「勝てる試合を無駄にしてしまった」(原口元気)
これが浦和の選手たちの、そして試合後にブーイングを浴びせたサポーターたちの総意だろう。浦和が大宮をホームに迎えて戦った埼玉ダービーは1─1で勝点1を分け合う形で終わったが、浦和にとっては「勝点2を失った」試合だった。
ここ最近、浦和は序盤に主導権を掴んで試合を優位に進める展開が多いが、この試合も例外ではなかった。両ワイドの梅崎司と平川忠亮がピッチの幅を確保し、中と外をうまく使い分ける浦和得意の攻撃パターンが立ち上がりから機能した。
特に左サイドの梅崎が起点となり、勝負の局面に持っていく形がうまくはまった。先制点の起点になったのも梅崎だった。左サイドでパスを受けた梅崎が柏木陽介に戻し、柏木が中を見てクロス。マルシオ・リシャルデスの落としを原口が落ち着いたトラップで処理すると、右足で冷静にゴールに流し込んだ。
さらに浦和は17分、鈴木啓太の散らしのパスから梅崎がミドルを放ち、バー直撃の決定機を創出。するとその直後、大宮のノヴァコヴィッチが阿部勇樹を後ろから手をかけて倒し、2枚目のイエローカードで退場処分に。浦和は試合開始からわずか20分足らずで、1人多い状況+1点リードという圧倒的に優位な立場となった。
おもしろいように自分たちのペースで試合を進めていく浦和。30分にはマルシオがポスト直撃のヘッドを放つなど追加点の匂いをプンプンさせていた。だが、圧倒的優位の状況は、同時に選手たちの心に隙も生み出してしまっていた。
その気の緩みが命取りとなったのが前半アディショナルタイムだ。東慶悟が長谷川悠とのワンツーからミドルシュートを放つと、これがゴールマウスに吸い込まれた。それまで全くいいところのなかった大宮が、前半唯一のシュートで同点に追いついた。
東のシュート自体は「ここしかない」というコースに飛んだ見事な一撃だった。しかしこの場面、浦和の守備の枚数は足りていた。「人はいたし、まさか入るとは思わなかった」とは槙野智章の弁だが、チーム全体にそういう緩い雰囲気が漂っていた。東も「密集していて『一人じゃ無理だ』と思ったらハセ君(長谷川)が見えたので、当てて飛び出そうと思ったら相手がついてこなくてフリーになれた」と振り返っている。枚数は足りていたのに誰も寄せにいかなかった。油断から生まれた失点だった。
結果的にこの1点は浦和に重くのしかかった。後半、大宮がゴール前を8人で固める守りの形を取ると、浦和は手を焼かされた。数的優位の状況もあってボールは当然のように支配するが、大宮のブロックをなかなか崩せなかった。「僕らが引いて守っていたので相手もなかなか飛び出すスペースがなくて、僕らのブロックの前でのパス交換が多かった」と金澤慎も振り返る。
サイドにボールをつけても高さがないので、引いた相手へのクロスは有効打になりにくい。そこで中に戻して守備を揺さぶろうとするが、中央では大宮が人垣を築いて待ち構えており、浦和はそこに無理に突っ込んでは跳ね返されるというのを繰り返した。
前半見せていたようなテンポの良さも消えていた。永田充が「少し落ち着きすぎていた。余裕が出すぎて、攻めにいっていないわけじゃないけど、アグレッシブさがなくなっていた」と反省したように、全体的に判断の遅さが目立った。
シュートにいける瞬間があっても、そこで打たずに持ち過ぎて選択肢を自ら潰してしまったり、ボールを持ってから次のプレーを考えるような姿が見られたりした。ダイレクトパスやフリック、スルーといったプレーでリズムに変化を与えられる柏木が、負傷交代により後半いなかった影響もあっただろう。宇賀神友弥のミドルシュートがポストに嫌われるといった不運もあったが、全体的に後半は攻めあぐねたという印象が強かった。
大宮は残留争いに巻き込まれているだけに、どの試合でも勝点3が欲しいはずだが、今回に関しては勝点1でも上出来だ。前半にビハインドを背負った状態で1人退場し、シュート数は90分でわずかに2本。これで勝点を上積みできたのだ。長谷川悠も「もちろん勝てればベストだったけど、10人で上手くやれたと思う」と話している。
浦和は今シーズン初の3連勝を逃し、リーグ戦ではまたも大宮から白星を挙げることができなかった。絶対的優位の状況からまさかのドローに「今日はブーイングに値する試合だったと思う」とは加藤順大。浦和にとっては埼玉ダービーの難しさを改めて思い知る一戦となった。
以上
2012.09.02 Reported by 神谷正明
J’s GOALニュース
一覧へ- 終盤戦特集2025
- アウォーズ2025
- 明治安田J1昇格プレーオフ2025
- 明治安田J2昇格プレーオフ2025
- J3・JFL入れ替え戦
- AFCチャンピオンズリーグエリート2024/25
- AFCチャンピオンズリーグ2 2024/25
- はじめてのJリーグ
- Jリーグ×小野伸二 スマイルフットボールツアーfor a Sustainable Future supported by 明治安田
- 明治安田Jリーグ百年構想リーグ
- 2025 月間表彰
- 2025 移籍情報
- 2025 大会概要
- J.LEAGUE FANTASY CARD
- 2025 Jリーグインターナショナルユースカップ
- シャレン Jリーグ社会連携
- Jリーグ気候アクション
- Jリーグ公式試合での写真・動画のSNS投稿ガイドライン
- J.LEAGUE CORPORATE SITE













