京都は今節、他会場の結果次第ではＪ１へ自動昇格となる２位以内が確定する。タイトなスケジュールとなるが、木曜日に徳島に快勝した勢いをそのままに北九州入りし、敵地での昇格奪取を目指す。一方で北九州も残り３戦ではあるが来季以降のためには全戦全勝し未だに可能性を残す６位以内を狙い続けたい。道を開くためには勝つしかない。パスサッカーを標榜する両チームが終盤戦で意地を見せる。

北九州は今週、ＧＫを含めたボトムからの展開を何度も繰り返した。「そこで奪われるなって！」。三浦泰年監督からも熱く厳しい言葉が飛ぶ。
前節の山形戦では渡大生が先発し、途中から林祐征を投入するなど前線に長身選手がいたこともあり、長いボールも織り込んでゴール前に供給したが、得点には結びつかなかった。それどころか簡単なミスからボールを失い、ゲームを作りきれずにカウンターを何度も受けて守備に回る時間が長くなってしまった。
ボール回しの基本に立ち返ったともいえる練習メニュー。木村祐志は「（回すことを）忘れていたというわけではないけれど、原点回帰ということ」と話す。北九州らしさでもあるテンポの良いボール回しを取り戻すことが急がれるが、最底辺でただ回すだけでは意味がなく、自分たちが主導権を握って目的あるボール回しをしなければならない。「スタートの距離感は大事。それが悪いとリアクションだけのサッカーになってしまう」と常盤聡。原点を見つめ直し、北九州らしいサッカーを再び展開していく。

練習から見えてきたのは、リーグの最終盤でありながらも、北九州は目前の勝利と長期的な成長の両面に挑戦し続けている姿だった。
残り３戦をどう戦うか――という問いを三浦監督にも選手にも投げかけてみたが、一様に、異口同音に、「積み重ねの途中」と返ってきた。「この時期は『集大成』と言うかもしれないが、そうではない」とは三浦監督。「構築してきたもの、積み上がってきたものを残り３試合で見せられるか。もっといいサッカーができると思う」と話し、「もっとギラヴァンツらしい、アグレッシブなサッカーができる」と意気込む。木村も「（昨季も）残り３試合というのは意識していなかったし、今年も残り少ないけれど積み重ねの途中。気持ちの面でも、プレーでも、やり続けていきたい」と話した。

もちろん原点に返るだけで勝てるわけではなく、スカウティングをもとに攻守両面にシミュレーションを重ねた。相手は京都。「Ｊ２リーグの中でも一番勝つ確率の高いサッカーをしている」と三浦監督も警戒する相手だけに、簡単な試合にはならない。カギになるのは上述のとおりボールを保持する時間を増やすことだが、前線に運べてもシュートまで持ち込めなければゴールをこじ開けることはできない。ＦＷ林祐征は「起点は作れているし、キープもできているのでリズムを出せていると思う。そこでミスをしては意味がないので集中して臨みたい」と気を引き締める。ボール回しがアイデアを持ってフィニッシュまでつながれば、勝機もつかみ取れるはずだ。

昇格決定の可能性がある京都は木曜日にアウェイで徳島と対戦したばかり。４−２で快勝したが、連戦の影響は否めないだろう。しかし、試合後に大木武監督が「ボールの回し方も悪くなかったと思います。速かったし、テンポもあった」と話しているように、自分たちのスタイルを出して勝ったことは昇格が懸かる試合への弾みになった。
今季の京都は序盤戦からパスサッカーが根付き、５月の北九州との前回対戦では相手にボールをほとんど与えず自分たちのリズムで展開。中村充孝のゴールで勝点３を得ている。今季中は３連敗と４連敗がそれぞれ１度ずつあるものの、２得点以上を挙げて勝ちきる試合も多く、シーズンを通してみれば順調に勝点を積み上げてきた。「残り３試合になりましたが、全力でいつも通り戦うことができれば」と大木監督。北九州同様に積み上げてきたサッカーに自信を持って試合に入ることで、昇格、Ｊ１復帰を手中に収めたい。

京都の自動昇格確定は、京都が勝って勝点３を手にした上で、さらに上位陣（湘南・大分・横浜FC）の結果如何による。京都が引き分け以下の結果の場合は４位大分、５位横浜ＦＣとの差もぐっと縮まってしまう可能性があるだけに、何としてもここで引き離して昇格を決めたいところだ。

ただ、この試合は昇格のための勝負という面だけで見てしまうのはもったいない。両チームは決して中盤をおろそかにせず、ボールを大事にするサッカーを続けることで成長を続けてきた。勝てない時期でも自分たちのサッカーへの自信を失うこともなかった。こうした姿勢、そしてサッカーの質は、Ｊ２のレベルの高さを示せるだろうし、サッカーをやり始めたばかりの子どもたちにも好影響を与えるはずだ。日曜の夕刻の一戦。勝敗に限らず、サッカーの内容にまで注目して観ていただければと願う。

以上

2012.10.27 Reported by 上田真之介