ビッグチャンスがそれほど多く生まれず、一見面白みを欠くゲーム展開ではあった。しかし、それを生んだのも両チームの力が拮抗し、持っている力を出したからこそ。派手さはなかったが、90分間通して互いの集中力が途切れることなく、緊張感に満ちた好ゲームが繰り広げられた。
両チームとも昨季から大きく飛躍を遂げたチーム同士。その基盤にあるのが、豊富な運動量と球際での激しさを伴う守備意識の高さだ。序盤からコンパクトな布陣でプレスをかけ合い、激しい主導権の握り合いが行われた。「水戸の球際の強さやプレッシャーの速さに対して、適応できずボールを回すことができなかった」と岡山の影山雅永監督が言えば、水戸の柱谷哲二監督は「岡山がよく守ったという印象。堅い守備でした」と振り返った。両チームの監督が相手の守備のことを讃え合うほど、互いに付け入る隙を与えないタイトな守備を見せ付けあった。
その中で前半に主導権を握ったのは水戸。中盤のロメロ フランクのパワフルな突破や鈴木隆行のキープ力、さらに橋本晃司の柔らかなテクニックを駆使して、岡山の守備を切り崩そうとした。序盤から立て続けにチャンスを作り出すものの、岡山の粘り強い守備を後一歩崩すことができなかった。
後半に入ると流れは一転、勝点3を積み上げないと「6位以内」の可能性がなくなってしまう岡山が反撃に出た。ロングボールを多用し、水戸のDFラインを押し下げ、セカンドボールを拾ってバイタルエリアを支配。水戸の前線の運動量が落ち、ロングボールの出し手へのプレスが弱まるにしたがって、岡山の攻撃の勢いは増した。
ただ、水戸の守備陣も集中力を切らすことがなかった。「前節松本戦で後半守備がゆるくなってしまったので、今週は守備の確認を行った」(本間幸司)こともあり、攻め込まれても安定感を失わずに対応。83分に輪湖直樹がこの日2枚目の警告を受けて退場となるものの、チーム全体のハードワークは落ちることなく、岡山の猛攻をしのぎきった。また、途中出場の星原健太のスピードを生かしたカウンターからチャンスを作り出すなど、数的不利な中でも勝利をあきらめずに戦い続けた。
結局、両チームともに守備でのほころびを見せずに勝点1を分け合うこととなった。互いにとって決して満足する結果ではないが、今持っている力を出し切ったゲームになったことは間違いない。
同時に現状の課題も浮き彫りとなった。両チームとも今季は上位戦線を狙える力をつけてきた。だが、「6位以内」との差もこれまでの戦いを経て、痛感していることだろう。それは「得点力」の一言に尽きるのではないだろうか。この日の両チームが見せたようなタイトな守備を崩す力を持たない限り、「6位以内」という壁は破れない。その現実を突きつけられた90分でもあった。今持っている力を出し切ったからこそ、足りない部分もよく見えた。それはつまり、今後の伸びしろでもある。面白みに欠けた90分ではあったが、そこには未来への期待感がたっぷりと詰まっていた。
以上
2012.10.29 Reported by 佐藤拓也













