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【J1:第24節 鳥栖 vs G大阪】レポート:4得点は守備意識のなせる業。今節も見せた“鳥栖らしさ”で5位浮上。バイタルエリアでのポゼンションを出すことができずに、G大阪は6試合ぶりの敗戦。(12.09.02)

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勝敗がつくからこそ、試合に見入ってしまうわけで、その過程だけでは満足できないものがスポーツなのだろう。
ピッチに入れば、両者とも勝利を狙い死力を尽くす。
そのためにボールを相手エンドに運びシュートを放つ。
文字にするといたって簡単なことなのだが、そこに至るまでの過程には、それぞれのチーム内での思惑がある。

今節の鳥栖は、「守備から入るのが基本路線」(藤田直之/鳥栖)としっかりとブロックを引いた中から相手に対峙した。
対するG大阪は、「もっと、アタッキングサードでボールを動かさないと・・・」(遠藤保仁/G大阪)とやや思惑から外れた試合の入り方になってしまった。
鳥栖から見ると、しっかりとした守備でG大阪の攻撃の芽をつぶしたといえるだろうし、G大阪からは、まんまと鳥栖の守備にはめられてしまい意図した攻撃の形を出せなかったといえるだろう。
はめたのか、はめられたのか・・・そこには、中盤での主導権をかけての駆け引きが行われていた。

まずは、鳥栖サイドから見てみたい。
G大阪のDFにボールがある時は、あえて“持たせておく”守備を見せた。FW・MF・DFと3つのラインでブロックを作り、その前でボールを横に動かさせておけばG大阪のFWにはボールは渡らない。
ここで、無理にボールを奪いに行くと、細かなパスでかわされてしまう可能性があり、ボールが自陣ゴール近くに運ばれる危険性が出てくる。
鳥栖からすると、G大阪のDFにボールがある状態を長く作ることで、G大阪に「余裕を持ちすぎた」(松浪正信監督/G大阪)状態となり、「判断が遅かったり、パスがつながらなかったりと、なかなかリズムを作らせてくれなかった」(同)とG大阪らしくない時間帯が続くことになる。その結果、「G大阪が攻めきれなかった」(同)。
FWの豊田陽平と池田圭がボールの入るコースを限定しサイドチェンジの芽を摘むと、MFの岡本知剛と藤田直之が中盤のパスコースを消す。
これで、G大阪に攻撃のリズムを作らせず、FWへボールが入る機会を大幅に減らした。

G大阪サイドから見てみると、センターとサイドをうまく使って相手の守備を揺さぶり、隙を作ったところでMF遠藤保仁からのラストパスでシュートまで持っていきたかったのだが、そこができなかったことになる。
サイドDFの藤春廣輝と岩下敬輔は高い位置でボールを待ったが、有効なサイドチェンジが行われるシーンが少なく、遠藤保仁が引いてボールをもらうシーンが何度も見られた。遠藤保仁が引けば、そのスペースにFWパウリーニョが引いてしまい、そのスペースにロングボールを入れるというG大阪らしくない攻撃も見られた。
タテに入るボールには、激しいプレスがかかるため、止むを得ずボールを戻すシーンも増えた。
この日のG大阪は、シュート14本も放ったが、決定機と呼べるものは少なかった。

このような状態になった一番の要因は、前後半の立ち上がりにある。
前半2分の鳥栖のFKはゴール正面25mだった。冷静にゴール左隅を狙って藤田直之が決めた。
1−0のアドバンテージで試合を始めたようなものである。鳥栖が落ち着いて守備のブロックを引くためには、有効な時間帯と先制点だった。
逆にG大阪は後半の3分にゴール正面22m地点でのFKを得た。ここで決めれば1点差に詰め寄ることができ、アディショナルタイムを含めて試合時間の半分をかけて戦えることになる大事なものだった。
しかし、遠藤保仁が放ったキックは、無情にもポストを叩いてゴールからそれた。
流れをつかむためには、試合の入り方が重要なポイントとなるが、そこで決めた鳥栖と決めきれなかったG大阪とでは、それ以降の試合運びの思惑が大きな違いとなって出てしまった。

前半の終了間際、後半の7分、試合終了間際に鳥栖が得点をあげた流れも、鳥栖には効果的に、G大阪には大きなダメージとなった。
特に89分の鳥栖のCKは、残り時間から見ても無理して得点を狙うシーンでもないはずだが、選手たちは時間を稼ぐことなくゴールを狙っていった。
「(得点を)とるととらないとでは、いろんな意味での印象も違うので自分にとっては大きな1点でした」と決めた小林久晃ははにかんだが、選手を代表して最後まで攻める気持ちを見せたものだった。

「今はもう『奇跡』ではなく、我々の『実力』で勝利を一つ一つ重ねていると思う」と尹晶煥監督は振り返ってくれた。
何かのあるものが、彼の眼には見えてきたのかもしれない。

シュートを放つためにボールを相手ゴールに運ぶ。
運び方はそれぞれのチームで特徴はあるが、ボールを失わないことは共通である。
奪われなければ相手に点を奪われないし、相手ゴールに近づけば近づくほど得点の可能性は高くなる。
ボールを奪った瞬間に、守備から攻撃に切り替わるのがサッカー。
どのようにしてボールを奪うのかを楽しむのもサッカー。
サッカーは、得点までの過程の中に魅力が詰まっているスポーツである。

以上

2012.09.02 Reported by サカクラゲン
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