前半と後半では、同じチーム同士が戦っているとは思えないほど展開がガラリと変わった試合。力量的には非常に拮抗していることがあらためて証明されたゲームでもあったが、その中でどちらも試合に勝ちきるプラスαの力を発揮することはできなかった。
前回と違って、F東京が最初から4-2-3-1の布陣で来たため、各ポジションできっちりとマッチアップする形で入った前半(清水も4-2-3-1に近い4-3-3)。こうなると、局面局面で優位に立てたほうが主導権を握ることができるが、前半では清水のほうが出足で上回り、早い攻守の切り替えで高い位置からの守備も機能。F東京にパスを連続して回す自由を与えないまま、自分たちはしっかりとパスを回して序盤から多くのチャンスを作った。
トップ下で公式戦4試合連続のスタメンとなった八反田が、幅広く動きながらシンプルかつ正確なパスで攻撃のリズムを作り、これまで以上に持ち味を発揮。そこに右サイドバックの河井陽介や右ウィングの大前元紀が絡んで右サイドでしっかりと起点を作ったうえで中央や逆サイドに展開し、アタッキングサードでの崩しという意味でも良い手応えを見せた。
ただ、もっとも流れが良かった前半30分あたりまでに先制点を取れなかったのは、清水にとって課題が残るところ。「攻めている時間帯のうちに点を取ることが大事」(八反田)と試合前のテーマにしていた部分でもある。
なかなかリズムをつかめなかったF東京も、石川直宏の裏への飛び出しで前半のうちに2度ほど決定機を作ったのはさすがという部分。ただ、41分に自陣で2度大きなミスが続いたのは、F東京にとっては非常に残念なところだった。
そこで良い位置でボールを奪った大前が迷わずミドルシュートを放つと、相手に当たってわずかにコースが変わり、左ポスト際に鮮やかな先制ゴールが決まる。大前にとってはこれが自身初のリーグ戦10ゴール目となり、チームにとっても前半のうちに1点でも取れたことは非常に大きな価値があった。当面の目安としていた2桁得点を達成した大前。今後もシュートの思い切りや精度はさらに向上していくことだろう。
後半も、立ち上がりは清水の勢いが残り、開始2分で八反田のコンビネーションから石毛秀樹が決定的なシュートを放つが、ここはGK権田修一が意地のファインセーブ。2-0になったら試合が決まっていた可能性が高いだけに、このセーブが流れを変えることに大きく影響した。
その後は、ハーフタイムでポポヴィッチ監督にハッパをかけられたF東京の選手たち出足が良くなり、逆に清水は動きが落ちて、主導権が徐々にF東京に移っていく。中盤のセカンドボールも前半とは逆にF東京が拾うシーンが多くなってきたところで、後半6分に田邉草民に代えてヴチチェヴィッチを左サイドに投入して攻撃モードにシフト。そのヴチチェヴィッチを生かして左からの攻撃を強化し、F東京が押し込む時間を増やしていく。
また、前半よりもF東京の前線からのプレッシャーが厳しくなったこともあって、清水は自陣でイージーミスが増えてショートカウンターを受ける場面が多くなり、さらにリズムを失っていく。これでDFラインが深くなったことで選手間の距離が広がり、奪ってもパスを連続してつなげない展開になってしまった。
つまり、ヴチチェヴィッチの投入後は完全にF東京の流れ。そして後半14分、左CKをヴチチェヴィッチが素早くショートでつなぎ、折り返しを受けて自ら右足を振り抜くと、地を這うようなシュートをゴール右に突き刺した。この場面、清水は予想外の早いリスタートに対してボールを見ていなかった選手が多く、シュートにまったく対応できていなかったのは痛恨のミス。逆にそのスキを見逃すことなく突いたヴチチェヴィッチの判断も見事だった。
残念な形で同点に追いつかれたホームの清水は、そこから勝ち越し点を目指して攻撃に出るが、前半のようなリズムの良いポゼッションは見られず、単発な攻撃が主体。試合のペース自体はF東京が握り続けたまま時間が経過。ただ、どちらも100%のチャンスは作りきれないまま90分が過ぎて1-1の痛み分け。お互いに持ち味を出し合って、第三者の視点から見れば白熱した好ゲームではあっただろうが、どちらも上位陣との勝点差を詰めることはできなかった。
F東京が前半良くなかった原因としては、「前半はチームとしても全然動けていなかった」(米本拓司)、「前半はちょっと覇気がなかった。この前(天皇杯で)横河とああいうゲームをしてしまって、もっとギラギラした勢いのある入り方をしなければいけなかったけど、それができなかった」(権田)という声が挙がる。
清水が後半良くなかった原因としては、「自分たちのミスが重なって心理的にダウンしてしまったところがあり、集中力や組織力を失ってしまった」(ゴトビ監督)という側面がある。
前半と後半とこれだけ展開が変わった理由には、どちらもメンタル的な要素が少なからず影響している。もし両チームが本気でACL出場やリーグ優勝を目指すのであれば、そうした甘さを早急に修正し、このような拮抗した試合に勝ちきる力を身につけなければならないだろう。
以上
2012.09.16 Reported by 前島芳雄
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