「選手たちは自信を失っているようだ」
リーグ戦を含め、ここ数試合で尹晶煥監督がよく口にしたフレーズである。その自信を取り戻すためには、“勝利”しかないことを鳥栖に関わる全ての人はわかっていた。しかし、その“勝利”を得るための手段が簡単には見つからずに苦悩する試合が続いていた。
リーグ戦第7節(4月20日・柏戦・ベストアメニティスタジアム)を終えてから中3日でのヤマザキナビスコカップ予選リーグ第5節。疲労も抜け切れていないだろうが、ピッチに立たないといけない。しかし、何よりも結果を求めていた選手たちは、開始早々から激しくボールを追った。
対する新潟も、首位横浜FMに勝利してから、中3日でのアウェイ戦となった。試合の疲れに加えて、アウェイ戦のための移動を伴っている。状況的には恵まれているとは言い難い中ではあるが、リーグ戦で見せたプレスを前半から見せていた。それは、ヤマザキナビスコカップの予選リーグを突破するためには負けられない一戦であると同時に、リーグ戦での勝利の勢いを止めないためでもあった。両チームにとって、この試合の持つ意味は、非常に大きなものだった。
キックオフと同時に選手たちの思いは、見ている人に伝わった。前線からのプレス、コンパクトな守備、球際での激しい当たり…両チームに共通しているプレーであった。18分には、FKからのボールを奪った新潟が一気に鳥栖ゴール前に攻め込むカウンターを見せた。28分には、鳥栖の左サイドから野田隆之介が入れたクロスにFWロニが飛び込んだが、わずかに合わなかった。
前半は、カウンターとロングボールで新潟が攻め、鳥栖は両サイドを使って攻めた。しかし、お互いの守備意識が強く、相手の自由を奪う激しいプレスで決定機を作ることができなかった。シュート数を見ても、鳥栖が3本、新潟が4本と攻めあぐねた様子がわかる。
その均衡した状況が一変したのは、後半に入ってのことだった。後半の立ち上がりこそ、新潟が左クロスにFW岡本英也が飛び込むシーンを見せたが、以降は徐々に鳥栖の攻撃の強さが目につくようになった。56分には、MF藤田直之のロングスローから、こぼれ球をDF金正也がシュートを放った。
そして、公式戦8試合ぶり(リーグ第3節・磐田戦以来)の先制点を鳥栖が上げた。61分にMF野田隆之介が前線につないだパスをMF岡田翔平が身体を張ってFW豊田陽平につなぎ、一気に流れを鳥栖に引き寄せた。
新潟もこのまま終わっていい試合ではない。61分途中交代でピッチに立ったFW田中達也が、前線でボールを受けて仕掛けて行ったり、スペースを作りそこにボールを呼び込んだりと、攻め手を見せてはいたが、後半2本のシュートでは試合をひっくり返すことはできなかった。
この状態を柳下正明監督は、「恥ずかしい試合をしてしまった。(中略)怖がってボールを受けない選手がいた」と評価した。前試合(第7節・横浜FM戦)で見せた、前線からのプレスで相手のリズムを狂わせた守備から一気のカウンターは、鳥栖には見せることができなかった。90分には、途中出場のMF早坂良太(鳥栖)に追加点をあげられ、とどめを刺されてしまった。
両者にとって、この試合はヤマザキナビスコカップ決勝トーナメント進出のための生き残りをかけた一戦というだけでなく、前試合となったリーグ戦・第7節の勢いを加速させるためにも重要な一戦であった。そんな試合で、前線からのプレスで一気に畳み掛ける攻撃を見せることができた鳥栖は、次試合となるリーグ戦・第8節に気持ちよく臨めるのではないだろうか。逆に新潟は、次試合であるリーグ戦・第8節は中2日と非常に厳しい状況となっている。せめて、いい形で試合を終えて臨みたかったところだが…。両者にとって、非常に大きな違いを招いた試合であった。
進むべき方向がわからなくなった時には、スタート時点に戻って前を見るがいい。あらたな方向が見つかるはずである。歩む速度がわからなくなったら、その場で立ち止まって来た道を振り返れば良い。それまでの歩みを確認することができるから。自信を失ったときは、原点回帰することで気持ちもリセットされるはずである。サッカーでも、1日で技術が習得できたり、戦術が確立されたりすることはない。日々の努力とトレーニングの結果しか、試合に出せないのである。サッカーは日々成長させないと勝てないスポーツなのである。
以上
2013.04.25 Reported by サカクラゲン
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