残留を目指す新潟は、0-2で鳥栖に破れ17位のまま。15位大宮との勝点差は5に開いた。前半3分、鳥栖・豊田陽平に先制点を奪われると、38分には豊田にヘディングで追加点を奪われた。攻撃は相手のプレスの前に、形を作ることができずシュート6本に終わった。
鳥栖は連敗を3で止め、7試合ぶりに無失点で白星を挙げた。
ホイッスルが鳴ると同時に、ピッチ上の新潟の選手が無表情になった。がくぜんとするほどの完敗だった。
試合前、警戒していたのはMF藤田直之のロングスローと、FW豊田陽平の決定力。だが、開始3分、その両方が絡んだプレーで失点。右サイドからのロングスローをつながれ、逆サイドから水沼宏太にクロスを入れられる。ゴール前でフリーになった豊田にあっさりとシュートを許した。その35分後も、左サイドからの水沼のクロスを、豊田にヘディングで決められた。
「立ち上がりの失点が痛かった」とキャプテンの本間勲。やってはいけない形で失点したことで、相手を勢いづけてしまった。その後は鳥栖の速いプレッシャーの前にミスを重ね、苦しまぎれのロングボールを繰り返した。
鳥栖戦を前に、距離感を大切にしたボール回しと、縦パスを強気に入れるプレーを確認してきたはずだった。「怖がって前に(ボールを)付けられなかった。それをしなければ、やってきたプレーができない」。残留のためにはホーム戦で何としても勝点が欲しい状況。本間は、大事な試合で強気になりきれなかったことを悔やんだ。
ただ、収穫もあった。後半開始から出場した2年目の酒井宣福とルーキーの鈴木武蔵だ。酒井は本間に代わってボランチに入ると、体を張ってボールを奪い、縦パスを前線に供給。鈴木は藤田征也に代わってサイドハーフに入ると、鋭い仕掛けで度々裏を突いた。「まだミスが多い」(酒井)、「期待されているのだから結果を出さないと」(鈴木)。どちらも勝点を奪えなかったことで、口調は厳しい。
もっとも、柳下正明監督は「2人とも前に行こうという気持ちがある。途中出場で流れを変えた。十分にやってくれた」と評価。土壇場の状況で勇気を見せた若手が、チームを刺激する。
新潟の良さを消した鳥栖にとっては、文句なしの内容だった。「選手に感謝したい」。尹晶煥監督はこの言葉を多く繰り返した。
前半の2得点はチームが狙った形。豊田が「うちのストロングポイント」と絶賛する水沼のクロスから得点が生まれた。水沼の精度の高いキックを生む状況を作ったのが、チーム全員が足を止めない運動量だった。素早く、しつこいプレッシャーで新潟の出足を止めると、セカンドボールを拾ってすぐに展開。90分間、相手に押される場面はほとんどなかった。
3連敗の間、選手同士で話し合いを繰りか返した。尹監督は「初心に戻ろう」と説いた。その結果つかんだ4試合ぶりの勝ち星。全員で汗をかき、前を向くスタイルの尊さをチームで実感した一戦だった。
新潟は残り4試合に、文字通りすべてをかける。試合後、ホームゴール裏にあいさつに訪れた新潟のメンバーに、サポーターから厳しい言葉が飛んだ。だが、その直後は怒号を上回る大きな「アルビレックス」コールがスタジアム中から起きた。試合開始2時間前にはサポーター約3000人が、スタジアムの選手入り口前でフラッグを掲げ、バスで会場入りする選手を鼓舞していた。
降格圏脱出はおろか、現実的には残留に黄色信号が点る結果になった。それでも、サポーターは選手に対して前を向くことを促した。その期待に応えることが、今シーズンの最大の使命になる。「試合直後、すぐにみんなで反省点を確認した。もう次のことを考えている。あとは全部勝つ」。鈴木は力強く言った。
息を吹き返した鳥栖と、がけっぷちに立たされた新潟。両チームにとって、シーズンの中の大きな意味を持つ一戦は、対照的な結果になった。残りの試合、どちらもプロとしてのメンタルが試される。
以上
2012.10.28 Reported by 斎藤慎一郎(ニューズ・ライン)
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