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【J2:第40節 山形 vs 千葉】プレビュー:ホーム山形が勝点2差で迎える相手は6位・千葉。気持ちと気持ちがぶつかり合う、今節唯一の“直接対決”!(12.10.28)

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2-0でホームチームが勝利した開幕戦の直後、すでに日程が決まっていた8ヵ月近く先の第40節を、新監督を迎えたこの2クラブがどのような状況で迎えているか、多くのサポーターが想像をはたらかせたに違いない。そしておそらく、当時敗れた山形も含めて、思い描いていたプランよりも苦戦を強いられるシーズンとなっているが、それこそが、この一戦を熱く、激しいものにする。6位・千葉と8位・山形、プレーオフのボーダーラインをはさんだその勝点差は2。昇格を懸けた、今節唯一の“直接対決”となる。

山形は前節、8試合ぶりの勝利を味わったばかりだ。「みんな試合に勝ったあと、『こんなうれしいことがあるのか』といったぐらいの雰囲気になった」(清水健太)と、長い苦しみの末に手にした1勝を噛み締めた。得点を挙げた中島裕希のサイドハーフ起用など形を変えたことも効果的に作用したが、何より、リスク管理をするなかで攻撃の積極性を発揮するなど、メンタル面での整理ができたことが大きい。「どっちが仕掛けるかですね。やっぱり先手を取りたいというのがすべて」と奥野僚右監督。この試合も気持ちで譲るつもりはない。

前節で息を吹き返した感はあるが、いまだに順位はプレーオフ圏内に届いていない。残り3試合をすべて勝ったうえで、あとは周囲の状況次第であることに変わりはない。しかし、今節からの2試合が昇格圏内のクラブとの直接対決であることは、逆転での昇格可能性を狙う山形には都合がいい設定だ。前田和哉は「もう3つ、全勝しなくちゃいけないですし、前回、ジェフにはやられていますけど、やられたイメージとかは別に持たなくていい。自分たちは決してこの位置にいるチームじゃないので、しっかり叩いて上をめざしたい」と決意を語る。前節以上にタフな試合になるが、それを乗り越えた先に待っているのは、前節以上の喜びだ。

終盤の対戦では、「ドローでよし」というカードが切れる分、勝点の多い側が優位に立つが、今節の千葉にそれは当てはまらない。今節ドローであれば、確かに山形との勝点2差を維持できるが、勝点63で並ぶ東京Vにかわされプレーオフ圏外に追いやられるケースも消せないからだ。また、上を見れば2位・京都との勝点差は7。いまだ可能性が消えていない自動昇格のために勝点3は是が非でも必要で、たとえプレーオフを戦うにしてもホームで戦える権利は手にしたい。他会場に先駆けて行われる13時キックオフの試合は、勝ってプレッシャーを与えるくらいの気概が必要となる。

千葉のこの2試合は大分、湘南と直接対決が続いたが、5節前の東京V戦も含めて勝利を挙げることができていない。大分戦では立ち上がりからアグレッシブに攻め、その勢いのまま谷澤達也のゴールで先制したが、後半に逆転を許した。前節・湘南戦ではポゼッション率こそ高かったが、「なかなか前のほうにボールを持っていくことができなくて、足元、足元のプレーが多くなってしまって、どこかで動きが必要だったと思う」(佐藤勇人)と湘南の縦の早さを警戒するあまり慎重なサッカーに終始。前半に許したリードは、後半、オーロイ投入を契機に追いつくことかできたが、戦い方の軸は周囲の状況に影響されやすい。湘南戦を振り返った木山隆之監督は「プレーしている選手からするとカウンターも鋭いしそこで引っかけられたくないという意識が強く働き、ワンテンポプレーが遅れてしまう。そのあいだにまた相手にしっかりとスライドされてしまうということだったと思う。もうちょっと勇気をもって入れていってもよかった」と話している。基本的に個人能力の高い集団だけに水を空けられて敗れる試合は少ないが、強いメンタルを前面に押し出せるかどうかが最大の課題となりそうだ。

前節では山口智が4試合ぶりに復帰。バックラインでボールが落ち着き、足元でつながるパスが多いなかで大きい展開を入れる役割も果たしたが、今節は累積で兵働昭弘が出場停止となる。兵働はここまで全試合先発を続け、相手ゴール近くで得点に直結するパスを供給し、セットプレーも含めてチーム最多のアシストを重ねてきた。ここ数試合は1.5列目からトップ下でプレーし、1トップ荒田智之へのホットラインもできていただけに、痛い不在には違いない。ただし、前節では藤田祥史が7試合ぶりにピッチに戻っているのは明るい材料。68分からの出場で、オーロイのヘッドでの落としをペナルティーエリア内でしっかりとキープし、佐藤勇人の同点ゴールをアシストしている。また、忘れてならないのは、開幕戦で山形を沈めた2ゴール。抜群のゴール感覚は、J2鳥栖時代から発揮されている。特に山形戦では、デビュー年の06年に2ゴール、07年に3ゴール、08年には1ゴールを挙げているが、そのすべてがNDスタでのゴールだった。

千葉のボランチ・佐藤健太郎のプレーを楽しみにしている山形のサポーターも多いだろう。中盤でボールをさばいてチームにリズムを生み出し、守備では山形仕込みのポジショニングと球際の巧みさでパスコースを封じている。味方の能力を引き出しながら、派手に目立ちはしないが大きな役割を担っている。互いにコンパクトを保つ意志を持つだけに、その中盤では激しい攻防が予想されるが、さらに山形の右サイド、千葉の左サイドも注目すべきゾーンだ。サイドハーフ・中島裕希は守備で押し込まれる時間が多くなりそうだが、千葉の両サイドバックは高めのポジションを取るだけに、奪ったあとにスペースを突くチャンスも少なからずつくれそうだ。いずれにしても、単発の好プレーでゴールを割るのは難しい。攻撃では好プレーから連動してチャンスを広げシュートチャンスまで持ち込めるか、守備では味方のミスをどれだけ粘り強くカバーできるか。そのなかでどのようにスコアが動くのかを予想するのは難しいが、死力を尽くした戦いになることは明白だ。3年前、J1の舞台で千葉からゴールを奪った秋葉勝が言う。「しっかりポジションを取ったり、地味な作業をコツコツやっていくことが大きな結果になってくると思う。サボらず、運動量だったり、球際に行くことで勢いがついてきたりするので、そういうのを大事にしていきたい」

この試合のキックオフは、前回対戦の終了のホイッスルがその合図だったのかもしれない。あれからどれだけのことを積み上げてきたのか、そこに自負できるものがあれば。勇気をもって表現すればいい。その90分は、きっと人々の記憶に強く刻まれ、後世まで語り継がれるものになる。

以上

2012.10.27 Reported by 佐藤円
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