リーグ最終盤にふさわしい熱のこもった好ゲームだった。両チームとも気持ちを全面に押し出し、サポーターも冷たい雨に濡れながら声を張り上げた。
敗れた富山の選手は終了の笛が鳴り立ちつくした。最下位・町田に勝点4差に迫られ、残留決定は次節に持ち越された。湘南は7試合ぶりに勝った喜びをダンスでサポーターと分かち合った。2位・京都に同1差に接近し自動昇格の可能性が広がった。
開始から湘南が主導権を握るが、富山も守りを固めて立ち向かう。湘南の攻撃のキーマン、左サイドMF高山薫を徹底マークするなど要所を抑えて粘り強く対応した。
湘南は26分、高山の技ありのミドルシュートがバーに弾かれる。押し込むがシュートまで持ち込むのにも苦労して攻めあぐねていた。嫌なムードが漂い始めてもおかしくはなかった。だが、自らのリズムを崩すことはなかった。曹貴裁監督は今節に向け、「我々は技術や戦術で勝ってきたのではない。最後まで足を止めずに相手のゴールに向かう、ボールを奪われた瞬間から守備をすることでここまで来た。原点に立ち返ろう」と選手に伝えていたという。ボールを失ってもハイプレスですぐに奪い返して根気強く攻め続けた。
富山のファールを誘って立て続けにFKを獲得し、じわじわと圧力をかけた。「最後の3試合はセットプレーが重要になると考えて準備してきた」(曹監督)という。前半のFK14本、CK3本は得点には結びつかなかったが、キックごとに選手の配置を変えるなどの試行錯誤が先制点につながった。後半15分の右CK、ゴール前の密集から離れたMF永木亮太にグラウンダーで送り、そこからミドルシュートで狙った。DF島村毅がコースを変え、GKのはじいたボールをFW大槻周平が押し込んだ。
その後は富山が反撃に転じ、両チームが次の1点をかけて攻め合う展開へ。富山は同33分にMF國吉貴博がワンツーでペナルティーエリアに切り込み、41分にはクロスのこぼれ球をMF朝日大輔が狙うが得点できない。
逆に湘南が同43分、MFハン グギョンの攻撃参加で左サイドを崩し、折り返しをMF岩上祐三が決めて突き放した。岩上は「気持ちのこもったゲームができた。1点では足りないと思っていた」と言う。アグレッシブな“湘南スタイル”を最後まで貫いた勝利と言える。
富山の安間貴義監督は「0−2の結果はうちと湘南との現在での差を表したフェアな結果。差を埋めていけるタイミングはあったが、自分たちで良い方向にもっていけなかった」と話した。「差を埋めるタイミング」と表現した勝負所のひとつが、後半5分に先制点の絶好機を逃した場面。國吉のミドルシュートをGKが弾き、FW苔口卓也が詰めたがシュートはゴール右へと外れた。湘南の曹監督が「本当に苦しい戦いだったが、運が少し我々に向いた」と語ったように、今回も格上相手に接戦には持ち込んでいる。残り2試合、今季の課題である勝負所での強さをみせて残留を勝ち取らなければならない。
以上
2012.10.29 Reported by 赤壁逸朗













