「1、2、3、アビスパ!」。クラブとサポーターの、ひとつになった大きな声がレベルファイブスタジアムに響き渡る。決して簡単な試合ではなかった。9分には山形の見事な連携から先制点も奪われた。しかし、粘り強く戦っての逆転勝利。その戦いを、マリヤン プシュニク監督は次のように振り返る。
「選手も、クラブの職員も、サポーターも、今日はみんなが一つになってチームとして戦った。今日はその結果の勝利。勝つべくして勝ったと思っている」
試合後に、サポーターと共に声を合わせたお馴染みの掛け声はその証。クラブに関わるすべての人たちとともに戦うマリヤン・アビスパを象徴する光景だった。
「いい形で試合に入ることができなかったと感じた」(プシュニク監督)。
主導権争いの序盤戦を経て最初にリズムを刻んだのは山形だった。秋葉勝がセカンドボールを拾ってから始まった攻撃は、中村太亮、ロメロ フランク、伊東俊、廣瀬智靖、再び伊東、萬代宏樹とつなぎ、最後はフリーになった中島裕希が右足で流し込む形。テンポよく少ないタッチでボールを動かす攻撃は、完全に福岡の守備組織を崩壊させた。そして、ここからは山形のリズム。守っては、もはや伝統とも言えるコンパクトに整備された3ラインを敷いて福岡に攻撃の機会を与えず。攻めては、福岡のプレスをかいくぐってゴールへ迫る。
しかし29分、福岡はワンチャンスを活かして同点に追いつく。ゴールを決めたのは石津大介。尾亦弘友希の左足から放たれた低くて速いクロスボールにピンポイントで合わせた。これで福岡の動きが変わり、持ち味のプレスで数的優位を作ってボールを奪うシーンが増えて行く。ただ、攻撃に転じた時の精度に欠いて福岡も追加点が奪えず。勝負の行方は後半へと持ち越された。
同点で折り返した後半、最初にリズムを刻んだのは山形。廣瀬に代わって入った比嘉厚平が起点を作り、小気味よいパス回しで福岡を押し込んで行く。「我々が何をやりたいか、何をやるべきかということではなく、山形が素晴らしい試合をしたことで苦しい試合になった」(プシュニク監督)。思うようにプレスが掛からなくなった福岡にとって、苦しい時間が続く。だが、そんなチームをレベスタに足を運んだ7,000人を超えるサポーターが後押しする。スタジアムに響き渡る大きな声は決して途切れることなく、選手たちに勇気を与え続けた。そんな姿を見て「試合の中で最も難しい時間帯に彼らは我々を助けてくれた」と話すのはプシュニク監督。そして主導権を奪い返すべく、55分に船山祐二に代えて金久保順を、58分には金森健志を投入。「勝負して来い」というメッセージを選手に伝える。
その監督のメッセージを2人が形表した。最初に見せたのは金森。ファーストプレーで右サイドを抜け出すと、中央で待つ城後寿に絶妙のパス。そしてゴール前へと走り込んだ。そのプレーは、チームとスタンドで声援を送るサポーターへ勇気を与えた。そして、最も大きな仕事をしたのが金久保。時間は74分、城後とのワンツーでゴール前中央でボールを受けて右足を一閃。次の瞬間、ややカーブがかかったボールが鮮やかな弾道を描いてゴール右上に突き刺さった。福岡は、この1点を粘り強く守り抜く。ピッチを広く使って福岡のプレスをかわそうとする山形に対し、これでもかとばかりにボールを追いかけ、そしてプレスをかけ続けた。「予想以上に福岡の前からのプレスが素晴らしく、足が止まることもなかった。なんとかそこを脱出して次の展開につなげたかったという部分がうまく機能しなかった」(奥野僚右監督・山形)。そして、4分間のアディショナルタイムを経て、試合終了のホイッスルがレベルファイブスタジアムに鳴り響いた。
「後半も押し込まれる時間帯があったが、そこで失点をしない粘り強いサッカーになっていると思う。キャンプで、前から前からと、アグレッシブに行っていた守備が、いま身になっている」と話すのは石津大介。そして、次節ホームに迎える強敵・京都との戦いについて次のように話した。「相手どうこうじゃなくて、自分たちのサッカーをやるだけなので、これからも、それを徹底していくだけ」。目指すは開幕3連勝だ。
一方敗れた山形は2連敗。決して内容に大きな問題があるわけではないが、それを結果に結び付けられていない。だが、次節は大勢のサポーターが待つホームでの戦い。多くの力を得て戦える。「みんなも勝利がほしいと思っている。次はホームで戦えるので頑張りたい」(秋葉勝)。まずはホーム開幕戦で今シーズン初勝利を狙う。
以上
2013.03.11 Reported by 中倉一志
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