前節痛恨の敗戦を喫した両チームの対戦である。前節、松本と対戦した水戸。前半は優勢に試合を進めたものの、チャンスを生かしきれず、後半にミスから2失点を喫して敗れた。その結果、6位と勝点差が9に広がってしまった。残り3試合、勝点ではまだ可能性が残されているものの、得失点差が21も開いており、現実的に可能性が消えることとなったのだ。一方、岡山は前節草津と対戦。チームの中心選手である金民均を出場停止で欠いたことが影響したのか、全体的に動きが硬く、自分たちのサッカーをすることができなかった。そして、終盤に失点を喫し、0対1で敗戦。勝っていれば、6位と勝点2差に詰め寄ることができただけに、あまりにも痛い敗戦となってしまった。
両チームともにショックの残る敗戦からいかに切り替えて今節に臨むことができるか。そして、ここまで積み上げてきた自分たちのサッカーを出すことができるかが、この試合のポイントとなるだろう。

この試合に向け、本間幸司は厳しい表情でこう口にした。「すごく難しい状況であることは間違いないですね。でも、この状況でやれない選手はここに残ってはいけない。どんな状況でも100％のメンタルと集中力を持ってやれないと、いくらうまくても、水戸が上に行くためには必要ない。苦しい時にどのくらいできるかで選手の価値が決まる。そこをみんなに見せてもらいたい」。柱谷哲二監督が就任して掲げたスローガンは「やり切る、走り切る、戦い抜く」。今こそ、その原点を思い出す時だろう。岡山よりも走り、戦う姿勢で凌駕しなければならない。前節松本戦では、そこで負けた。悔しい思いがあるならば、今節ホームのピッチで出し切らないといけない。

思い出したいのは前回の対戦（第3節）だ。水戸が終始岡山を圧倒し、3対0で勝利をおさめた。その試合は今季のベストゲームの1つに挙げていいほど、“水戸らしさ”が全開に出たゲームであった。運動量と切り替えの早さで勝り、そして、ゴールに向かう意識も高く、守備でも1人1人が粘り強さを発揮した。あれから7カ月が経ち、水戸は進化を遂げてきた。ポゼッションの質が高まり、攻撃のバリエーションが飛躍的に増えた。同時に失ったものもある。

リーグ序盤は守備の堅固さが売りであった。ゴールデンウィークまではリーグ最少失点を維持し、上位に位置していた。だが、チームが攻撃的になるにつれて、徐々に守備のバランスが悪くなっていった。特にサイドではサイドバックの裏を突かれる場面が増えるようになってしましまったのだ。それはサイドバックの問題というより、「中盤の守備に問題がある」（柱谷監督）。勝利を重ねていた頃、中盤の選手が深い位置まで戻ってサイドバックのサポートを繰り返していた。しかし、今はサイドバックが孤立することが多くなり、数的不利で攻められる場面が目立つようになった。そこを修正することが求められる。

攻撃をしたい気持ちは分かる。3試合で2点しか取れておらず、焦りもあることだろう。だが、「まずは守備」というシーズン当初から掲げてきたチームのコンセプトを忘れてはいけない。しっかり戻って守備をしてから飛び出していくことを繰り返すことが水戸の目指すべきサッカーだったはず。そのためには相手を上回る運動量が必要なのは言うまでもない。進化したチームに「原点」を付け加えることが今節で求められる作業となる。

岡山にとっては、第3節のリベンジを果たしたいところだろう。あれから岡山は急速な進化を遂げた。3バックを中心に堅固な守備が基盤となっているが、守備のチームではない。ゲームメイク能力に長ける千明聖典を中心に中盤でリズムよくボールを動かし、そこに金民均と関戸健二の2シャドーがうまく絡んで厚みのある攻撃を繰り出す。そして、前線には今季15得点を挙げているJ2屈指のストライカー川又堅碁が待ち受ける。攻守において弱点の少ないチームなのである。今の順位（10位）にいるのは何の不思議もなく、むしろ必然と言える力を見せてきた。前節の結果、6位と勝点5差に広がってしまったものの、誰も諦めている者はいないだろう。わずかな可能性を信じて、今節に挑んで来るに違いない。

だからこそ、水戸はそれ以上の気持ちで戦わなければならないのだ。チャレンジャー精神を胸に、相手よりも走り、相手よりも泥臭く戦って、はじめて勝機は見えてくる。

以上

2012.10.27 Reported by 佐藤拓也