大分・田坂和昭監督が「球際とか切り替えとか、気持ちの勝負が勝敗を分けるんじゃないか」と踏んでいたゲームは、「コンタクトのあるシーンが多く、プレミアリーグを見ているかのような感覚で、ゲーム自体を楽しむことができた」と熊本の高木琢也監督が振り返ったように、両ゴール裏をそれぞれのチームカラーに染めたサポーターが作り上げた実にダービーらしい雰囲気もおそらくは影響して、お互いが1つのボールを巡って激しくぶつかる見応えのある内容となった。そんな中にあって、プレーの激しさは維持しつつも、判断やゲーム運びの点で冷静さを失わなかった熊本が勝点3を得て連敗を止めた。とは言え天皇杯2回戦の岐阜戦も含めれば、ホームでの熊本は、これで5試合負けなしである。
「ダービーなので、きれいなことは難しい。こういうサッカーをしたい、こういうサッカーになるだろうと予測」して、高木監督は2人のFWに齊藤和樹と高橋祐太郎をチョイス。またボランチの1人に吉井孝輔、左サイドバックには筑城和人と、いずれも球際の粘りが持ち味の選手を先発で起用する。立ち上がりこそ、風上から攻める大分が森島康仁に当ててのセカンドボールの展開でやや押し込んだが、熊本も守備ではセーフティファーストを徹底。攻撃も前の2人が相手DFを背負いながらうまく納め、あるいは背後へ抜け出し、両サイドの武富孝介、藤本主税らが的確にサポートに入る形で徐々に流れをつかんでいった。
熊本にとって攻撃におけるテーマだったのは、「相手が5枚になる前に早く攻める」(高木監督)というもの。大分はボールを保持した際に両サイドのワイドMFが高い位置を取るため、奪ってからの切り替えでその背後を突ければチャンスが生まれる。15分には藤本を追い越して相手陣内に入った藏川洋平から齊藤へのクロス、21分にも吉井から展開して養父雄仁が奥の武富へクロス、さらに27分にも藏川から高橋、その跳ね返りを齊藤と、特に右サイドから決定機を作れていたのも、そうした狙いを実践できていたからである。
36分の先制点も、早い切り替えのカウンターからだった。自陣でボールを奪うと、養父が右サイドへ抜けた齊藤へ浮き球のパス。これに合わせて相手陣内へ猛然と入って行ったのは、前への推進力が特徴の吉井。ボールをコントロールした齊藤を見た吉井は、一度は「右へ抜けようと思った」が、相手のDFが自らの動きに反応した瞬間を逃さず、そのまま前へ抜けるのではなくファーへ離れるように動き直し、相手のプレッシャーを受けない状態を作る。これに対して齊藤もまた落ち着いて山なりのクロスを送り、しっかりトラップした吉井が大分GK清水圭介の動きを見て左足で決めた。
後半開始直後の49分、森島から左の石神直哉へつないだ大分は、前半から熊本時代と変わらぬドリブルでチャンスに絡んでいた西弘則が右足アウトで合わせて追いついたが、熊本はその4分後、追加点を挙げて突き放す。スローインから受けたボールを藤本が養父へ落とすと、養父はファーサイドの齊藤へ。三平和司に競り勝った齊藤が頭で合わせ、ポストぎりぎりのゴール左隅に決めた。大分はその後、宮沢正史から村井慎二、西からチェ ジョンハン、さらに為田大貴と前目の選手を立て続けに替えて押し込むのだが、台風の影響でピッチ上でも強く吹いていた風は、後半の大分にとっては“逆風”。熊本も終盤までしのいで、『バトル オブ 九州』の今季初勝利につなげた。
大分の田坂監督は「気持ちの面で負けていた」とも述べたが、ひとつひとつの局面では決して熊本に抑えられていたわけではない。ただ、チームの置かれた状況と現在の順位、ダービー独特の雰囲気が選手たちのメンタルに影響しなかったとも言い切れまい。確かに得点が1点に留まったこともあるが、1点目、2点目ともクロスへの寄せがやや緩く、攻撃時のリスクマネジメントも含め、左右への揺さぶりやバイタルへの侵入に対する守備のオーガナイズという点では、今後修正が求められよう。順位は3位と変わらないが4位に浮上した京都と勝点で並び、5位以下との勝点差も詰まった中、残り8試合にかける。
勝った熊本は順位をひとつ上げたが、まだまだプレーオフ圏への進出は状況的に厳しいことに変わりはない。それでも「サッカーの素の部分」(高木監督)であるボールを巡る戦いで相手を上回れたこと、流れに応じた判断をしてプレーで表現できたことをプラスに捉えて、最後まで実践したい。大切なのは、このゲームでやれたことを続けること。そして課された次のミッションは、連勝でも『バトル オブ 九州』の2勝目でも開幕戦のリベンジでもなく、週末に迎える福岡を叩くこと、である。
以上
2012.09.18 Reported by 井芹貴志













