いつ同点にされてもおかしくない状況であった。特にアディショナルタイムを含めたラスト15分あたりは、自陣ペナルティエリア内でほとんど釘付けにされ、プレーオフ進出への執念を乗せた東京Vの猛攻に息つく暇もないほどさらされたと言えよう。しかし、選手たちは集中力を切らすことなく、それによって致命的なミスも発生させず、その東京Vの攻めに対して我慢強く対応。何度もギリギリのところまで追い込まれはしたものの、ゴール前の勝負どころだけは許さない必死の守りでそれを凌いでいった。そして徳島はホームの意地を見せる形でこの一戦に勝利。全力で後押ししてくれたファン・サポーターへの恩返しともなる結果をタフにもぎ取ったのである。
ただ前半45分の間には、後にそれほどの苦しい戦況が訪れることなど微塵も予想出来なかった。それだけ徳島が圧倒的にピッチを支配。積極性溢れる非常に良いゲームへの入りで主導権を掴むと、東京Vに全くサッカーをさせなかったのだ。さらに東京Vのオウンゴールで先制すると徳島の勢いはいっそう強さを増していく。鈴木達也と太田圭輔の最前線への流動的な絡みや3トップのコンビネーションで、スピーディーかつダイナミックな展開をそれまで以上に仕掛けていったのである。また、久しぶりに先発へ名を連ねたボランチ・青山隼がそうした活発な攻撃に大きく貢献していたのも間違いない。事実彼は序盤から非常に意識高く縦へのくさびを狙っており、38分にはそれが崩しのスイッチとなってチームに追加点がもたらされた。
加えて、前半の徳島の素晴らしい戦いを語るにおいては、安定した最終ラインのことも忘れず挙げる必要があろう。特に中央を務めた三木隆司のパフォーマンスは特筆すべきもので、東京Vが誇る若きアタッカー陣、阿部拓馬、中島翔哉をきっちりと沈黙させる。彼らへボールが入ればしつこい寄せで後ろへ戻すしか選択がないように追い込み、スペースを使おうとすれば巧みなコース取りでそこを消すなど、プレビューでも注目点として述べさせてもらったベテランらしいクレバーな対処によって三木は2人に自由も時間も与えなかった。
こうして攻守の歯車がガッチリ噛み合った徳島。申し分ない内容で前半を終えたとあって、後半もその勢いが終始ピッチを席巻するものと思われた。
だが、後半の早い時間帯に迎えた決定機のフィニッシュを津田知宏と橋内優也が続けて失敗したところから雲行きが怪しくなり、徳島はその後急速に試合の流れを東京Vに奪われてしまう。彼らが後半から変更してきた3トップのシステムになかなか守りの順応が出来ず、それの影響で前半抑え込んでいた阿部、中島らにも仕事をされ始めてしまったのである。その結果、66分その中島に左サイドを完全な形で破られて最後は深津康太に決められ1点を返されると、それ以降は全く防戦一方。小林伸二監督も「もう少しボールにきちっと行って他の人が対応するということを覚えていかないと、受けて引いてしまうとあのような形になってしまう」と振り返っていたが、徳島は全体がベタッと引く状態となって東京Vの攻撃に対しリアクション的な守りしか出来なくなっていった。それゆえチームは冒頭で触れたようなギリギリまで追い込まれる苦しい戦いに…。最終的には何とか終了のホイッスルまでリードを保ったまま辿り着いたが、徳島にとってはまだまだ組織的な課題が見られた後半だったと言わざるを得ないだろう。
とは言え、今季もあと2試合を残すだけ。後半で見られた課題を修正しようとする姿勢は不可欠ながら、その2戦ではそれにも増して連続白星という結果が求められる。今季ここまで一度も果たせなかった3連勝を最後に達成してシーズンを締めくくること。この1年を悔しいだけのものにしないために、徳島はそれを死に物狂いで目指さなければ。
続いて、敗れた東京Vについて言うと、こちらも残す2戦は勝利しか考えられない。今節の敗戦によって目の上のライバルである6位・千葉との勝点差が3つ開いてしまったのだから。そのうえ現時点で千葉に遅れを取っている得失点差を考えれば、それぞれの戦いでは1つでも多くのゴールを奪って勝たなければならないが、若い力が急激に伸びてきている今ならそれも不可能ではないと言っていいのではないか。選手たちが気持ちを切り替え、今節のことを教訓にしたいい試合への入りさえ出来たなら、それもきっと実現出来るはずだ。自分たちのサッカーを、今季ここまで積み上げてきた力を信じて、まずは次節の大一番(vs横浜FC)へ向かってもらいたい。
以上
2012.10.29 Reported by 松下英樹













