試合前から小雨がパラパラと降り始め、ピッチ上を容赦なく濡らす。そんな環境のなか、さらに平日の夜にも関わらずアルウィンに集った6061人の両チームのサポーターは肌寒さに震えながら戦況を見守った。さて、1-0のスコアは想定内か想定外か。ただ一つ言えるのは、試合終了の笛が鳴った瞬間に疲労と安堵で思わずその場に膝をついたユン ソンヨルの姿がこのゲームを物語っていたということだ。
スターティングメンバーは、ホームの松本、アウェイの岐阜ともに戦前から予想されていたメンバーだった。フォーメーションもまた、松本がいつも通りの3-4-2-1に対し岐阜は樋口寛規が佐藤洸一と縦の関係を作る4-5-1だ。
序盤はホームが主導権を握った。アルウィンを横切る強風に遮られ、サイドチェンジのボールが勢いを無くして中央に急降下する場面もあったが、セカンドボールを殆ど拾えていたために、岐阜はしばらくアタッキングサードまで攻め込めず、佐藤は孤立気味に。対する松本は15分に塩沢勝吾のフリックに反応した鐡戸裕史がチャンスを作り、23分には右サイドを起点に得点をうかがう。しかし、サイドからのクロスは時久省吾がきっちりセーブ。関田寛士と田中秀人のセンターバック2枚も強固で、なかなか付け入る隙が見当たらない。焦りからかプレーの精度も正確性を欠き始め、パスミスから岐阜にボールを渡して、カウンターに持ち込まれ冷や汗をかく場面も生まれ始めた。
後半、どうしても勝点の欲しい岐阜は、行徳浩二監督が早め動く。54分にアブダを、60分に梅田直哉を投入して前線を活性化。特にアブダは投入直後から左サイドで危険な動きを見せる。松本もスペースがないために持ち味を生かしきれない楠瀬章仁に代えて相手を引き出す動きに長けた弦巻健人を投入。更に「拮抗したゲームで、セットプレーは武器になる」と、高さのあるアリソン リカルドに賭けた。
結果的にその5分後に均衡が破れるのだからサッカーは奥が深い。87分、右からのCKのチャンスで、キッカーの鐡戸はファーにいた多々良敦斗と飯田真輝を狙った。その多々良の折り返しに身体を投げ出したのはアリソン。Jリーグでの初ゴールは勝利を引き寄せた貴重な一発。その瞬間、スタンドの熱は一気に最高潮に達した。残り僅かの時間をパワープレーに徹した岐阜だったが、そこは今節でJ2通算300試合出場を果たした飯尾和也を中心とする最終ラインがケア。苦しみながらも最後まで集中を切らさずに守り抜いた松本に勝点3が転がった試合となった。順位も今季最高の11位まで浮上。プレーオフ出場へ望みを繋げた。
それにしても岐阜は強かった。特に守備は安定しており、最終ラインはゴール前を固めてブロックを形成し、チームの売りである服部年宏と李漢宰のダブルボランチがバイタルエリアで仁王立ち。これだけしっかりした試合運びを見せれば、上位チームも手を焼くのは当然と言える。反町康治監督も試合後に「行徳監督がシーズン最初から粘り強くやってきた成果」と賞賛したが、まさに地道に積み重ねてきた成果が、ここに来て花開いている。勝点が取れなかったことについては行徳監督も「非常に残念」と唇を噛んだが、サッカーの方向性は確かなものであった。残り4試合、残留に向けて勝負を賭ける。
こうして、平日夜、雨中の『TOP OF 北アルプス』最終戦を終え、記念すべき初代王者の称号は松本の頭上に輝いたのであった。しかし息つく間はない。次節は「明らかに条件が違う」(反町監督)。中2日という短いインターバルで強敵・水戸を迎える。鐡戸が累積警告で出場停止となることもあり、まさに総力戦。死力を尽くして戦うことになる。
以上
2012.10.19 Reported by 多岐太宿
J’s GOALニュース
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