正田スタアウェイ側ゴール裏は、草津サポーターを凌ぐ人数の山形サポーターでびっしりと埋め尽くされた。山形にホームジャックを許す状況の中、山形に立ちはだかった一人の勇者が草津に存在した。身長162センチのリトルドラゴン小林竜樹だ。小林は前半24分のゴールを皮切りに山形ゴールへ襲いかかり、クラブ初のハットトリックを達成。過去16試合1勝7分8敗と天敵だった山形を返り討ちにして、ホーム正田スタに3カ月半ぶりの勝利を届けた。
中盤がカギだった。「球際の一歩を意識して守備でボールを奪い切れ」(副島博志監督)という指揮官の指示を受けてピッチへ立った草津の中盤は山形を囲い込んでボールを奪取。守備でリズムをつかんで山形を押し込んでいく。前半25分、ボランチ櫻田和樹が左サイド深くまでボールを運んでクロスを配給。ファーサイドから走り込んだ小林がヘッドで鮮やかにゴールネットを揺らして草津が先制に成功する。「相手が自分の動きをみていなかったのでゴール前までうまく入っていけた」(小林)。これがゴールラッシュの始まりとなるとはだれも想像できなかった。
2点目は、ファンタスティックなゴールだった。55分、センタサークル付近でボールを受けた櫻田がDFラインの裏へミドルレンジのスルーを浮かせる。2列目からスピードに乗って裏へと抜けた小林は、落下地点へと足を伸ばしてアーティステックなダイレクトボレー。櫻田は「相手の陣形が整わないうちに裏へとパスを送った。竜樹がピンポイントでうまく合わせてくれた」と振り返ったが、ふたりのイメージががっちりと一致したスーパーゴールだった。
小林の勢いはこれでも止まらなかった。65分、横山翔平からパスを受けた遠藤敬佑がDFの背後へスルー。ふたりの陰から一気に飛び出した小林がGKの位置を確認して冷静に流し込んで、3点目。悪天候の中、スアタジムへ駆けつけた草津サポーターへ、J昇格8シーズン目にして初のハットトリックを届けた。草津は68分にゴール前の混戦から石井秀典に押し込まれて1失点を喫したものの、終盤の山形の猛攻を一丸となった守備で凌いで3試合ぶりの勝利。小林竜樹は試合後、メインスタンドから自然発生的に起った「竜樹コール」に満面の笑みで応えた。
山形は、草津の勢いを止めることができず痛恨の3連敗となった。中盤のバトルで負けていたことと、攻撃が個人頼みになっていたことが響いて流れの中から決定機を創り出すことができなかった。3連敗で8位へ後退したが、J1昇格プレーオフ圏内の6位まではわずかに勝点2差。一つの勝利で状況は一変するだけに気持ちを落とさないことが求められる。「残り試合は全部勝つつもりで戦う。チームの一人一人がその気持ちをピッチで表現できるかが重要だ」(前田和哉)。山形はいまが正念場だ。
小林のハットトリックで3試合ぶりの勝利を上げた草津だが、2アシストの櫻田、中盤の要・松下裕樹、そして高卒ルーキー横山ら脇役の活躍も見逃せない。3ゴールの経緯をみれば小林のハットトリックが個の力だけではなく、チーム全体の結束によって成し遂げられたことは間違いない。この勝利をシーズン終盤へつなげていくことが重要だ。そして一つでも多くの勝利をサポーターへ届けることが来季へとつながっていく。
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2012.09.24 Reported by 伊藤寿学















