試合前から激しい風雨に見舞われた岐阜長良川球技メドウ。ここはスタンドが低いため、風の影響をもろに受ける。この試合のポイントは、いかにこの環境に順応し、逆に利用できるかにあった。
前半、風上に立ったのは岐阜。このアドバンテージをいかに生かせるか。岐阜は風に苦しむ栃木を尻目に、立ち上がりから攻勢に出る。【4-1-4-1】の布陣で、1トップにダニロ、服部年宏をアンカーに置き、左MFに尾泉大樹を起用した。
尾泉は左足のキックに絶対の自信を持ち、ピッチコンディションが良くなくても、強く正確なキックを繰り出せる選手。こういうコンディションにこそ力を発揮する尾泉が、指揮官の期待に早速応えた。
7分、栃木GK武田博行のゴールキックが風に押し戻されると、岐阜のボールになり、そのままショートカウンター。ダニロがMF染矢一樹とのワンツーでバイタルエリアに侵入すると、相手のファールを誘い、FKを獲得。これを尾泉が左足で狙うと、鋭くゴール右隅をとらえたが、これはGK武田のファインセーブに阻まれた。これで得たCKも、通常は服部が蹴っていたが、尾泉が任され、正確なボールを供給し、チャンスを作り出した。
岐阜としては、まだ栃木が環境に順応する前に先制点が欲しかった。前への圧力を強め、左の尾泉、前線のダニロが中心となって、栃木ゴールに襲い掛かる。しかし、栃木は當間建文と宇佐美宏和のCBコンビが尽く弾き返し、21分にはMF井上平の強烈なミドルシュートを、GK武田がまたもファインセーブ。ゴールを割らせない。
反対に栃木も徐々にカウンターが機能をし始め、34分には右からの崩しで、FW佐々木竜太がゴールに迫り、右CKからチャ ヨンファンのヘッドは、GK時久省吾がファインセーブ。42分には再び右CKから當間がドンピシャヘッドで合わすも、これはバーに嫌われた。
岐阜も45分にMF樋口寛規がペナルティーエリア内でDFのミスを拾って、ビッグチャンスを迎えるが、放ったシュートは右ポストを叩き、逆サイドに流れて行った。
前半を終わって0-0。岐阜はアドバンテージを生かし切れず、栃木は守り抜いた。後半になると、雨は止み、風だけが残った。風下になった岐阜だが、開始早々の3分に服部の縦パスをダニロが落とし、井上が突破を仕掛ける。これが相手のファールを誘い、中央やや右寄りの位置でFKを獲得。これを尾泉が壁の下を抜ける強烈なグラウンダーのシュート。ゴール左下隅を捉えるが、またもGK武田のビッグセーブに阻まれる。
状況的不利な立場になったが、岐阜は前半のいいリズムを手放すことなく、試合を進めて行く。だが、前半の消耗戦が影響したのか、徐々に両チームの運動量が落ち始め、ファールが目立ち始めて行く。膠着状態になったことで、両チームとも攻撃的な選手を投入し、現状打破に着手する。
岐阜は76分に井上に代えてFWアブダを、栃木は58分に佐々木に代えてFWサビアを、65分にMF高木和正に代えてMF杉本真を、81分にMF小野寺達也に代えてFW河原和寿を投入。
試合を動かしたのは、岐阜だった。後半、中盤を厚くした栃木にポゼッションを許すも、DFラインが集中し、田中秀人の巧みなラインコントロールと、関田寛士の対人能力の高い守備が機能し、チャンスを作らせなかった。そして迎えた82分、この日完全なるキーマンになっていた尾泉から放たれた左CKを、DFが一旦クリアするも、こぼれに反応した染矢が冷静に中を見てクロス。ファーでDF野垣内俊がヘッドで折り返したボールを、関田が頭で押し込んだ。
待望の先制点を奪ったのは岐阜。まさに全員で掴んだ先制点に、再び降り出した雨も問題はなくなっていた。最後まで集中を切らすことなく、勝点3を掴み取った。
岐阜にとって、富山が勝利し、町田が引き分けていただけに、ここで勝ち切れたのは非常に大きい。
逆に栃木は、上位陣が取りこぼしていただけに、勝てなかったのは非常に痛い。前半、0-0で凌ぎ切り、後半に勝負をかけたが、勝負をかけて投入したサビアが収まりきらず、左のドリブラーの菊岡拓朗によりボールが渡らなくなり、河原も足元でボールを受けられなかった。決して90分の流れは悪くなかっただけに、最低でも引き分けに持ち込めなかったのは悔やまれる。
話を岐阜に戻すと、勝ちはしたが、まだまだ油断を許さない状況が続く。「ワントップがいて後方の4枚で飛び出して行ったが、あれで点が取れればいいと思いますが、取れないので、取れるように練習をしたいと思います」と行徳浩二監督が語った様に、前半の内にこの形で点が取れていれば、もっと楽な展開になっていただけに、反省して修正すべきだ。だが、今日のように状況に応じた力強いサッカーが出来れば、これからもっと勝点を積み上げられていけるはず。
雨中の激闘を制した岐阜。次の湘南戦でもこの勢いを持って、今季初の連勝を掴みたい。
以上
2012.09.18 Reported by 安藤隆人













