結果的に1-1という手堅いスコアになったが、ゲーム全体のクオリティーは高く、最後の最後まで締まりのある試合だった。
角田誠を累積警告による出場停止で欠く仙台はボランチに松下年宏を起用。中盤の高さという点ではややスケールダウンした感もあったが、コンパクトなブロックをベースとした組織的なスタイルは健在。前線、中盤、最終ラインの3ラインが一切手を抜かず精力的に走り続ける姿勢をアウェイの地でも貫いた。ロースコアにはなったが、先制ゴールを決めた赤嶺真吾が「いつも通り全員守備、全員攻撃を心がけてプレーしていた」と試合を振り返った通り、優勝争いの重圧もさほど感じさせなかった。
膠着した展開をもたらしたのは磐田の気迫だった。3シーズンぶりの3連敗を喫し、試合前に「持っている力を全て出し、今季の集大成と言えるくらい強い気持ちを持って仙台に挑戦したい」と話していたのは森下仁志監督。ホームで連敗を止めるべく前節から先発7人を入れ替えてこの試合に臨んだ。累積警告で出場停止となった山崎亮平に代わりハン サンウンを前線に起用。負傷から復帰した前田遼一と2トップを組み、ベンチでは長期離脱から復帰し、今季初のメンバー入りとなった金園英学が出番を待った。
試合前から両サポーターのボルテージは高く、シーズン終盤戦ならでは緊張感に包まれたスタジアムでの一戦は互いに譲らず、前半は0-0。ただし、互いにチャンスはあった。前半最大の決定機はキックオフ直後、仙台に訪れている。ロングパス1本で磐田最終ラインの背後へ抜け出した梁 勇基がGKと1対1に。ボールを上手くコントロールし、右足を振り抜いたが、前節大量失点を喫し、「どうしても結果が欲しかった」という磐田・八田直樹の気迫の前にゴールならず。逆に15分、18分と磐田にチャンスを作られたが、林卓人の好守でゴールを許さない。37分の菅沼実のミドルシュートも守護神のビッグセーブでしのいだ。
互いにメンバー交代なく迎えた後半、「後半30分すぎが勝負になる」とゲームの流れを読んでいたのは仙台・手倉森誠監督。後半は磐田にゲームを支配される時間帯が長くなったが、ワンチャンスを確実に決めた。77分、センターサークル付近からのFK(浮きパス)を菅井直樹がキープ。以後、関口訓充、松下年宏とパスをつなぐ間に富田晋伍がバイタルエリアへ侵入。松下年宏の縦パスを受け、右サイドへスルーパス。これを菅井直樹が折り返し、ゴール前の赤嶺真吾が右足で押し込んだ。
“磐田キラー”の先制弾にアウェイゴール裏は大歓声で応えたが、磐田もホームで粘りを見せる。失点直後の82分、森下仁志監督は山本康裕、小林祐希を同時投入。山本康裕を2列目左サイド、小林祐希をボランチに入れ(ボランチとして先発した藤田義明をセンターバックへスライド)、ゴールを狙う。この采配はわずか2分でゴールにつながった。84分、前田遼一の落としを受けた山田大記が右足でシュート性のクロスを供給。これを「前節不甲斐ない試合をしてしまっていたし、ゴールへ向かう姿勢をサポーターのみなさんに見せたいと思っていた」という山本康裕が左足で押し込み、同点。勝点1を奪取した。
あとわずかのところで3連勝を逃した仙台・手倉森誠監督は試合終了間際の失点を悔やみ、「この悔しさを残りの4戦につなげなければいけない」と気持ちを引き締めた。ただし、広島、浦和がいずれも引き分けたことを踏まえ、勝点1という結果を前向きに捉えていた。
一方、連敗を止めた磐田・森下仁志監督も「上位とのポイントは全く変わっていないし、最終節・G大阪戦の試合終了のホイッスルが鳴るまで今日のように相手ゴールに向かって走り続けたい」とポジティブにゲームを総括。この試合で金園英学が公式戦復帰を果たし、前線のポジション争いはさらに激しくなるだろう。
今季3度目の対戦は1-1のドロー決着。互いに得た1ポイントを生かすか否かは来月の戦い次第となる。
以上
2012.10.28 Reported by 南間健治
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