前節終了時点で21位、J2残留争いの渦中にある鳥取が、ホームに同3位、J1昇格を目指す大分を迎えた一戦は、鳥取が1―0で勝ち、昨季のJ2昇格後初となるホーム3連勝として、残留に王手をかけた。
草津―岡山戦とともに、この日最後となる19時開始の一戦を前に、両チームの、それぞれの目標に向けたライバルは、勝点を伸ばすことができていなかった。残留争いの渦中にある最下位の町田、20位の岐阜は、ともに敗戦。昇格争いでは、2位と5位の直接対決となった湘南―千葉戦が引き分けに終わった。この結果、鳥取は町田との勝点差を広げるチャンスを、大分は勝てば京都と勝点で並び、得失点差で上回って暫定2位に浮上するチャンスを手にして、キックオフを迎えた。
立ち上がりの3分、大分はスムーズなパス交換から左サイドに展開し、石神直哉がアーリークロス。中央の木島悠には合わず、ゴール前に浮いたこぼれ球に、今度は森島康仁がヘッドで合わせたものの、クロスバーの上に外れた。両チームを通じて、この試合最初のシュートだったが、大分の前半のシュートは、結局この1本だけ。この数字が示すように、前半を優勢に進めたのは鳥取だった。
守備では大分のくさびのパスに厳しく対応し、自由なプレーを許さない球際の強さが光り、苦手としているリスタートの守りも乱れることはなかった。攻撃に転じれば、1トップの久保裕一が「相手は3バックでサイドのスペースが空いているので、良い形で突くことができていた。中盤でくさびを受けられるシーンが多かった」と振り返ったように、的確にパスをつないで敵陣に攻め入り、チャンスをうかがう。
両サイドにボールを運んだ後も細かくパスをつなぎ、クロスを上げずにチャンスが潰えることも多かったが、これには吉澤英生監督の指示による守備面の狙いもあった。大分の攻撃のストロングポイントを「カウンター」「クロス」「リスタート」の3つと考えていた鳥取は、クロスをはね返されてカウンターを受けることを強く警戒し、「決定的な形を作るまではボールを動かす」(吉澤監督)ことを徹底。大分の守備対応の良さもあり、なかなかシュートまでいくことはできなかったものの、守備の負担は軽減することができていた。
そうするうちに31分、鳥取が先制点を奪う。尾崎瑛一郎が蹴った左CKは中央ではね返されたが、目の前に戻ってきたこぼれ球を、尾崎がダイレクトで再び中央へ。ニアサイドの狭いスペースに入り込んだ鶴見聡貴がヘッドで合わせ、ネットを揺らした。
鳥取のリードで折り返した後半の立ち上がり、ようやく大分も反撃に転じる。しかし、49分に相手のクリアミスから、三平和司のセンタリングを木島悠がフリーで合わせたが、右足ボレーは当たり損ねて左へ。53分には左サイドを崩したが、石神のセンタリングは中央の森島に合わず、シュートには至らない。
大分は、田坂和明監督が前半から感じていたという「自分たちのミスからプレッシャーをかけられて、ボールロストから危ない場面を作られている。ボールホルダーのミスもあるが、受け手の反応が悪く、足が動いていない」という悪いペースが後半も続き、なかなか良い形を作れなかった。61分には、「チームとして、やるべきことをできていない。基本的に足が動いていないので、これ以上引っ張っても点が入る可能性はないな、と(判断した)」(田坂監督)森島を下げ、高松大樹を投入するが、試合の流れは変わらない。
逆に大分が前がかりになるにつれて、鳥取はカウンターのチャンスが増えた。だが65分、相手のバックパスをカットした鶴見のシュートは大きく枠を外れ、69分には森英次郎のセンタリングから久保がヘッドで狙ったが、わずかに左に外れて追加点を奪えない。
大分の最大のチャンスは79分。敵陣でボールを奪ってのショートカウンターから、林丈統がGKと1対1になる絶好機を迎えたが、シュートは冷静に動かず対応したGK小針清允の正面を突き、決めることができない。
その後、大分は早めにパワープレーに転じ、ゴールをこじ開けようとしたが、鳥取は加藤秀典、柳楽智和の両センターバックを中心に力強く対応。86分にMF実信憲明に代えてDF内間安路を入れ、最終ラインを厚くしたことで、かえって中盤から前のプレッシャーが緩くなり、ロングボールを蹴られる場面が増えたが、全員が集中力を高く保ち、最後まで1点を守り切った。
大分は結局、最後までリズムに乗れないまま完封負け。2位浮上のチャンスを逃して4位に後退し、5位の横浜FCと勝点で並ばれた。勝負どころで勝点を伸ばせない今季の悪い流れを変えられず、下位相手の痛い取りこぼしとなったが、田坂監督が「残り3試合、今日の試合に関して下を向いても仕方ないと選手には伝えた」と語った通り、目を向けるべきは今後。福岡、山形、松本と対戦するラスト3試合に向けて、いかに立て直していけるかが問われる。
鳥取は、町田との勝点差を7に広げ、岐阜と入れ替わって20位に浮上した。次節、13時キックオフの町田―岐阜戦で、町田が敗れれば、その時点で残留が決定(町田の最下位が決定)。鳥取―熊本戦は16時キックオフで、町田が引き分けなら引き分け以上、町田が勝っても熊本に勝てば、J2残留が決まる状況になった。吉澤監督は「勝点3を得ることはできたが、残留が決まったわけではない」と気を引き締めたが、攻守両面で今季最高とも言えるパフォーマンスを披露し、充実の内容でつかみ取った勝利は、残留争いで大きく抜け出す、非常に価値の大きなものとなった。
以上
2012.10.22 Reported by 石倉利英
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