キックオフ直後からこの一戦に懸ける両チームの執念が感じられた試合は、まず序盤に明暗を分ける大きなポイントが訪れた。6分、札幌はセットプレーのセカンドボールから揺さぶりを仕掛け、河合竜二からペナルティエリア内に対角線を描く形でファーサイドの高木純平へ鋭いパスが通る。「ゴール前に入るまではイメージ通りだった」(高木)と、柏のラインコントロールの隙を突いたこの決定機。“どフリー”であったにもかかわらず、高木は痛恨のシュートミスを犯し、札幌は先制のチャンスを逃した。
対する柏も8分に、「ワタル(橋本和)が高い位置を取って、ジョルジ(ワグネル)が引いた時に、誰かが無理をしたり、飛び出さないと動きが出ないと思っていた」という大谷秀和が、ワグネルが中盤の中央でボールを持った瞬間に一気にポジションを上げ、ディフェンスラインの裏で工藤からスルーパスを引き出す。古田寛幸も大谷の飛び出しに反応はしており、懸命にスライディングを見舞うが、一瞬早くボールにコンタクトした大谷がGK高原寿康の股下を通し、先制点を挙げた。
藤田優人は、レアンドロ ドミンゲスとジョルジのセンター寄りのプレーについて「意図的だった。相手を中に引き付ければ、外にスペースが空く」と話している。実際に、強烈な2人の外国籍選手の連携でシュートまで持ち込む場面もあり、中央を射抜いた先制弾のイメージも相まって、札幌としては中央に絞らざるを得なかったのだろう。その結果両サイドには広大なスペースが発生し、柏の両サイドバック、右の藤田、左の橋本が徹底的にサイドを突いた。39分、柏は思惑通り、中央のジョルジが札幌守備陣を中央へ引き寄せ、左サイドに開いたフリーの橋本を使う。そこから放たれた好クロスが工藤壮人のゴールを生んだ。
序盤の決定機を生かした柏と、生かせなかった札幌。サイドでイニシアチブを握った柏と、サイドからの失点という課題をまたしても露呈した札幌。このコントラストが物語る通り、その後は主導権を握った柏が優勢に試合を進めた。
後半、札幌の3−5−2へのシステム変更には、攻撃に出るという狙いのほか、中央に人数を割いてレアンドロとジョルジが自由に動き回れるスペースを潰したいという意図もあったはず。しかし「サイドが1枚になったので、1枚剥がせば上がれる」(藤田)というように、札幌のウィングバックの裏は柏にとって絶好の狙いどころと化し、特にレアンドロと藤田の関係から右サイドを何度も突破。藤田の好クロスから次々とチャンスが生まれた。
だが柏にとっての誤算は、この時間帯に3点目を奪えなかったことだ。サイドからの好機を工藤と澤昌克が逸し、69分の大谷のミドルシュートは右ポスト直撃。そのこぼれ球もレアンドロが外す。こうなると、不思議とサッカーでは相手に流れが傾いていく。途中出場の上原慎也をターゲットとし、前線へのロングボールとそのセカンドボールで活路を見出した札幌。
81分のゴールは、最後尾の河合の蹴ったロングボールを上原と増嶋竜也が競り合い、そのこぼれ球を俊敏な動きでゴール前へ顔を出した榊翔太が押し込んだものだ。続く84分にもロングボールのこぼれを拾った上原がドリブルで前へ突進。これは増嶋が意地のシュートブロックで辛くも防いだ。
「後半もチャンスを多く作ったが、そこを逃し、終盤に失点して、バタバタしてしまった」(ネルシーニョ監督)。
失点以降、日立台のスタンドには不穏な空気が漂い始めていたが、それを払拭させたのがネット バイアーノと田中順也だ。前線からのチェイシングを怠らず、五分五分のルーズボールをマイボールにする彼らの懸命の努力は、後半アディショナルタイムにゴールという形で実る。3−1とリードを広げた直後、試合終了を告げるレフェリーのホイッスルが鳴り響いた。
この試合の最大のポイントは、やはり冒頭でも述べた序盤の決定機のシーンだろう。チャンスを逃し、逆に早い時間の失点により「受け身に回ってしまった」(奈良竜樹)ことが、結局は試合全体の流れに影響を及ぼした感は否めない。石崎信弘監督が言及したように、札幌の巻き返しの鍵は、先に失点をせず、そしていかにして先にゴールを奪うか、そこに尽きるだろうか。
柏も優勢に試合を進めながら、試合を決定付ける3点目がなかなか奪えなかったこと、あるいは終盤に守備がバタついたことなど、手放しでは喜べない点はあり、修正の余地は残されている。だが、逆転優勝を見据えた「10連勝」への第一歩のため、この試合は内容以前に“勝利”が必要だった。6試合ぶりの勝点3獲得と、ここまで湿りがちだったFW達、工藤と田中にゴールが生まれた点や、酒井宏樹の後任として右サイドバックに名乗り上げた藤田の存在などを、とにかくプラスに捉えたい。
以上
2012.09.16 Reported by 鈴木潤
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