生憎の雨だったけれど、ゲーム前に清水サポーターは「ヴァンくん」コールをしてくれ、キックオフ直前には、「さすがエスパルス」と言いたくなる迫力のコールもあったけれど、試合後の勝利のコールは音の波動を感じるほど歓喜に満ちていた。今年は相手よりシュート数で下回る勝利しかなかったけれど、シュート数で完全に上回る13本対7本の2-0の完封勝利は相当気持ちよかったのでしょうな。「オーレーオーレー、オレオレ!。オレ!オレ!オレ!清水、エスパルス!」って楽しそうだった。ただ、負けた甲府も、「ヴァンくん」と「パルちゃん」がある意味深いところで繋がっているように、清水の歓喜とは逆の立場で勝点ゼロから次に繋がる経験を得ることができる負けだった。
今節が始まる前の順位が8位だったことで大した根拠なく安心してみたり、もっと上に行けるんじゃないかと浮かれポンチな希望を持ったりもしたが、清水に敗れて現実に立ち返ることができた。城福浩監督は常に「危機感しかない」と話していたが、ようやくその危機感を共有できるような気がする。羽生直剛も「8位でも僕は危機感しかなかったし、1つ勝つと1つ負けるチームが多い今年のJ1。安定感のあるチームは少ない。順位に囚われずに危機感を持って、地に足をつけてやるしかない」と話す。F東京に勝った湘南のように、泥臭くても諦めない粘り強さと執念の戦いが地方クラブの戦い方のベース。次の広島戦に向けて原点回帰できた価値ある勝点ゼロにしなければらない。
メンバー表を見て、カルフィン ヨン ア ピンが先発でなくベンチに座ることが分かって安心したけれど、杉山浩太がCBに入って3試合目の清水の守備はさっきの安心の意味を消し去るものだった。同じ試合でも、「甲府に勝って欲しい」と思って見るか、「清水に勝って欲しい」と思って見るかで感じ方は違うけれど、少なくとも最後の部分ではしっかり防ぐことができる安定感が清水にはあったと思う。10分に佐々木翔が柏好文のクロスに合わせて頭から飛び込んだ迫力のシュートが清水のポストに当たるという、甲府から見れば惜しい一発はあったけれど、いい内容で勝てなかったC大阪戦や名古屋戦の貸しは、ゴールマウスが守ってくれるなどして勝ったり勝点1を取った他の試合で回収しているので、「あれが決まっていれば…」というのは少し贅沢な話。悔やむなら、甲府はああいうチャンスを3回、4回と増やせなかったことだ。ワンライフ・ワンラブもワンチャンス・ワンゴールも滅多にないこと…残念ながら。
それよりも、久しぶりにバレーの凄さを感じたことが印象的だった前半の序盤。ちゃんと振りかぶって打った7分ミドルは野球風に言うと「B砲」という感じの迫力。それに、ボールを奪ったらバレーに当て、それをバレーが落としてセカンドボールで勝負する清水のやり方が予想以上に正確かつコンビネーションが良かった。暫く忘れていたけれど開始10分でバレーの凄さを思い出してからは気を抜けない展開。技術の高い清水の選手がバレーを上手く活かして、自分たちも活かす戦い方。普通なら絶対にシュートを打たないところからでも決める想定外の凄さがバレーにあるから余計に手強い。甲府は青山直晃と土屋征夫の2枚でプレスとカバーに別れてバレーに対応する場面が多かったが、バレーに当ててセカンドボールを拾う動きのレベルが高くて、甲府は後ろが重たい4−4−2になってしまっていた。
前の人数が少ない甲府は、ボールを奪ってもなかなかバイタルエリアに進入できなかった。甲府のボランチがフリーなときは、ディフェンスラインの裏を狙えたけれど少ないチャンスは決定機に繋がらず、徐々に出し所を探しながらのビルドアップになっていった。なんとなく前節の新潟戦に似た雰囲気でもあった。0−0で後半も進んでいくかと思っていたが、59分に甲府はあっさりと先制点を許してしまう。イ キジェのミドルシュートがそれで、柏がマークに付いていて縦を切って中に行かせて、右足で打たせたシュートだったが、コースが良かったのかマークの距離が広すぎたのか、中を切って縦に行かせるべきだったのか…。失点シーンを振り返れば問題点はいくつでも見つけられるが、甲府の選手がなかなか決められないペナルティエリア外からのミドルシュートに対するチーム全体の認識を考え直す必要があるかもしれない。スコアのシーソーが動いてからはダイナミックな展開になり、甲府は保坂一成と平本一樹を投入して攻撃の圧力を高めた。72分に清水の平岡康裕がオルティゴサの突破をファールで止め、イエローで甲府がペナルティエリアのすぐ外からFKのチャンスを得た…と思ったら平岡はレッドで一発退場。このFKを決めることができなかったが、甲府が20分近く1人多くなるので有利だと思った。
しかし、まだバレーについて思い出さないといけないことがあった。スペースが広くなれば広いほどバレーの牛のような突破力は破壊力を増すのだった。83分の追加点は甲府のCKからのカウンターで、献身的に前線からの守備で貢献していた伊藤翔が、バレーに繋いで生まれた決定機。井澤惇が必死に追いかけ、GK河田晃兵もドリブルが大きくなったところを狙って前に出るが、バレーのスピードが両者を上回っていて、浮かしたシュートで河田を超えてボールはゴールイン。前掛かりになる相手に対してバレーが如何に恐ろしい戦闘爆撃機なのか思い出す失点。甲府はアディショナルタイムに1点を返しに行くが、スコアは動かず0−2で終了。バレーは優勢に乗じて攻め込めば1試合で6点も取る人だけど、9月のアウェイ清水戦はJFK甲府の成長の見せ所として楽しみにしよう。スペシャルな個が少ない甲府は、神が細部に宿るサッカーで対抗するしかない。少しのポジショニングの違い、マークするときの距離、お互いの距離感などをもっと突き詰める必要があることを勝点3を献上して再確認できた…と思いたい。転んでもただでは起きないことが信条のJFK甲府なのだから。「試合を観ていない人が結果だけ見れば0−2で甲府が完敗…と思われることが悔しい」と山本英臣は言ったが、この悔しさも次節の広島戦に繋げる想いに変えよう。
清水も課題は残る。「相手がある程度主導権を握っている試合の方が強い状態なので、自分たちが主導権を握っても勝てるようにならないといけない。今日も試合前からカウンターを狙っていた訳じゃない。どういう展開になっても慌てないことが大事だと思った」と杉山が話したが、連敗を止めたこの勝利がどうプラスに働くのかを次節のアウェイF東京戦で味スタに乗り込むオレンジ軍団は表現したいところだ。勝っても負けても次が大事。甲府は水曜日のヤマザキナビスコカップがお休みなので久しぶりにじっくり取り組める週になる。勝っても負けても次節が楽しみ。
以上
2013.05.12 Reported by 松尾潤













