今シーズンもクライマックスに突入した。すでに甲府の優勝が決まったが、J１昇格への残り２枠を巡る争いはし烈を極めている。前節、JFLの降格争いを演じる鳥取と対戦した大分は痛い黒星を喫した。これにより自動昇格の２位は厳しい状況になったが、「可能性はゼロではない。諦めるには早い。死に物狂いで追いかける」と田坂和昭監督の思いはチーム全体の思いである。

今週木曜日の練習後には、クラブが選手、スタッフを集め決起集会を開いた。その場で青野浩志社長が「それぞれの立場で結果を出し、今こそ一丸となるときだ」と呼びかけ、残り３試合を総力戦で臨むことを再認識した。目標は至ってシンプル。３戦全勝だ。

その目標に向かって、今週も実践形式の練習を多く取り入れ、万全な準備を進めた。「前節もサイド攻撃はできた。あとはアタッキングサードでのポジショニング、狙いどころを確認した」と宮沢正史が話したように、攻撃に力点を置いた。そもそもここ数ヶ月、いや夏以降、守備の練習を見たことがない。６試合連続で失点をしているが、「それ以上に自分たちの戦い方で得点するか。そこをフォーカスしたい」と指揮官はあくまでも攻撃的なスタイルは貫く。その思いの裏には、守備の意識が強くなると消極的なプレーに終始することを恐れている。実際に前節の試合では、攻撃的な姿勢が見られず「一生懸命やってないとは言わないが、足が動かなかった」（田坂監督）。そこで今節は、起爆剤として「ミス恐れず思い切ってやってやろうという気持ちが出ている選手」をピッチに送り出すことになりそうだ。

対する福岡は、現在18位。J1昇格もなく、JFLへの降格もない位置に立っており、不本意なシーズンを送っている。前節の甲府戦では前半で３失点したように、今季は守備が不安定だ。リーグワースト２位タイの総失点63が、現在の立ち位置の要因となっている。とは言え「強いチームであることに違いはない。今の順位とチームの力は相対しない」というのが大分の見解だ。

甲府戦では３失点してから、「窮地に立たないとエンジンがかからないという選手が多く、私がチームを預かってから、自発的、自主的にプレーするというところが課題だけど、それでも一歩一歩成長していることは間違いないと思う」と前田浩二監督が振り返ったように、後半は王者・甲府を相手に圧倒した。良くも悪くも、荒削りな部分が福岡の魅力でもある。

田坂監督は、「攻撃陣にタレントが揃っている。２トップ、サイドハーフ、ボランチは質が高い」と認め、そのなかでも鈴木惇は要注意選手と警戒している。「鈴木は技術が高く、ポテンシャルも高い。あそこからのクサビが起点となり、力強い攻撃につながっている」。試合のカギを握る男・鈴木が輝くか、燻るかで勝利の行方は左右されることになりそうだ。

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2012.10.27 Reported by 柚野真也