本当に、今の愛媛にとってはゴールが遠い。今節の横浜FC戦でもゴールを奪えなかったことで、リーグ戦では4試合、天皇杯を含めると公式戦では5試合ノーゴール。それでも、シュートは未勝利のリーグ戦12試合中で、最も多い16本を放った。「本気で勝ちたいなら逃げるな！闘え！」とサポーターが掲げた横断幕の言葉のように、強いゴールへの意欲も感じられた。

「シンプルに、全力を尽くしてできることをやる、あとは最大限の集中をして最初から最後までやろう」。バルバリッチ監督が試合前、選手たちに伝えた言葉の通り、愛媛の選手たちは集中をして、シンプルに横浜FCのゴールへと迫った。ショートカウンター、サイド攻撃、ロングボール。バリエーションも多彩だった。前半は2度、右サイドを突破して横浜FCの守備を崩したが有田光希のシュートは枠をはずれ、前野貴徳が放ったシュートはGKシュナイダー潤之介の正面を突いてしまった。さらに、最終ラインからのロングボールに伊東俊が抜け出した場面も、混戦の中で最後は横浜FCの守備陣に体を張られ、ゴールには至らず。前半だけで11本のシュートを放ちながら、結局得点が奪えなかったことがこの試合の敗因となってしまった。

逆に横浜FCは選手を代えて、流れを引き戻した。最終ラインでパスの出しどころを探し、愛媛に引っ掛けられてピンチを迎えていた前半とは一変して、縦にボールが入る回数が増えた。すると後半20分、先制点が生まれる。中央突破を試みた横浜FCは、ドリブルでしかけた寺田紳一が大久保哲哉へパス。「イメージしたとおり反転できた」という大久保は、ディフェンダーを背負いながら振り向きざまに左足を振り抜き、決勝点を叩き出した。横浜FCにとってはリーグ戦の連敗を止める貴重な勝点3。落としてもおかしくないような苦しい展開を乗り越え、6位の京都とは勝点差2、5位山形とも勝点差3に詰め寄ることに成功した。

逆に、勝点を得られなかった愛媛は苦しい状況が続く。「運がよかった、というゴールでもいいから、今は得点が入って勝つことが一番」という伊東俊の言葉は、偽らざる心境だろう。ただ、シュート数だけでなく試合の内容を振り返ってみると、特に攻撃面ではリーグ戦で無得点の3試合と比較しても格段にゴールへと近づいた。サイドの選手がどんどん前の選手を追い越し、相手の守備を崩した。クロスに対しては、ツートップに加えて逆サイドの中盤、ボランチがペナルティエリア内に進入する迫力のあるフィニッシュに持ち込んだほか、高い位置で奪ってシンプルにカウンターをしかけることもできた。だからこそ、あとは決めるだけ。中2日でアウェイ東京V戦（9／17＠駒沢）を迎えるが、今節のように逃げることなく前を向いて戦い続けることで、この長いトンネルを抜け出したい。

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2012.09.15 Reported by 近藤義博