どの試合も重要であることに変わりはないが、AFCチャンピオンズリーグのセントラルコースト戦（４／３０＠ゴスフォード ）を挟んで迎えるリーグ戦２試合は、柏にとって特に大きな意味を持つ。２６日は現在２位の大宮、そして５月６日は首位の横浜FMが相手になるからだ。リーグタイトル奪還を狙うためには、是が非でも勝たなければならない試合である。

すでに様々なメディアで大きく取り沙汰されているように、大宮は前節の浦和戦で「１８戦無敗」というJ1リーグ連続無敗記録を打ち立てた。１８試合の中には、当然入り方の悪かった試合や、試合の中で流れの悪い時間帯もあっただろうが、この偉大な記録を打ち立てるためには、状況を立て直すチームとしての修正力、選手たちのメンタリティーの強さといった部分も必要になってくる。２０１１年に柏がJ1を制した時もそうだったように、チーム状態が良く、結果も伴っている時というのは、選手たちのメンタルが充実し、その自信はプレーに反映される。まさに今の大宮はそういった状況にあるのだろう。

前節の浦和とのダービーマッチは大宮の真骨頂だった。前半終了間際に先制点を奪った後は、一見猛攻に曝されていたように映ったが、守備ブロックの前で持たせる分には問題はない。ポイントはアタッキングエリアでどう相手の攻撃を潰せるかであるが、８、９人が形成するコンパクトな守備ブロックは縦に入るパスをことごとく封じ、シュートに対してもしっかりと体を張って対応するなど、リーグ最少失点の守備力をいかんなく発揮する展開となった。

おそらく守備力が高いとあって「１点取れば勝てる」という自信がみなぎっているのだろうが、大宮のさらなる恐ろしさは隙を見せれば相手の急所を的確なカウンターで突き、抜け目なくゴールを陥れることができる点にある。昨シーズン第３０節では、柏はそんな大宮の餌食になり、稲妻のような迫力のあるカウンターから失点を重ねてズラタンのハットトリックを許し、１−４と一蹴された。

この大宮を迎えるにあたり、柏から見た鍵は２つ。まず１つは、いつも以上に先制点が大きな意味を持つということだ。柏は前節の鳥栖戦で完封勝利を収めたが、それ以前の「立ち上がりの失点の多さ」を選手たちが強く意識し、改善に努めたからであった。ACLの貴州戦では終盤に１点を失ったものの、前線からの守備、コンパクトな陣形、セカンドボール争い、球際の攻防など、守備面では鳥栖戦の流れを引き継いで光るプレーが多く見られた。「これを続けていくことが大事」（栗澤僚一）と言うように、立ち上がりはもちろん、９０分を通じて無失点にこだわる意識を貫くこと。逆に大宮に先制点を許せば、そのリーグ屈指の守備力を持って逃げ切りに入られてしまう。
もう１つの鍵はサイドの攻防をいかに制すか。思い起こしてほしいのは、昨年の天皇杯準々決勝だ。２点のビハインドから、劇的な逆転勝利を収めたあの一戦。増嶋竜也の同点弾と工藤壮人の逆転弾は、ともに右サイドを崩した攻撃が引き金になった。堅い中央よりもサイドの方が攻略の手立てがあるというだけで、決してサイドが緩いというわけではないが、あの時のように複数のパスコースを作り、陣形を中へ絞らせておいて空いた外を使うことは、大宮の堅守を打ち破る上で突破口にはなる。
それに、ACL貴州戦では無理をさせる必要がなかったため出場を回避させたが、中盤右サイドにはレアンドロ ドミンゲスが入ると見ている。天皇杯の対戦時から大宮は数段レベルアップしているだろう。だが、同様に柏もレアンドロが入ることで攻撃力は飛躍的に増幅される。現在得点ランキングトップタイに立つ工藤は、「昨年は３試合で３ゴール。僕個人としては、大宮に悪いイメージは持っていない」と鳥栖戦に続き虎視眈々とゴールを狙っている。

偉大な記録はリスペクトするが、物怖じする必要はない。貴州、セントラルコースト、水原というアジアの猛者を相手に、無敗でACLグループステージ１位通過を決めた柏が、アジアの舞台で誇示した力を以て、１８戦連続無敗を続ける大宮と対峙する。

以上

2013.04.25 Reported by 鈴木潤