試合の前日。チーム好調の要因はどこかと問われた北九州の新井涼平はこう答えていた。「イケさんが得点するようになって、リズムが出てきた」。今季前半戦、ドリブラーでありストライカーである池元友樹が苦しんでいた。歯車のわずかなズレでしかないのだろうが、抜け出していくタイミングや、バーを超えてしまうシュートの精度が精彩を欠き、決定機を逸してしまっていた。そのイケこと池元が後半戦に入って覚醒。「強いチームはFWが決めている」と自分に言い聞かせるように話してきた池元が、今節も試合の流れを呼び込んだ。
立ち上がりの6分。多田高行の自陣からのロングフィードがペナルティエリア左端へと長めに入ってしまうが、そこに池元がスプリント。岐阜守備陣は池元のプレッシャーに気圧されるかたちになり、池元を抑えながらボールに触ろうとする池田昇平と、クリアを試みるGK時久省吾が重なってボールがこぼれてしまう。このミスを突いて池元がボールを拾い、角度の浅いところから左足で流し込んで北九州が先制する。
早い時間の先制で勢いに乗った北九州は、ボールポゼッションで相手を上回り、チーム全体でピッチを広く使ってボールを動かしたり、端戸仁や木村祐志の巧みなボールコントロールで前線へボールを供給。優位に試合を運んでいった。
北九州が圧している時間が続く中、30分過ぎに岐阜のDF地主園秀美が負傷する。1点を追う岐阜にとってDFに交代カードを切るのは避けたいところで、行徳浩二監督は迷わずMF李漢宰を投入。フォーメーションにも変化を加え、やむを得ない交代ながら、1トップのダニロへのロングボールに傾いていた攻撃に少しずつリズムが出始める。
前に人数を割くことで試合を通じて9本のコーナーキックを獲得。コーナーキックを含めてセットプレーも多く、尾泉大樹の正確なプレースキックがゴールを脅かした。ただ、北九州のハードディフェンスやGK佐藤優也の好セーブに阻まれてしまい、北九州へと傾いた流れを引き寄せられないままゲームは進んでしまう。22分には尾泉の右からのコーナーキックにファーサイドで池田が頭で合わせ枠を捉えるコースに飛ばすが、佐藤が横っ飛びで逃れてゴールならず。29分にもコーナーキックからチャンスを作るがネットを揺らすことはできなかった。
後半もボールを動かす北九州と、ダニロをターゲットに据える岐阜という構図そのものは変わらないものの、岐阜のバイタルエリアが空いてきていると判断した三浦泰年監督は「よりうまくボールを回すために」と竹内涼を早めに起用。高い位置でのボールポゼッションを試みると、その竹内起用直後の63分、北九州に追加点が生まれる。
左サイドから流れたボールに反応した池元がペナルティエリア内でオーバーヘッドに挑む。わずかに合わずにこぼれたところをボックス右側から入った常盤聡が鋭い弾道のシュート。一度はGK時久が好セーブで逃れるが、「トキくん(常盤)がああいう感じで打つとあの位置に来る」とコースを読んだ端戸仁がパンチングのクリアボールを収めて、冷静にゴールに流し込み、貴重な追加点を挙げた。
2点差を追いかける岐阜は65分、アブダを送り込む。このアブダに北九州DFが引きつけられる形になり、北九州サイドのディフェンスにも間延びする時間ができてくると、岐阜が待望の追撃点を手にする。
追撃の狼煙が上がったのは78分。低い位置からの尾泉のロングフィードをGK佐藤がはたくが、セカンドを北九州は拾えず、ボールを収めたのは岐阜の染矢一樹。すぐさま樋口寛規に送って、樋口がゴールへと振り抜いた。
勢いづいた岐阜は北九州陣内でプレーする時間が増え、86分には再び尾泉の右からのコーナーキックを起点に、こぼれ球を染矢が鋭いミドルシュート。しかしGKの好反応で得点に至らず、終了間際には北九州が金鐘必をボランチに入れて守備枚数を増やし、反撃も1点に留まってしまった。
2−1でホイッスル。
敗戦を喫した岐阜だが、フォーメーションを組み替えたり、個の力を持ったFWを入れることで終盤の15分は自分たちのゲームにしていった。早めの投入になった李漢宰や、プレースキックが冴えた尾泉もリズムを出すには十分すぎるスパイス。未だに順位としては厳しい位置に立たされているものの、自分たちでゲームをコントロールできている時間帯に得点できたことを今後の好材料として、残留するという消極的な目的ではなく、一つ上を目指すために、残り9試合を戦い抜いていきたい。
北九州は終盤で岐阜の波状攻撃に遭ってしまったが、早い時間帯に得点を重ねたことが奏功し、1点差で逃げ切った。これで北九州はリーグ戦7戦負けなしで、直近は3連勝。順位は一つ上がって10位となった。
ただ、「何試合どうであるという数字は気にはしていない」と三浦監督。勝ちはしたものの、「より確率を上げて勝利をすると考えたときに、もう一度失点をチェックした中で、攻めながらゼロで抑えるというサッカーを追求していきたい」と話し、試合後のテレビのインタビューでも、記者会見でも、険しい表情は緩めなかった。
中2日のタイトなスケジュールで、次節を迎える。
残り9試合。この時期は、厳しい日程はもちろん、累積警告やコンディションによる欠場、ボールもレギュレーションも違うカップ戦の挿入、昼間の開催試合の増加、ピッチ状態の悪化など、勝敗の因子を外に求めることは簡単だ。しかし、北九州は監督も選手も口を揃えて、こう言った。「うちは言い訳をしない」。
6位との勝点差は6。北九州は戦い続ける。
以上
2012.09.15 Reported by 上田真之介
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