前半は互いに攻め合い、守り合い。スコアレスのまま前半終了の笛を聞いたときは、後半も拮抗したロースコアの展開が続くものと思われた。しかし、フルタイムが終わってみるとスコアは何と0−5。前半終了時には予想もつかなかった結末となってしまったのである。
この試合、アウェイの大宮がほぼ前節通りのメンバーおよび並びでスタートしたのに対し、札幌はいつもの4−2−3−1ではなく3−5−2でスタート。「まずはしっかり相手の攻撃を抑えたかった。それと攻撃になったときに、いままでだと1トップだったのが、今日は岡本や内村、ハモンといった攻撃的な選手を前に3人残せた。そういうところでうまく点を取りたいと考えていました」と石崎信弘監督はその狙いを説明。攻守両面での効果を期待し、そしてその通り、前半は大宮と攻め合いながらもいいリズムで試合を進めることができていたのだ。
しかし、後半立ち上がりのワンプレーが試合の流れを劇的に変えてしまう。
50分、後半から投入された大宮のズラタンが左サイドから飛び出すと、これを高木純平がペナルティエリア内でファウルで止めてしまう。大宮にPKが与えられただけでなく高木純は一発退場。PKはノヴァコヴィッチが問題なく決めて、アウェイの大宮が先制点を奪う。札幌は1点追いかける展開に。それも数的不利な状況で、だ。
それにしてもサッカーとは先が読めないものである。高木純にファウルを受けたズラタンは、青木拓矢が負傷した代わりに投入された選手。左MFでプレーしていたカルリーニョスが青木のいた守備的MFに移り、ズラタンが左MFに入っていた。もし左MFがパス配球役のカルリーニョスのままだったら、おそらく前述のようなプレーは生まれていなかったはずだ。この試合におけるひとつの勝負のアヤとなった選手交代だろう。
そして、その後は大宮のゴールラッシュに。60分にカルリーニョスが決めると、63分にはゴール前のこぼれをノヴァコヴィッチが蹴り込む。さらに77分には右CKをまたしてもノヴァコヴィッチが今度はヘディングで加点しハットトリックを達成。締めくくりは90+3分、途中出場の長谷川悠が右足で豪快にゴールネットを揺らしてみせた。同点さらには逆転を狙って前がかりになる数的不利の相手に、何度も強烈なカウンターパンチを浴びせた格好だ。
冒頭で記した通り、ロースコアで折り返したはずの試合が終わってみれば0−5。ひとつの退場劇がゲームのバランスを一気に変えてしまったのである。そしてこれも前述したように、ひとつの負傷交代が引き起こしたとも見れる。繰り返しになるが、やはりサッカーとは「一寸先は闇」である。
ただし、こうした結末を迎えた背景をあらためて考えてみたい。札幌は51分にPKで先制点を奪われ、さらに1人少ない状況となったわけである。
もしこの試合がシーズン序盤、あるいは中盤戦だったならば札幌の戦い方は違っていたかもしれない。1点を追う展開とはいえ、状況は数的不利。無理に勝ちにいって裏を取られ、2点目を奪われてしまったならば致命傷である。なのでこの場合、一度守備を安定させ、そのまま時計を進めて残り時間が少なくなったところで勝負を仕掛けてドローに持ち込む、万が一風向きが良ければ逆転も…というプランのもとで試合を進めるのがセオリーだろう。
だが、現在最下位で、J1残留を果たすにはとにかく勝点3を取り続けなければいけない。万が一風向きが良ければ…なんて悠長なことを言っている場合ではない。絶対に逆転をしなければいけない立場なわけである。どんな状況でもリスクを承知で前に出る必要があった。石崎監督も、本来は守備的MFの山本真希を右サイドに出し、この選手の高精度なフィードでシンプルにゴールを狙いにいく策を打っている。そして2点目を取られたら、3点を取らなければいけない。3点目を取られたら、4点を取らなければいけない。そうして守備意識が薄くなってきたところを、さらに強襲され続けた結果が0−5というスコアに現れたのだ。
0−0で前半を折り返した接戦が終わってみれば大差となったのは、札幌が数的不利に陥ったことだけが原因ではない。それ以前に、無理をしてでも絶対に勝点3を積まなければいけない立場に追い込まれていたこともまた、要因だった。
そして次節(川崎F戦)もまた札幌は勝点3が絶対に必要な状況に変わりはない。結果によっては、来季のJ2降格が決まってしまうところまで追い詰められた。ここからどれだけの粘りを見せられるのか、期待したい。
大宮のほうは、この試合での収穫は大きかったはず。何しろ夏に獲得したストライカーがハットトリックを達成し、守備陣も2試合連続完封。結果だけが求められる残留争いという戦いのなかでは、両ゴール前の活躍が絶対的に不可欠。その両方が調子を上げてきたのだから、ベルデニック監督も「今日の試合には満足している」。
残留を争う両チームの直接対決だったが、終わってみれば対照的な結末となってしまった。
以上
2012.09.23 Reported by 斉藤宏則
J’s GOALニュース
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