スターティングメンバーが発表されたキックオフ2時間前。大宮ゴール裏を歩いていると「カルリーニョス出ないの?」「サブにも入ってないよ!」と、ちょっとした事件としてそのニュースがかけめぐっていた。試合前日、前々日も主力組でプレーしていたため、筆者もスタメン間違いなしとプレビューでも予想しただけに(当日朝に体調不良を訴えたためとの情報あり)、「やっちまった感」に苛まれつつ磐田のスタメンを確認すると、こちらも予想は大外れ。金沢浄はまったくのノーマークだったし、金園英学の1トップも想定外だった。おそらくアウェイのゴール裏もスタメンの話で持ちきりだっただろう。両チームとも直近のリーグ第3節からスタメンが6人入れ替わった、選手層の厚さを示す一戦は、チャンスを与えられた選手たちがそれぞれ持ち味を出した磐田に軍配が上がった。
9日にJ1リーグ第2節で対戦していただけに、互いの手の内はある程度わかっていた。が、磐田は前回と同じ形の2トップではなく、金園を1トップに松浦拓弥がシャドーの位置に入る。「ゾノ(金園)の下が自分のプレーエリア。相手のボランチが(山田)大記と(山本)康裕に食いつくのはわかっていたので、自分は下に落ちてゲームを作るイメージだった」という松浦を大宮はつかまえきれず、最終ラインの前でボールを引き出され、あるいは松浦がマークを引き連れて空けたスペースを山田や山本康裕、金園に使われた。「マークがはっきりしなかったし、中にクサビを入れられてやられていた」(青木拓矢)大宮は、そこが修正できないまま2失点してしまう。
7分、最終ラインからの縦パスを松浦が落とし、小林裕紀が左に展開。山田がねばり、金沢からクロスが入ると、高橋の背後をスッと離れた金園が先制ヘッドを決める。2点目は22分、松浦が右に流れて空けたスペースで金園が受け、菅沼がつないで中央の山田へ。山田はミドルシュートを撃つと見せかけて大宮DFを引きつけると、ノールックでゴール前フリーの山本康裕に送り、山本が落ち着いてワントラップしてゴールに流し込んだ。
守備で後手を踏み、ボランチが後ろに引っ張られ、両サイドバックも高い位置を取れず、大宮は攻撃に厚みを出せなかった。有効な縦パスは入らず、入ったとしても孤立しているため前線でボールが収まらない。磐田の最終ラインは高く、長谷川悠や富山貴光は裏へのボールを要求して再三走り出すが、本来そのパスを得意としているはずの上田が「僕らとFWとの距離が遠かったので、裏への長いボールは控えていた」ように、パスの出し手と受け手の意図もちぐはぐ。頼みのチョ ヨンチョルの独力突破も金沢と藤田義明の見事な連携に封じられ、大宮は磐田のペナルティエリア内にほとんど入れなかった。
ただ、2点リードの状況と、立ち上がりから飛ばしていたことで、30分ごろから磐田の圧力が弱まり、全体に押し上げられるようになったことで最終ラインの裏へのボールも効力を発揮し始めた。36分には青木の裏へのボールに反応した富山がワンタッチで折り返し、青木が決定的なミドルシュート。さらに39分には上田の左からのクロスに片岡洋介が合わせたヘディングがバーを直撃した。
得点の匂いを漂わせながら折り返した後半、大宮が選手交代でさらに流れを引き寄せに行く。FWに清水慎太郎を投入し、鈴木規郎を下げてチョ ヨンチョルを定位置の左サイドハーフに戻し、右サイドハーフには富山を回した。ここまでベンチ入りもなく試合に飢えていた清水が精力的にボールを引き出し、前線を活性化すると、慣れた下平との連携でヨンチョルが左サイドで再び躍動する。51分にヨンチョルがドリブルで左から中に入りつつ、ニアに飛び出した清水にスルーパス。さらに59分、交代出場の今井智基がファーストクロスを清水の頭に合わせる決定機を演出。再び74分には、ペナルティーエリア内で清水とのワンツーからヨンチョルのシュートが八田直樹の正面を突いた。
75分ごろからは両者疲労の色が濃く、互いにプレスに行けずオープンな撃ち合いとなった。80分には右サイドハーフで交代出場の大宮・宮崎泰右が、利き足の左足でバー直撃のミドルを放てば、磐田も途中出場の山崎亮平が右から絶妙なクロスを送り、片岡が必死に戻ってクリア。互いにゴール前に釘付けになる場面を作りながら、最後までゴールネットを揺らすには至らなかった。
大宮は確かに立ち直って攻勢は見せた。シュート数は大宮10:磐田9。決定機で言えば大宮5:磐田4といったところか。点差ほどの完敗ではないが、その決定機の質を細かく見ると、磐田はペナルティーエリア内での足でのシュートに対し、大宮はミドルシュートや長いクロスをヘディングでとらえたものが多く、より攻撃の質が高かったのは磐田のほうだった。その点、チャンスを与えられた選手たちが、「チャンスをつかみたい、もしくは力を見せたいというところで過剰に力が入ったり、空回りした部分があり、本来できることができなかったのかもしれない」(ベルデニック監督)大宮と、チーム戦術の中でしっかり自分の特徴を出して得点にからんだ磐田との差は大きかったように思う。この試合のメンバーについて「ものすごく迷った」という森下仁志監督だが、次節もさらに頭を悩ませることだろう。
ミックスゾーンに現れた大宮の選手たちはだれもが浮かない顔だったが、何よりこの敗戦で疲労感を増したのは、スタジアムに充満した「やっぱりノヴァコヴィッチとズラタンがいないと、こんなものか……」という空気だろう。チームの攻撃が、いかに彼らの前線でのボールの引き出し、収まりに依存しているかが浮き彫りになった。この先、代表招集によるコンディション不良、夏場の疲労、ケガ、出場停止など、この2人がフル稼働できるという保証はどこにもない。同じサッカーをした場合に代役たり得る選手がいないのであれば、彼らがいなくても成立する戦い方も用意しておく必要があるのかもしれない。この敗戦を受けて、すぐ23日に迫った湘南戦(@BMWス)でのメンバーと戦い方に注目したい。
以上
2013.03.21 Reported by 芥川和久















