岡山から駆けつけた多くのサポーターにとっては、サッカーの楽しさを存分に味わえた好日となった。終了10分前まで0−3の劣勢から怒濤のゴールラッシュで勝点1をもぎ取ったのだから。しかも相手は首位の神戸で、無敗も継続。痛快というほかない。
逆に神戸サポーターにとっては悪夢の10分だった。3点リードを80分以上も保ちながら、勝点2が手の平からこぼれ落ちたのである。サッカーの怖さを痛感させられた1日だったに違いない。
試合は前半の早々に動いた。7分に神戸の奥井諒が相手のクリアボールをダイレクトで前線へ蹴り返すと、ボールはDFの前を抜けて田代有三の前へ。田代が狙い済まして放ったミドルは、美しい残像をピッチに残して岡山ゴールへと吸い込まれた。気迫を持って挑んだ岡山戦だったとはいえ、想像以上にあっけない先制劇。この1点で完全に神戸ペースになるかと思われが、岡山がひるむことは無かった。失点直後には、右サイドを崩し、ボランチの仙石廉がしっかりとコースを狙ってシュートを放つシーンも演出。神戸のGK山本海人の好セーブに阻まれたものの、勝点3への執着心を見せる。その後も岡山は前線から組織的にプレスをかけ、奪ったボールを両サイドへ展開しながら神戸を攻め立てていく。
だが、神戸も田代とポポの2トップが激しくボールを追い込み、ボランチの田中英雄や大屋翼がボールを奪いながらリズムを取り戻していく。そして前半34分。左サイドのマジーニョから中央のポポへ、ポポから右サイドの杉浦恭平へとパスをつなぎPKを獲得。それを杉浦がきっちりと沈めて2−0に。その約4分後には相馬崇人のクロスを田代が再び決めて3−0とリードを広げた。終盤に強い岡山が相手とはいえ、サッカーにおける3点リードは十分なアドバンテージである。神戸が完全なる勝ちの方程式を築いたはずだった。
後半も「立ち上がり足を止めず、15分のうちに4点目を取れ」という安達亮監督の指示の下、神戸が岡山を攻め立てる。65分には左サイドでボールをカットしたマジーニョがポポとのパス交換を経て、田代へ決定的なラストパスを送るなど、4点目の匂いが漂っていた。だが、岡山の身体を張った守備もあってなかなか追加点が奪えない。とはいえ、岡山に許された残り時間をじわじわと縮め、確実に勝利へと前進していた。
だが、それでも岡山サポーターの大声援は鳴り止まない。影山雅永監督の「0−1だろうが、0−2だろうが、もしくは0−5だったとしても、そういうところから後半グダグダになってしまうチームではいけない」という檄を受けた選手たちは諦めずに走り続けた。そして82分にボランチの仙石に代えてFWの石原崇兆、田所諒を下げて久木田紳吾を投入。すると、代わったばかりの石原が前線の荒田智之に浮き球を送り、それを落としたところに久木田が走り込み豪快にミドルを決めた。これで3−1。続いて神戸のセンターバック金聖基のパスミスを奪った荒田がドリブルで右サイドをえぐり、折り返しを再び久木田が決めて3−2に。勢いに乗った岡山は、アディショナルタイムに入っても猛攻を続け、今度は右サイドを押谷祐樹がドリブルで突破し強烈なシュートを放ち、GKが弾いたこぼれ球を荒田が詰めてついに同点に追いついた。沸くアウェイ側スタンド。落胆の声がこだまするホーム側スタンド。結局、このまま試合は終了し、岡山が貴重な勝点1を手にいれた。
神戸にとっては、77分にマジーニョが負傷で交代し、87分には相馬崇人が負傷で離脱。10人で約7分を戦わなくてはならないという不運も重なった。だが、単にそれをアンラッキーで済ますことはできない。安達監督が「内容的には非常に満足しているが、最後、正直、私の経験のなさで…。勝てるゲームだったと思います」と述べている通り、何かしらの逃げ切る方法はあったと言える。安達監督は「選手交代と、3−0から4−0にできなかったところ、1失点してしまった後のところ、明確な指示が出せなかったのかなという気がします」とも語っている。
実際、マジーニョの負傷退場は計算外だったとしても、残り5分で2点リードの状況から最後のカードを田代から都倉賢の交代に使用する必要があったのかどうか。87分頃に相馬が負傷離脱を余儀なくされた時に、最後のカードを使い果たしていた神戸は10人で岡山の猛攻を凌ぐ結果を招いてもいる。もちろん、相馬の負傷も想定外だったのだが。ただこれも所詮、結果論だ。勝負事に“たられば”はないから、これを次に生かすしかない。神戸の田中英雄は「最後の10分がああいう形だったから悪かった印象だけど、それ以外の80分以上は神戸が試合をコントロールできていた。この引き分けを、最後には“高い授業料だったけれど、大きかった”と言えるようにするしかない。一喜一憂せず、最終目標(J1昇格)をしっかり見据えて戦っていきたい」と前を向いた。
以上
2013.04.29 Reported by 白井邦彦
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