「半分では結果が出ないということですね」。神戸の西野朗監督は記者会見の冒頭でそう述べた。この一言が示す通り、前半と後半では全くと言っていいほどゲーム内容が違った。極端な構図で言えば、前半は神戸がゲームを支配し、後半は磐田が主導権を掌握。後半に神戸の奥井諒がこの試合2枚目のイエローカードを受けて退場したことも大きなターニングポイントだったが、それ以外にも磐田が逆転勝利を収めた理由はあるように感じる。
理由の一つは自信だろう。この一戦を迎える前の両チーム状況は対照的で、磐田は前節の広島戦で同点に追いついて勝点1を挙げ、翌週の天皇杯では主力を温存させながらも圧勝している。J1初スタメンとなったボランチの小林祐希も「天皇杯を経験していたのは大きかった。特に緊張も感じなかったですし」と試合後にコメントを残している。今節の神戸戦でも先取点を奪われたものの、浮き足立つことなく神戸の猛攻を凌いで前半を1失点に抑え、どこかに絶対に勝てるというイメージがあったに違いない。森下仁志監督の試合後のコメントからも選手たちの自信はうかがえる。「前半は難しい状況だったのですが、ハーフタイムで選手が帰って来た時に、非常に落ち着いていました。自分たちの中で何かをつかみかけているように見えた」。後半に向けて強調した部分は「球際で負けるな」ということくらいだったという。
それに対して神戸はリーグ戦で2試合勝ちきれず、先週の天皇杯も敗戦。決してメンタル的に良い状態ではない中で、今節の磐田戦を迎えた。だが、この1週間でしっかりと修正し、前半は連動性を持った守備から少ないタッチ数でボールを動かす理想的なサッカーを展開できた。26分にはバイタルでショートパスをつなぎ、ボランチの田中英雄が相手DFの裏へ抜けた田代有三に技ありのフィードを見せ、最後はゴール前に詰めた小川慶治朗が決めるというお手本のような先制点も挙げた。西野監督も「今後、前半のような戦いを追求していきたい」と手応えをつかんでいる。
ただ、試合は90分。この試合に勝って自信を取り戻したい神戸と、自信を持って後半に臨んだ磐田との間には、多少なりとも差はあったように思われる。
後半は、立ち上がりから磐田がハーフタイムの指示通り、球際の厳しさを見せて自分たちのサッカーを取り戻した。後半から出場した山崎亮平が自らドリブルで仕掛け、前半とは違うベクトルをチームにもたらしたことも大きい。ボールポゼッションしながら、アタッキングサードに入ったところでスピードアップする磐田のサッカーが見事に戻っていた。
この立ち上がりで神戸はやや慌てたのか、前半のようにDFからビルドアップするのではなく、ここ最近のゲームのようにタテへパスを急ぎ、なかなかボールが収まらず、守備に追われる時間帯が続く。その状況の中で、62分に奥井がこの試合2枚目のイエローカードで退場。66分には攻撃の中心である野沢拓也を下げて、守備力のある茂木弘人を投入せざるを得ない展開となる。
また、数的不利で体力の消耗が増した神戸は、足の吊った田代有三に代えて72分にフェルナンドを投入。その直後の74分に、CKから磐田の山崎亮平に押し込まれ、同点に追いつかれてしまう。
さらに、76分には足が吊ったセンターバックのイ グァンソンがピッチを後にすると、その6分後の82分には右サイドを崩した駒野友一から中央の山田大記へ速いクロスが入り、それを山田が巧みなボールコントロールでDFを交わしてシュート。これが決勝点となった。
この流れでも分かるように、磐田が逆転勝利を手にしたもう一つの理由は、90分間の流れを考え、全員が共通認識を持ってチャンスを確実にものにできたことだろう。ポゼッションで神戸の体力を奪いながら、相手の選手交代直後の少しバランスが不安定な時間帯を狙うように得点を挙げている。まさに試合巧者と言えるだろう。
この勝利で、磐田は優勝戦線に踏みとどまる貴重な勝点3を挙げて4位を維持。駒野は「(残り9試合)上とは少しポイントが離れているので、優勝するには全勝が最低条件だと思っている。ホームもアウェイも同じサッカーができるようにやっていきたい」と決意を述べる。
敗れた神戸は順位を2つ下げて13位に。まずは自信を取り戻す1勝を挙げたいところだ。
以上
2012.09.16 Reported by 白井邦彦
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