もう限界だ。松田浩監督、選手、そしてファン・サポーターは勝利に飢え、勝てないことに極めて強いストレスを感じている。栃木は6戦未勝利と勝星に見放されているが、試合内容を検証すれば1‐3で敗れた22節の横浜FC戦以外、それほど悲観することはない。ただ、サッカーに優勢勝ちはなく、勝たなければ評価はされない。幼少の頃からそのような環境で育ってきたクリスティアーノは人一倍勝利への執着心が強く、また今節の熊本戦の重要性も把握している。
「正直、先週のトレーニングではエネルギーが湧かなかった。でも、もう頭は切り替わっている。熊本戦はどんな形でも勝たないといけない。とにかく、勝ちたい」
前々節の富山戦では感情をコントロールできずに退場宣告を受け、前節の福岡戦は出場停止。チームは0‐2で敗れ、プレーオフ圏内から滑り落ちた。迷惑をかけたぶんだけ、今節に懸ける思いには並々ならぬものがある。練習からPKを率先して蹴るなど、「自分がチームをけん引するんだ」という気概に満ち溢れていた。背番号11を軸に、今節こそリーグ後半戦初勝利を掴み取る。
「自分達のサッカーをベースに戦うこと、得点、そして無失点で試合を運ぶことが求められる」
勝点3への条件をそう語ったのは、前回の熊本戦でゴールを決めている杉本真。前節は退場者を出すまで自分達のサッカーを表現できていた。猛攻に晒される苦しい時間帯を耐え抜き、守備からリズムを立て直し、形勢を逆転させられたのだ。影を潜めていた本来の姿を取り戻せた収穫は小さくなく、その証拠に前半を0‐0で折り返すことができた。その感覚を熊本戦に繋げる必要がある。
45分だけでも無失点に封じることができた一方で、数多の決定機をフイにしたのは反省点。体力の消耗が激しい夏場は、先制点が勝敗を左右する割合が高い。特に後追いを望まない栃木にしてみれば、先行を許す展開は是が非でも回避しなければならない。そのためには、決定機を確実に物にする集中力が要求される。大事な局面でパワーを使うには体力の浪費を避け、頭をクリアにしておく必要がある。1本1本のパスに魂を宿すことが、無駄な労力を減らす解決策になるはずだ。福岡戦ではゴール前でのラストパスや、奪ってからの1本目のパスにズレが生じ、チャンスを潰し、相手の攻撃を食い止めるために長い距離を戻るシーンが目に付いた。先手を取るためにも、「1本のパスで相手の嫌な所を突く。その質を高めたい」(廣瀬浩二)。
パスの質を高めることは相手の攻撃の時間を削ぐことにも直結し、失点を招くリスクを軽減できる。今季はビルドアップの向上に取り組み、その成果は徐々に見え始めているが、安易なボールロストからの失点という弊害も散見される。熊本に対してボールを持つ時間は長くなることが予想されるが、ボールの失い方、失う場所に気を付けなければ、福岡に喫した1失点目のようなカウンターを食らってしまう。慎重かつ丁寧にボールを回して相手の体力を削り、肝心な場面での決定力を低下させられれば言う事無しだ。
前節の熊本は最下位の岐阜を相手に、終盤に追い付かれて勝点1を分け合った。髪をかき上げ、叫び、悔しさを露わにしたのは吉田靖監督の退任に伴い、暫定的に指揮を執っている池谷友良監督代行。初陣を勝利で飾れなかったが、堀米勇輝と片山奨典の両サイドは機能し、常に脅威を与え続けた。実際、スローインから先制点は片山と堀米の2人で奪っている。前監督の遺産であるパスサッカーを活かしつつ、サイドで優位に立つことがそのまま主導権を握ることに繋がり、栃木のブロックに穴をあける最善の手となるはずだ。
攻撃には手応えがあったものの、再建中の守備には危うさが見られ、劣勢に回るとファウルが増えるきらいがあった。それが原因で岐阜戦ではFKから被弾。限られた時間の中でいかに前節の課題を修正できるか。5年ぶりに現場復帰した池谷監督代行の手腕に注目したい。監督交代という劇薬を使った熊本は4‐1で完敗した前回の悔しさをバネに、栃木同様に後半戦初勝利を狙う。
栃木は9節以降、保持してきたプレーオフ圏内の地位を福岡に明け渡した。さらに5位・京都との差は広がり、振り向けば14位・東京Vとの勝点差は3。上位に引き離され、中位に飲み込まれる最悪の事態に、そろそろピリオドを打つ必要がある。
「プレーオフ圏内から脱落したことは良くないが、それは過去のこと。サッカーは1週間で状況を一変させられる。ここで形勢を引っ繰り返さないといけない」(クリスティアーノ)
ズルズル後退する、例年の二の舞はご免だ。熊本、愛媛と続くホーム2連戦を連勝で飾り、これまでの鬱憤を“倍返し”する、反撃の狼煙をあげたい。ホーム“グリスタ”から栃木の逆襲が始まる。
以上
2013.07.19 Reported by 大塚秀毅
J’s GOALニュース
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