「今日のゲームは日本に来て2つの悲しい結果のうちの1つだと捉えている。1つ目は広島時代に降格した試合で、今日は2つ目だ」。記者会見に姿を見せたミハイロ・ペトロヴィッチ監督は憔悴しきった様子で椅子に体を預け、そう言葉を絞り出した。その姿はこの日の敗戦が持つ意味の重みをよく表していた。
大宮戦から3バックで戦っている札幌は、この日も後ろを3枚にして挑んできた。1トップ2シャドーの3−4−3、実質的には5−4−1のフォーメーションだったため、浦和のシステムとは噛み合いやすい形だった。
ただ、浦和はマークのズレが起きにくい戦いのなかでもボールを落ち着いて回し、札幌を揺さぶりにかかった。特に立ち上がりは槙野智章をマークすべき古田寛幸の対応が少し遅れていたため、梅崎司と槙野の連携を起点にラストパスを送るところまでゲームを組み立てることができていた。
札幌の5バックは10代が3人、20代前半が2人と若く、一緒に戦った時間も短いので、序盤は連携で多少ギクシャクする場面が見受けられた。22分にはDFラインを上げようとする選手とステイする選手が混在し、オフサイドにかからなかった原口元気がフリーで決定的なシュートを放ったが、GKの正面に飛んでしまった。
札幌は32分にもDFがお見合いをする連携ミスを起こし、後ろから抜け出たマルシオ リシャルデスがフリーでGKと一対一になったが、浦和はここでも得点を奪えなかった。「チャンスを決められないと罰を受けるのはサッカーでよくあることだ」と指揮官が振り返ったように、浦和は結果的にこの2つのビッグチャンスをフイにした大きなツケを払うことになる。札幌は30分過ぎあたりまでは引いて攻撃を跳ね返すだけだったが、次第に浦和の試合運びに慣れていくと、守備からカウンターという流れを作り出せるようになった。
J2にいくことが決まったチームによくあることだが、この日の札幌のプレーには思い切りの良さがあった。もう恐れるものは何もないので、攻撃でも守備でも出足の鋭さと勇気が目立った。サイドでの対応が時間とともに改善された古田も「何かいい意味で『なるようになる』という気持ちで力を抜いて戦えていた」と振り返っている。
「こういうゲームは先制することがとても大切」(ペトロヴィッチ監督)だったが、浦和は逆に相手にリードを許してしまう。50分、スローインから河合竜二の縦パスが入った際、永田は遅れた形でインターセプトを試みたが、その動きで古田に入れ替わられてしまい、豪快にゴールを割られてしまった。永田は「ああいうプレーをしてはいけないし、落ち着いて対応すればやられることはなかったと思う」と悔やんだが、確かにやってはいけないミスだった。
これで札幌は全員で守ってカウンターという戦い方が徹底できるようになり、浦和はより苦しくなった。それでも62分には原口のパスからマルシオがゴール前フリーの決定機を迎えたが、これも生かせず。逆に74分、カウンターから札幌が追加点。古田が槙野との競り合いでこぼれたボールを収めると、GKとの一対一を冷静に制した。ここでは槙野がスライディング仕掛けてこぼれ球になったのだが、ボール際では槙野の方が状況はやや有利で、古田を巻き込むようなスライディングでなければ処理できていた可能性が高い。厳しく見ていけば、これも先制点同様に判断ミスに起因する失点だった。
終盤に2点のビハインドを背負った浦和はそれでもあきらめずに攻勢をかけ続けた。86分にはCKのこぼれ球から梅崎が1点挽回。その後も勝利を目指す執念は見せたが、もう一度ゴールネットが揺れることはなかった。札幌はようやくアウェイ初勝利を飾り、遠く地まで応援に駆けつけたサポーターを勝利を分かち合った。
「もっともやってはいけない敗戦をしてしまった」(宇賀神友弥)
試合後、浦和の選手たちは一様に表情を曇らせていた。この試合に先立って行われた首位の広島戦が引き分けに終わっていた。勝てば勝点3差になるが、負ければ6差に広がる。勝点では2試合で追いつける可能性はあるものの、得失点差を考えると実質的には勝点7が必要になる。負けることだけは絶対にあってはならなかった。試合に敗れても普段なら取材に応じる柏木陽介と槙野智章が無言でスタジアムを後にした。逆転優勝が難しくなったのは、誰よりも選手たちが理解していた。
ただ、どんなに道のりが険しくなろうとも可能性がなくなったわけではない。「スポーツをやる人間として諦めてはいけないということだ。逆転優勝が非常に難しくなったが、やる限りは決して諦めない」とペトロヴィッチ監督は決意を示す。浦和は道が完全に閉ざされるまで、力の限り戦い続けるはずだ。
以上
2012.10.07 Reported by 神谷正明















