個人能力に勝る名古屋に、組織力で対抗した岡山。互いの持ち味を存分に発揮した結果は、試合終了間際に名古屋が逃げ切る僅差のゲームとなった。
試合はまず、岡山が先手を取った。キックオフからJ1の圧力の前に凡ミスを繰り返した岡山だったが、ほぼぶっつけの新布陣3−4−3に手間取る名古屋にも助けられ、徐々にペースをつかみ直す。20分には石原崇兆が負傷し急きょ金民均に交代するアクシデントもあったが、「石原のスピードはなくなったが、代わりに金民均のDFの間で受けられる力が入った」(影山雅永監督)とチームは意に介さず。30分を過ぎる頃にはポゼッション率も上がり、反撃に移れるようになっていった。そのきっかけとして32分に関戸健二が決定機を迎え、続く39分には先制点が生まれる。左サイドから回ってきたボールを仙石廉が受け、ダニルソンの激しいタックルをかわして右足を振り抜く。低い弾道のミドルシュートはDFの足元を抜け、楢崎正剛のセービングもかいくぐってゴールに突き刺さった。これで主導権を握った岡山は、リードを保ったまま前半を終えることに成功する。
だが、名古屋もさすがの修正能力を見せる。後半開始から急造の“広島式”3バックを早々に諦め、ダニルソンに代えて金崎夢生を投入し4−4−2へフォーメーションをチェンジ。金崎と田中マルクス闘莉王のツートップに加え、永井謙佑を「1トップより適任」(ストイコビッチ監督)というサイドハーフに据えて巻き返しへの一手を打った。その効果はてきめんで、後半開始早々に名古屋は同点に追いつく。指揮官曰く「開始40秒で」、中盤でボールを奪った藤本淳吾が右サイドに展開、永井が絶妙のクロスを中央へ送ると、「規格外」(影山監督)の高さから闘莉王がヘディングシュートを岡山ゴールへ叩き込んだ。まさしく電光石火の一撃で振り出しに戻された試合は、ここから接戦の様相を呈していくことになる。
2点目を先に奪ったのは名古屋だ。左サイドから阿部翔平が送ったフィードを、永井がGKが触る前に追いつきかっさらい、無人のゴールに流し込む。ロンドンオリンピック以降、得点から遠ざかっていたストライカーが久々に見せた“らしい”プレーで名古屋が一気に逆転。その直後にダニエルが負傷で交代し闘莉王がDFラインに戻ったが、リードを守る上ではむしろ朗報といえた。DFリーダーが最後尾にいない状況は、闘莉王が自分で言う通り「チームにとって良くない」状況だからだ。しかしながらこの一戦に関しては、岡山の粘り強さが闘莉王の神通力をも上回った。75分、GK中林洋次のパントキックを川又堅碁が競り勝ち、前線に流れたボールを関戸がキープする。背番号36はそのままDFを半身かわしてゴール右上隅へシュートを決めてみせた。これで2−2。まさかの同点劇に、富山県総合運動公園陸上競技場に詰めかけた2,102人は沸きに沸いた。
勢いづく岡山だったが、同点に追いついた後は不運が続いた。2点目直後のプレーで服部公太が名古屋の田鍋陵太に激しいタックルを見舞い、一発退場。J1経験も豊富なベテランの機を見たプレーには同情の余地も残るが、影山監督は「J2ではあまり出会わない強さや速さという恐怖にさらされた時に、きちっとしたポジションと対応ができなかったのではと、僕は認識しています」と潔かった。1人減った岡山はそれでも持ち前の積極的な守備を維持し続け、終盤には決定機さえ作る勇敢さで立ち向かった。状況を考え、結果を求めるだけならば守りに徹して延長、PK戦に持ち込むという選択肢もあったはずだが、あくまで90分での結果を求めた姿勢には敬意を表したい。
そして決着の時は突然訪れた。アディショナルタイムに突入しようという90分、阿部のフィードを引き出しペナルティエリアに侵入した小川佳純が岡山DF植田龍仁朗に倒されPKを獲得。すでに後半開始直後にイエローカードをもらっていた植田は2枚目のイエローで退場となってしまった。勝敗を分けるPKは藤本に代わって闘莉王がキッカーに立ち、GKをあざ笑うチップキックをふわりとゴールマウスに沈める強心臓ぶりで再逆転に成功。4分のアディショナルタイム中には岡山がFW三村真、チアゴと次々前線にテコ入れを図ったが、格上相手に9人では反撃もままならず。岡山の善戦空しく、名古屋は土壇場で逃げ切る形で“格上”の面目を保った。
アグレッシブに勝負を挑んできたJ2クラブを、試合後のストイコビッチ監督は「意欲的なチームで共感できる」と称賛し、「重要なことは勝ち、次のステージに進むこと」と最低限の目標達成を淡々と語った。一方で影山監督は「チャレンジングなプレーをしろと言い、選手たちは思い切って戦った。3失点はしたものの、しっかり守れる場面があったことはリーグ戦につなげていきたい」と昇格プレーオフ圏内進出への手応えはつかんだ様子。週末のリーグ戦では負傷の石原と退場した服部、植田らが不在というのは痛手だが、それ以上に「規格外」を経験した選手たちのリアクションは楽しみなところだ。
4回戦へ駒を進めた名古屋も新布陣のテストこそ不発に終わったものの、久々の3得点で攻撃陣は良いイメージを持つことができた模様。ここ数試合は低調な試合に終始してきたが、リーグ次節・鳥栖との上位対決に向けての良いステップにできそうだ。何より4試合ぶりの公式戦勝利は上昇のきっかけとなるはず。両チームの今季ラストスパートは、富山からスタートすることになるかもしれない。
以上
2012.10.11 Reported by 今井雄一朗
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