中盤で潰し合い、比較的拮抗した展開で進んでいった試合だったが、終わってみれば0−2のスコアでアウェイの清水が勝利。前半に2点を奪い、後半はうまく試合をコントロールしながら巧みに勝ち切ってみせた。
立ち上がりはほぼ互角に近かった。いや、どちらかと言うとホームの札幌に分があったか。悪いときの札幌というのは早い時間帯にちょっとしたミスやセットプレーから簡単に失点し、そのまま流れも失ってしまうのだが、この日は開始直後から集中力と運動量が保たれ、前半の30分あたりまでは清水の素早い攻撃をしっかりと跳ね返し、カウンターも繰り出していた。
そしてハモンである。序盤はなかなかこの選手にパスが渡らなかったのだが、時間が経つにつれてボールに触れる機会が増え、その圧倒的な能力を見せつけるようになる。特に前を向いてボールを運ぶ場面などは、清水がファウルをしなければ止められず、そうしたこともまた札幌がいいリズムで戦える要因のひとつとなっていたのだ。地元ファンの大声援を受けたことでアグレッシブさも加わり、清水のゴトビ監督も「この場所(札幌ドーム)では、対戦をするのが非常に難しいチーム」と札幌を評した。
ただし、清水も流れを引き寄せる準備を着々と行っていた。
守備に回ったときの札幌は内村圭宏とハモンの2人が高い位置に張り、残りのフィールドプレーヤーが4人ずつの2ラインでブロックを形成する。それに対して清水はトップの金賢聖にボールを集めたり、左右ウイングの高木俊幸、大前元紀が思い切って内側に絞る、あるいはポジションチェンジを絡めてきたため、札幌の守備ブロックは内側をケアすべく、横幅を狭めていった。
そうすると札幌のブロックの両横にはスペースが生まれ、清水はそこに李記帝、河合陽介ときにはカルフィン・ヨン・ア・ピンを入り込ませてクロスの供給源としてしまったのだ。もちろん高木、大前もここから攻撃を開始する。サイド攻撃から流れを作る、それこそが清水のプランだった。
そして38分、ヨン・アピンが左サイドから上げたロビングのこぼれを高木が押し込み、44分にはこれまた左サイドから高木が蹴ったクロスに大前がうまく合わせ、拮抗した展開ながらも清水が前半で2点をリードしてしまった。「シーズンを通して我々は左右のウイングバックとサイドバックとのコンビネーションのところをずっとやっている」と試合後のゴトビ監督。通常、相手に守備ブロックをセットされてしまうと、それを崩していくのはそう簡単なものではない。しかし、清水は意図的に両サイドにスペースを作り出し、そこからのイーブンボールで光明を見出すという明確なチーム戦術、プランを身につけているのだ。傍から見れば札幌があまりにも簡単にクロスを蹴らせてしまっているようにも映ったかもしれないが、そういう状況を清水は狙って作り出していたのである。
後半、注目となるのは2点を追う札幌がどのような策を打ってくるのか、その一点だった。
石崎信弘監督はビハインドを追う展開になると、攻撃的な選手を投入してシステムを4−2−3−1から3−5−2へと変更し、攻撃的のパワーバランスを一気に高めるベンチワークを繁用する。場合によっては後半開始と同時にシステムチェンジを行ってくる場合もあるので、果たしていつその策を用いてくるのか、非常に興味深いポイントだった。
だが、この試合では上原慎也、岡本賢明というアタッカーを投入した際もシステムは4−2−3−1のまま。やはり、サイドに人数をかけて起点を作ってくる相手に対し、アウトサイドの1枚となる3−5−2で挑むのはあまりにもリスクが大きいということなのだろう。この辺りの噛み合わせもまた、この試合におけるひとつの勝負のアヤだったのかもしれない。
結局、試合は前半終了時のスコアのままタイムアップ。アウェイの清水が勝点を37へと伸ばし、順位も7位へと上げている。
以上
2012.09.02 Reported by 斉藤宏則
J’s GOALニュース
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