思い出されるのは、たとえばアウェイ東京V戦だ。FW陣が相手の最終ラインに対する圧力とともにボランチへのパスコースを消し、ビルドアップを分断する。ボール奪取に成功すれば、転じるは素早い。「周りがすごくよく動いてくれて、迷うぐらいプレーの選択肢がたくさんあった」と菊池大介が明かしたように、この日の湘南はとりわけボールに関与する人数が多かった。前線で何度も動き直し、引き出すトライを繰り返すその菊池をはじめ、湘南は攻守に動きを弛まない。
キリノの先制ゴールも守備が起点だった。遠藤航が自陣でパスカットし、受けた高山薫がすかさずドリブルで駆け上がる。曰く、「前にけっこうスペースがあったので、ひとりでどこまで行けるかみたいな感じで上がった」。あわせて周囲も動き出し、高山のクロスに反応したキリノが巧みにヘッドで流し込む。かたや唇を噛むのは、2戦連続スタメンに起用された草津の有薗真吾だ。「マークがずれてそのあとのカバーが遅れ、キリノにピンポイントで合わされてしまった」。高山の仕掛けにらしく呼応した永木亮太のオーバーラップもまた、相手守備陣の綻びを誘っていた。
16分に記録された先取点以降、湘南はゲームの流れをさらに手繰り寄せた。高山のプレッシャーを機に永木が奪い、キリノがポスト直撃弾を放つ。攻め上がった大野和成のシュートもポストを叩いた。ノンストップでゲームを運ぶ展開に、長い笛が響くのも早い。
守勢に回っていた草津は後半、選手交代によって打開を図る。1タッチのパスワークが増え、ポゼッションも高められた。右サイドを抜け出した金成勇のクロスに、小林竜樹がヘッドを合わせるシーンもあった。だが貴重な次の1点を挙げたのは湘南だった。機は先制の場面と同様だ。高山が自陣でパスカットし、菊池がドリブルからフィニッシュまで持ち込む。一度はブロックされるも、こぼれ球を下村東美が繋ぐ。そして71分、下村のクロスにふたたびキリノが巧みに合わせ、草津に傾きかけた流れに杭を打つ。守備に献身しながら要所で決めるあたりが憎い。
2点のビハインドを負った草津は、両サイドバックが裏のスペースを突くなどしてゴールを目指した。かたや湘南も、島村毅の投入とともに4バックに切り替えるなど譲らない。積極かつ盤石の試合運びでリーグ戦3連勝を飾った。
草津の副島博志監督の表情は硬い。「自分たちの失い方が悪く、切り替えで置き去りにされてしまった。ファイトする姿勢を打ち出せなかったことも含めて整理し、次のゲームに臨みたい」。次は富山をホームに迎える。今節千葉を2−0で降した難敵だが、この日の反省を次節に活かしたい。
一方、湘南は前線からの積極的なアプローチが攻撃の呼び水となった。コンパクトネスを伴った攻守の切り替えの速さに、攻撃のための守備であることがあらためて映し出された。付け加えるなら、たとえば後半序盤、高山のプレッシャーを機に大野がカットし、パスを小気味よく繋いで鎌田翔雅がフィニッシュを狙ったシーンなど、速攻だけではない決定機の創造も示されている。「前線から敵陣で圧力をかけるプレーや奪ったあとに相手より速く人数をかけて攻めるなど、今週やってきたことのひとつの成果が90分のパフォーマンスに表れたかと思う」曹貴裁監督は振り返った。負傷交代した古林将太の状態は気がかりだが、厳しいスケジュールを含めて、向き合う日々の鍛錬はきっと活かされるはずだ。中2日、つねと変わらぬ姿勢で岡山に挑む。
以上
2012.09.15 Reported by 隈元大吾
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