンスを決める本来の横浜FCの戦い方ではない形で勝利した一方で、京都戦(第29節)、甲府戦(第31節)は、自らが支配する展開を作り出しながら敗戦をした。しかし、特にこの京都戦から甲府戦の厳しい3連戦で、効果的に縦パスを入れて支配する形が出てきていることに、指揮官は大きな手応えを掴んでいる。
「縦パスの意識はずっとやっていたことで、それが一番きついところで出たのは、逆に選手に自信になっているし、確信めいたものになっていると思う。選手にも伝えたけど、(繋ぐスタイルを)軌道修正するつもりはまったくない、軌道修正しなくて回りから笑われるかもしれないし、これは無理だと言われても俺はかまわない。誰にどう思われようが、やっていく。躍動感も出てきた。連戦の時にそういうのが出たというのが非常に強い。これは今後行けるぞという感じがする」(山口監督)
守りながら少ないチャンスで勝つには限界があるし、長続きはしない。山形戦も薄氷を踏むような勝利だった。だからこそ、大きな結果には結びつけられていないが、連勝の原動力だった繋ぎながら崩すスタイルへの自信を増していることは大きい。それを山口監督の9月のキャッチフレーズ「実りの秋」に繋げたい。
対する栃木の松田浩監督も、前節の湘南戦の試合後の記者会見で「今季見ていて一番面白かったし、一番の出来だった。全く頭を下げるような試合ではないし、これで自信をつけたと思う」と手応えを得た試合でもあった。横浜FCの山口監督は「詳しくは言えないが、栃木は前回の対戦から変わっているし、ある意味一番安定していると思う」と述べているが、栃木が従来から持つ、組織的な守備からの攻撃というスタイルに加えて、繋いでビルドアップする攻撃の方法もレベルを上げてきている。湘南戦での廣瀬浩二のゴールは、DFラインのゆったりとしたパス回しから、右サイドでパスを回しながらビルドアップしてゲットしたもの。さらに、菊岡拓朗がバイタルエリアでアクセントとなり、崩して攻撃するスタイルは栃木のレベルアップを象徴している。前回の対戦(6/17、第20節@グリスタ)でも菊岡はセットプレーで逆転ゴールを決めたが、セットプレーにおいても要注意の選手だ。八角剛史は、
「前回もやられているし、ヴェルディ時代もやられているし、大学時代もやられている。支配されれば、自分たちの陣地でセットプレーを与える回数が増えるので、自分たちのサッカーを出し切ってそういう回数を減らしたい」
と、栃木のストロングポイントに警戒を怠っていない。
前回の対戦では「横浜FCさんの方がやっぱり力的に上だなと思うようなところが多々見られた」と松田監督が脱帽宣言をしたが、それだけにリベンジの執念は強いはず。逆に山口監督はこの試合を振り返って「ハーフタイムで怒ったのはあの試合ぐらいじゃないかな。失点はちょっとしたミスだったが、同点に追いつかれその後、下を向いた形になっていたので、それに対して強い口調で言った」と、チームとしての戦い方に大いに不満があったと述べた。今節の対戦では、前回の対戦で両者が感じた課題をいかにチームとして克服してきたが問われる。
特定の個に頼るのではなく、チームとしての戦い方を愚直に追求してきて、高い完成度を積み上げてきた両チームの対戦。そして、必要なのは自らが這い上がり、相手を蹴落とす勝点3だけだ。激戦となるのは必至。ニッパツ三ツ沢球技場では、レベルの高い、魂のフットボールが見られる。
以上
2012.09.01 Reported by 松尾真一郎
J’s GOALニュース
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