いつまでも心の奥底に沈澱し、簡単に消化できない口惜しさだけが残った。前節の福岡戦も、今節の熊本戦も十分に勝機はあった。ところが、逸機したことが後々まで尾を引き、自ら今季初の連敗を招いてしまった。
「ホームゲームだったので内容よりも結果が求められた。強い気持ちで臨んだだけに、残念な試合になってしまった」
そう口にした杉本真は肩を落とした。前半に都合三度も巡って来た決定機を逃し、チームを勝利に導けなかった。「勝てば流れは変わる」。杉本はそう信じ、強い決意で熊本戦に挑んだ。それなのに、肝心の結果が伴わなかった。後悔は一晩寝ただけでは消えないだろう。仕留め損なえれば手痛い目に遭う。サッカーでは往々にして起こり得る最悪の結末に、栃木は再びハマってしまった。
不慣れな3‐4‐3を採用ことが影響し、熊本は特に守備の局面での意思統一が図れずに、序盤から劣勢を強いられた。対する栃木は相手に呼吸する暇すら与えず、混乱につけ込んだ。杉本と菊岡拓朗が間でボールを受けては起点を設け、左サイドから廣瀬浩二が何度も突破を仕掛けてはチャンスをこしらえた。本来の球際の激しさも鳴りを潜めた熊本を圧倒。23分、34分、35分と杉本がゴールに襲い掛かる。ゴールを割るのは時間の問題かと思われたが、GK南雄太の好判断と最後の質を欠いたことで、栃木は先制の機会を損なう。熊本をシュート0本に抑えた守備がほぼパーフェクトだったことを考えれば、前半のうちに息の根を止められなかったことが繰り返しになるが悔やまれる。
後半に入っても高い位置でボールを奪えずに、5‐4‐1と守備的に成らざるを得なかった熊本。栃木が一方的に攻める構図に変化はなかったものの、集中力を切らすことなく、粘り強く守ったことが最後に実を結ぶこととなる。思うに任せない展開の中で池谷友良監督代行が切った、一枚目の交代カードが奏功した。仲間隼斗に代わりピッチに登場した齊藤和樹が前線で存在感を際立たせると、次第に潮目は変わり始める。セカンドボールを拾う回数が増え、栃木陣内深くまで攻め入ることができたのだ。
前線が活性化した熊本とは対照的に、栃木は攻撃が単調になる。焦りと苛立ちがロングボールに頼る機会を増加させ、工夫に乏しいクロスを上げては跳ね返される展開を繰り返すこととなった。攻めあぐねて迎えた79分、クリスティアーノが奪われたボールを熊本に運ばれ、齋藤が走り込んだ片山奨典にラストパス。左足を振り抜いた片山のシュートはGK榎本達也の手を弾き、ゴールへと吸い込まれた。「あまり綺麗なシュートではなかったけど、今のチームにとってあの1点は大きかった」と片山。数少ない好機を物にした熊本が、9試合ぶりに勝利を挙げた。
「選手はボールに対して執着心を持って戦ってくれた」
そう選手の頑張りを労った池谷監督代行の言葉が、この試合の勝因だった。劣勢に立たされる時間が大半だったが、高木琢也監督時代の堅守を彷彿とさせるしぶとい守備で勝点3をたぐった。下位から脱出を図るには失点の減少がまずは求められ、守備の再構築に主眼を置いている現状では、攻撃に割く時間が減るのは必然だ。前監督が攻撃的なサッカーを志向していたことを考えれば、守備的なシステムではストレスが溜まるだろうが、背に腹はかえられない。1試合で結論を出すのは性急に過ぎるが、90分無失点に抑えたことは自信に繋がり、次節の勝点3を引き寄せる好材料になるはずだ。また、前回1‐4で敗れた借りを返せたことも小さくないと言えるだろう。
僅差で敗れ7位から10位にまで転落した栃木は、「点を取る力がなかった」(廣瀬)。その一言に尽きる。チャンスを作れないほど深刻な事態ではないが、2試合連続無得点は非効率的で寂しい。
「勝って得る物は大きい。勝つことで自信や勢いがつくこともある」(杉本)
勝点3を掴むには、「いい試合をしていてもゴールが取れないと難しい」(クリスティアーノ)。練習からラストパスの精度、シュートの精度を追求し、1本1本に魂を込めるしか手はない。決定力を上げるのに、魔法も特効薬も存在しない。また、守備面では一瞬たりとも気を抜かない、高い集中力が要求される。どん底から這い上がるには膨大な力が必要とされるが、一度抜け出してしまえば比較的スムーズに流れに乗れる雰囲気はある。試合終了の笛と同時にもらった、ファン・サポーターからの厳しくも温かい声を糧に、次節こそ結果で期待に応えたい。これ以上、声を嗄らして背中を押してくれる思いに背くわけにはいかない。
以上
2013.07.21 Reported by 大塚秀毅













