前半と後半のそれぞれ終わり頃のチャンスをしっかりモノにした仙台が、主導権が激しく入れ替わる試合を制した。
仙台は優勝争い、神戸は残留争いと、それぞれ目標は違うがこの終盤戦で「負けられない」状況にあることに変わりはない。決着自体は劇的だったが、試合運び自体は相手よりも冷静にプラン通りの戦い方を進め、アクシデントに対応したほうが制した。
前半に、両チームは負傷により1人ずつ選手を交代しなければならなかった。
神戸は田代有三がこの試合の立ち上がりから空中戦で競り勝ち、ボールを収める役割を果たしていた。右サイドバックの茂木弘人も「高いところで起点ができれば、追い越す選手もサイドバックが上がる時間もできる。けっこう前半には収まった時間もありましたし、後半の立ち上がりもそういう時間がありました」と振り返ったように、仙台が攻勢に出た立ち上がりをしのいだ神戸が、19分にCKから田代のゴールで先制した。しかし30分に彼は負傷交代。変わって入った都倉賢も41分にオフサイドになってしまったような決定機を作るなど攻撃を引っ張ったが、仙台の守備はそれ以上のゴールを許さなかった。
先制点を許した仙台だが、その後の試合運びは「立て直した」というより「継続した」と言った方が正しいかもしれない。鎌田次郎が「失点でもみんな気落ちせず『ひとつひとつ取っていこう』という気持ちでやれた」というように、サイドのスペースを狙う戦い方を引き続き実行。42分に、左サイドから梁勇基が上げたクロスを、赤嶺真吾が確実に決めて仙台が追いついた。
後半は一進一退のゲームが続いた。後半立ち上がりは、中盤で競ったあとのこぼれ球を拾った神戸が押しこみ、西野朗監督もボランチの田中英雄に代えてFWフェルナンドを入れて攻撃の人数を増やした。だが、前半の得点後同様、攻勢の時間に畳みかけられなかったことが、響く格好となった。
仙台はサイド攻撃とカウンターを使い分けながらチャンスを作るが、北本久仁衛と伊野波雅彦の両センターバックにクロスやシュートを跳ね返されてあと1点が遠い展開が続く。しかし、前半に負傷した菅井直樹に代わって入っていた田村直也が90分にCKを得る。いつも「あと一押し」を与えてくれる、ホーム側サポーターの前で。
梁のCKがそれまでよりもゴールから遠ざかる方向に抜けていくと、ニアサイドで中原貴之と松下年宏が反応し、松下が先にボールに触る。その先には背番号2がいた。ゴールに背を向けた状態でのファーストタッチでボールをコントロールすると、とっさのイメージで「人生初です」(鎌田)というオーバーヘッドキックでゴールに叩きこんだ。これが決勝点となり、仙台が劇的な逆転勝利をおさめた。
試合後の会見の冒頭で西野監督は「わずかの差が積み重なると、大きな差になると感じています」と、この試合を分けたモノを分析した。15本のシュートを放った神戸も敵地でチャンスを作っていたが、1対1での打開、局面での組織的な戦術の遂行力など、それぞれの場所であった「わずかの差」が、前後半の終わり頃に「大きな差」であるゴールになっていった。この試合は前半にそれぞれ点を決めたストライカー達もびっくりの新たなストライカーが、派手にゲームを締めくくった。しかし勝負を分けたのは、90分での差の積み上げだった。
以上
2012.09.23 Reported by 板垣晴朗















