試合後の記者会見で手倉森誠監督が「これがサッカーなのだと、あらためて感じています」と述べたのも無理はない。それはシュート数8対17という状況下で、仙台が勝利したことを受けての言葉だった。
仙台は7月の5戦で2勝2分1敗と勝ち越していた。5戦で勝点8、悪い数字ではない。それでもチームにもサポーターにもモヤモヤしたものが残っていたのは、5戦中3戦あったホームゲームで2分1敗と勝てなかったことと無関係ではない。しかもこの3戦はいずれも、ボールを支配し、シュートを雨あられと降らせ、相手を圧倒した時間が長かった。だが内容面で勝っていても、結果で勝てなかったのだった。
だが8月の初戦となったJ1第19節で、仙台は川崎Fを相手に、今度は劣勢の時間が長くとも、勝利という結果を手にすることができた。
序盤は仙台が思惑通りに試合を進めた。4-3-3で川崎Fに挑んだ仙台は、富田晋伍、松下年宏、梁勇基が形成する中盤の間に相手のボール保持者を捕えると、その周囲のポジションと連係して奪いにかかる。ボールを得れば、素早くカウンターにつないでチャンスを作った。
川崎Fはこの日、中盤の両サイドにレナトとアラン ピニェイロを配置。技巧に優れる彼らが中村憲剛や1トップの大久保嘉人とともに流動的なランニングをしてゴールに迫る形を見せようとしたが、立ち上がりは互いのポジションを入れ替える過程で仙台に止められた。
その流れから14分に試合が動く。仙台は相手がやりたかったはずの、斜めの流動的な動きから先制点を奪った。右サイドバックの菅井直樹が中に絞ってボールを受けると、これまた中央から右へ流れた松下へつなげる。松下が登里享平をかわしてクロスを送ると、ウイルソンが頭で合わせて決めた。
ところがその後、ウイルソンが負傷で退場し、また川崎Fが1点を追って攻勢を強めたあたりから、試合は川崎Fペースが長く続くことになる。レナトとアラン ピニェイロの強引なドリブルや、中村のプレッシャーを外す動きが利くようになり、仙台がロングボールで立て直しをはかろうとしても稲本潤一が懸命に跳ね返すことで川崎Fが攻撃する時間は続く。後半の大攻勢は圧巻で、仙台陣内で縦横にパスをつないだ川崎Fがチャンスを量産。攻撃陣のシュートがポストやクロスバーに当たったり、林卓人がファインセーブを見せたりしなければ、あっという間に同点にできていただろう。
そして72分にようやく、川崎Fがコンビネーションで中央をこじ開け、レナトのファインゴールで同点に持ちこんだ。これで畳みかければ、一気に逆転に持ちこむことができた。
ところが、ここで次の一手を点に繋げたのは、仙台の方だった。劣勢で追いつかれても気持ちを切らさず、したたかに相手の隙を突いた。77分に投入されたヘベルチが相手のマークをずらそうとすると、それから間もない78分にその効果は現れ、相手の左サイドに隙ができた。菅井が角田誠のパスを受けて右サイドに抜けると、松下が同サイドに寄って菅井のパスを待つ。ここにボールが渡った後、「あとは思い切り打つだけだった」という松下のシュートが川崎Fゴールに刺さった。
4-2-3-1に変更した仙台は、その後に効果的にスペースを消すことで川崎Fの攻撃をブロック。4分のアディショナルタイムにも集中を切らさず逃げ切った。押していた川崎Fにとっては「1本のパスでやられてしまうのはもったいない」(中村)印象の試合だった。逆に仙台の選手たちは「勝てたからよし、という試合ではなく反省が必要。危機感がある」(林)、「まだまだ。もっと自分達でボールを持って、フィニッシュの精度を上げないと」(角田)と、勝って兜の緒を締めた。
連敗ながら内容に手ごたえを得た川崎Fと、連勝ながら内容に反省材料を得た仙台。どちらも、この試合を受けての1週間は、今まで以上に密度の濃いものとなるかもしれない。
以上
2013.08.04 Reported by 板垣晴朗













