サッカーというスポーツは、“流れに乗り切らない”と勝つことが難しいスポーツだと感じた試合だった。
キックオフ直後から、自分たちの持てる力を出して攻めた側と、そこを耐えてワンチャンスに得点を挙げた側とでは、どちらが“流れに乗った”と言えるのだろう。前者は敗れた柏であり、後者は勝利した鳥栖のことである。観戦した人の多くは、“流れをつかんでいた”のは柏と感じていただろう。しかし、その間に得点を奪うことができなかった柏は、前半の残り5分間で“流れをつかんだ”鳥栖に苦汁を飲まされてしまった。前半を0-0で折り返すのか、2-0で折り返すのかでは、後半の戦い方に雲泥の差がついてしまう。鳥栖は前半の流れをそのままに後半に入り、柏は後半の入りから3点を取りに行く策を講じるしかなかった。
試合の立ち上がりからの柏は素晴らしかった。右サイドからは、レアンドロ ドミンゲスが正確無比なクロスを鳥栖のゴール前に送った。左サイドからは、左サイドDFの橋本和が積極果敢に鳥栖陣内でボールに絡んでいた。FW工藤壮人は、左右に流れてはボールを引き出し、空いたスペースにはトップ下の澤昌克が飛び込んできた。今節を迎えるまで、46得点を挙げている攻撃力を鳥栖に見せつけていた。
ネルシーニョ監督も「前半立ち上がりから40分までは非常にアラートで攻守にわたって良いゲームができていたと思います」と振り返ったように、ここまでの柏は意図した形で“流れをつかんでいた”のだった。しかし、前半の残り5分でこの“流れを断ち切った”のは、1本のFKだった。
43分、鳥栖が柏陣内の左サイド40m付近でFKを得た。キッカーはMF藤田直之。その軌道は、緩やかな弧を描いて柏ゴール前に上がった。柏DFがそのボールをクリアしたのだが、前線に上がっていた鳥栖DF呂成海の頭に当たってコースが変わり柏のゴールに吸い込まれた。それから3分後、またしても柏DFのクリアしたボールが藤田直之の足元に転がり柏ゴールを割った。40分までの柏の良かった攻撃を、後半に修正せざるを得ない鳥栖の得点ともいえるものだった。
時系列に書くと前述の内容となるが、そこに至るまでの“流れ”には、観ている者にはわかりにくい駆け引きが行われていた。MF岡本知剛と藤田直之のボランチの間では、2人の位置関係をどのように修正していくのかが話し合われていた。修正とは、柏の攻撃を断ち切り、鳥栖が中盤で主導権を奪うことであり、その修正が功を奏したからこそ生まれた得点だった。読者の皆さんが試合を見直す機会があるのならば、この2人のポジショニングに注意して観てほしい。柏のボランチ栗澤僚一と大谷秀和にボールがある時のポジショニング。柏の両サイドにボールがある時のポジショニング。ボールが動いている中での位置取りなので全てではないが、柏のボールを奪うためのポジショニングや奪った後のポジショニングに、30分を境に微妙な違いが見えてくる。言葉で表すと簡単に見えてしまうが、ヨコかタテかで中盤での“流れを変えてしまった”ことになる。
冒頭を繰り返すが、前半を0-0で折り返すのか、2-0で折り返すのかでは、後半の戦い方に雲泥の差がついてしまう。鳥栖は前半の流れをそのままに後半に入り、柏は後半の入りから3点を取りに行く策を講じるしかなかった。
柏は、後半開始からトップにFWネット バイアーノを入れ、トップ下にMF茨田陽生を入れて“流れを引き戻す”策を講じた。しかし、53分にMF金民友が3点目を挙げたことで、柏に流れが戻ることはなかった。鳥栖の連係ミスで1点を返すことができたが、リーグ終盤戦で上位争いに食い込むには痛い敗戦となってしまった。この結果、鳥栖は勝点を41に延ばしリーグ5位に順位を上げ、柏は7位に順位を下げてしまった。冒頭の繰り返しとなるが、サッカーというスポーツは、“流れに乗り切らない”と勝つことが難しいスポーツだと感じた試合だった。
文末ではあるが、鳥栖が勝利した要因を付け加えておきたい。
FW豊田陽平と池田圭の惜しみない前線からのプレスである。この2人のプレスで、柏のDFがどれだけ押し込まれたかも見直してほしい。2人で放ったシュートはわずかに1本ではあるが、柏DFが押し込まれたことにより、柏の後方からのロングボールが増えたことは、隠れた功績である。「普通なら足が止まる時間帯でも、彼らは惜しみなくボールを追ってくれる。その分、DFラインは高く上げやすい」とは、73分からDFに入った小林久晃の言葉である。鳥栖が、ここまでリーグ最少失点というのもうなづける。残り8試合、鳥栖の選手はボールのあるところに最後まで走り続けるのであろう。
「ボールがないところでもプレーはできる」と言った選手がいた。それだけ、駆け引きと予測をしながら走っているのだろう。サッカーの特性を言い表した言葉である。
終了のホイッスルが鳴るまで、結果は確定しない。
ボールがゴールに入るまで、何が起きるかわからない。
サッカーとは、結果が予測しづらいスポーツなのだから。
以上
2012.09.23 Reported by サカクラゲン















