前節、町田を迎えた熊本は、前後半にセットプレーから武富孝介と矢野大輔がそれぞれゴールを挙げ、守っては守護神・南雄太のファインセーブ等でしのいでクラブ史上初の5連勝を達成した。苦しい展開となりながらも勝ちきった選手たちを評し、高木琢也監督は試合後、「たくましくなった」と表現している。リーグ戦も残り4試合となり、勝点差9で6位の横浜FCを迎える今節、熊本にとっては――今後は最後までそうした状況が続くわけだが――勝たなければプレーオフ進出の可能性が消える、終盤のヤマ場と言える一戦だ。
そうした中、熊本は試合を間近に控えた今週、普段使用している県民総合運動公園のサッカー場をはじめ、県内の施設・グラウンドが芝の養生のために使用できない影響で、木曜は佐賀、金曜は長崎の島原と、いずれも片道1時間半程度の移動が必要な場所でのトレーニングを余儀なくされた。ただ、試合にフォーカスして特別なことをするのではなく、環境が変わってもトレーニングのメニューに大きな変化があったわけではない。両日ともケガ人を除く選手24人が参加したが、短い時間の中でも質を高めて、攻撃ではコンビネーションのタイミングやイメージを合わせること、守備面では全体の連動を意図したプレッシングやスライドを確認した。
鍵を握るのは中盤の対応だ。「横浜FCは自陣(熊本陣内)に入って来ると個が際立つチーム。カイオのシュート、武岡(優斗)の仕掛け、大久保(哲哉)の高さ。そういう状況を作らせないように、出どころを断つことが大事」と高木監督は言い、ゲームを想定した配置の中で前線から中盤にかけての追い込み方、特にボールホルダーに対してのアプローチの距離について細かく指示する場面が見られた。
「FWの切り方に対して、今は意思統一できているからうまく(プレスが)ハマっている。行けるときはしっかり後ろも寄せて、特にボランチと高地(系治)さんのところに厳しく行きたい」と原田が話す通り、前線やサイドへの供給源となる部分を抑えて横浜FCにリズムを作らせないことが重要。さらに「個人のとこでも、例えば前から来れば(ロングボールで)裏返す、つなげるようならつなぐ、相手がどう来ているのかをしっかり見て使い分けること」(矢野)も、主導権を握るにあたってのポイントになるだろう。ボールを握る時間を増やしつつ、「裏への抜け出しでリズムを作りたい」と話す武富ら前線の動きと、相手の状況を踏まえた効果的な配球がかみ合えば、得点のチャンスも広がる。守備でのアプローチ同様に繰り返しトライして、好機を逃さずにゴールに結びたい。
一方、曲折を経てプレーオフ圏に浮上してきた横浜FCにとってもまた、他チームも含めた結果次第ではプレーオフ圏からはじき出されかねない状況とあって、是が非でも勝点3を積み上げたい大事な一戦。前節は相手の倍にあたる14本のシュートを放ちながら得点は森本良のヘディングによる1点に留まり、北九州に攻撃の特徴を抑え込まれた。特に前半においては「スペースを消された中で、前への推進力、スピード感が足りなかった」と山口素弘監督が述べているが、その点の修正も含め、今節は熊本の狙いにどう対応していくか。山口監督は高木監督が横浜FCの指揮を執った2006年当時、選手として昇格に貢献している。シーズン序盤に監督を引き継いでチームを立て直したという共通点を持つ指揮官同士の采配も見ものだ。
前期の対戦でPKのチャンスをモノにできず、一時期は精彩を欠きながら再び調子を取り戻して現在14得点でチームのトップスコアラーとなっている武富は、この試合を前に次のように話した。
「今シーズンは、いい時期と悪い時期が交互にあるけど、それがあったから今があると感じる。連勝に関係なく、どっちにしても負けられないし、目標の15得点まであと1点だけど得点のことはあまり意識しないで、でも前期の借りを返したい」
苦しい時期を乗り越えてきたのはチームも同じ。5連勝中とあってチケットの売れ行きも好調らしく、久しぶりの舞台となる水前寺競技場は赤のサポーターの大きな期待に包まれるだろう。そうしたプレッシャーをも楽しみながら、個々が、チームが、持っている力を発揮できるか。本当のたくましさが、この一戦で試される。
以上
2012.10.20 Reported by 井芹貴志
J’s GOALニュース
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